NEW2021年02月05日

船でモノを運べない?

世界中の港で「異常事態」が起きています。荷揚げをできない多くの船が並び、企業の中には船での輸送を諦めて、割高な飛行機に切り替える動きも。その要因は、深刻な「コンテナ不足」です。いったい、何が起きているのでしょうか?

どうして、船のコンテナが足りなくなっているのですか?

新型コロナウイルスの感染拡大で“巣ごもり需要”が活発になって運ぶモノが増えている一方で、働き手が不足していることが原因です。

去年10月から12月までに世界全体でコンテナ船が運んだモノの量は、前の年と比べて8%増加しました。

なかでも北アメリカに向かう航路は25%も増えたんです。

ところが、そのアメリカの港では、外出自粛の影響もあって、港湾労働者やトラックドライバーが足りず、多くのコンテナ船が荷物を降ろしてもらうために列をなす状況だそうです。

コンテナは世界中の港で使い回す仕組みなので、アメリカで大量のコンテナが滞留した結果、コンテナが足りなくなってしまったというわけです。

コンテナ不足が続くと、どんな影響があるのでしょうか?

大きく2つ考えられます。

1つは「輸送の遅れ」。

これまでより時間がかかるおそれがあります。

もう1つは「商品の値上げ」。

実は、コンテナ船の運賃はすでに過去最高の水準に高騰しているんです。

横浜港からアメリカのロサンゼルス港にコンテナを運ぶ場合の運賃は、去年4月までは前年より安い水準でしたが、その後、急激に上昇しています。

去年12月は4800ドルまで高騰し、おととし12月の1430ドルと比べると、1年で3倍以上の高騰です。

輸送のコストがこれだけ上昇すると、メーカーなどが商品に転嫁する可能性があるというわけです。

コンテナ不足を解消する手だてはないのでしょうか?

日本の海運大手3社がコンテナ船事業を統合した会社では、その時特に足りなくなっている場所に向けて、やむなく空(から)のコンテナだけを運ぶ船の運航を始めました。

本来、コンテナには必ずモノを入れて運びますが、コンテナの回転率を少しでも高めようという取り組みです。

空のコンテナを運ぶことは、会社にとっては無駄な出費ですが、そこまで事態は差し迫っているといえます。

コンテナが足りないなら、たくさん作ればいいのでは?

それがそんなに簡単ではないんです。

コンテナは9割以上が中国で生産されていますが、コロナ前は、米中貿易摩擦で輸送量が減っていたので、コンテナのメーカーは生産を大幅に減らしていたんです。

いまのコンテナ不足がいつまで続くかも見通せない中で、生産を大きく増やすことには踏み切れないようです。

海運会社の担当者も「コンテナ不足をすぐに解決するのは難しい」と話しています。

では、飛行機での輸送を増やすことはできないのでしょうか?

航空貨物も、少し事情は異なりますが、新型コロナウイルスの影響で、かつてない規模で需要が高まっています。

航空各社によりますと、国際貨物の運賃は例年の2倍近い水準で高止まりしています。

欧米からの医薬品や医療機器の輸入が増えたほか、リモートワークの定着でIT機器に使う半導体や電子部品の輸出が増えているんです。

一方で、貨物を運ぶ航空機の運航は減っています。

空での物流には、貨物便だけではなく、旅客便も活用されますが、感染拡大の影響で、全日空や日本航空は国際線の8割を減便していて、需要と供給のバランスが崩れてしまっています。

航空会社も、貨物専用機の臨時便を飛ばしたり、旅客機を貨物便に転用したりと工夫を続けていますが、このまま荷動きが滞れば、企業の生産や私たちの暮らしにも影響を及ぼしかねない状況です。