NEW2020年07月20日

「ご予約は?」はどこまで広がるのか

レストラン、美容院や歯科医院…。一部のサービスでは当たり前だった「予約」が、新型コロナウイルスをきっかけにさまざまな分野で広がっています。これまで自由に立ち寄ることができた場所も「ご予約されてますか?」と聞かれることになるかもしれません。「予約」はどこまで広がるのでしょうか。経済部の野口恭平記者に聞きます。

休園していた各地のテーマパークが予約制を取り入れて再開しました。

野口記者

東京ディズニーランドや東京ディズニーシーは事前にチケットを購入した人だけが入園できる予約制を取り入れました。最大でも通常の50%以下の入園者にとどまるように調整しているそうです。

上野動物園も、いわゆる「3密」を回避するためインターネットなどで来園の日時を予約する制度を導入しました。

「予約制」は、来店客が日ごろから多い“人気店”などで広がっていましたが、新型コロナウイルスをきっかけに、混雑を避けるために導入する動きが急速に広がっています。

たとえば航空会社や役所の窓口、ホテルのプール、私立学校の受験相談、ラーメン店などで予約制を取り入れる動きが出ています。

予約のシステムを提供しているリクルートによりますと、6月に寄せられた問い合わせはこの4月と比べて1.7倍に増えたそうです。

取材をする中で、私が、ちょっと驚いたのは、銀行の窓口でも予約が始まったことです。

銀行に行くのに予約が必要というのは確かに意外ですね。

野口記者

三井住友銀行は7月から国内のほぼすべてに当たる400余りの店や出張所に予約制を導入しました。

これまでは資産運用の相談など一部は予約制も取り入れていましたが、私たちが日ごろ利用する機会が多い口座の開設や住所変更といった手続にも広げたんです。

銀行の店舗は年金が支給される日や決済が集中しやすい「5・10日」(ごとうび)には混雑しがちです。待ち時間が長くなることもあります。

そこでスマートフォンやパソコンで予約をした人の対応を優先する仕組みにしたのです。

しばらくは予約しなくても手続きはできますが、将来的には振り込みなど一部の手続きを除いてほぼ完全予約制にすることも検討しているそうです。

なにかきっかけがあったのでしょうか。

野口記者

新型コロナウイルスの感染が広がり、緊急事態宣言が出ていた時、実は、銀行の店舗はとても混雑したんです。

年度がわりで住所変更が増えたこともありますが、外出自粛や在宅勤務で時間にゆとりができた人が「通帳印を変更したい」「古い硬貨を新しいものに替えてほしい」といって店を訪れ、外まで行列ができたという店もあったほどです。

感染が再び広がる前に混み合わない仕組みをつくる必要があったようです。

ただ、なんでも予約となると、結構な手間にならないですか?

野口記者

たしかにひと手間は必要ですが、メリットもあります。

例えば山梨県の「ほうとう」の専門店はコロナ対策で店内が混み合わないよう3月に当日予約のシステムを導入し、スマートフォンやパソコンで予約した客は、自分の前に何組の客が待っているか、入店までのおよその待ち時間をメールやホームページで確認できるようにしました。

せっかく観光地に行ったのに並ぶのに多くの時間を使ってしまったことありませんか?このシステムだと入店までの待ち時間で近くを観光したりお土産を買ったりできて時間の有効活用にもつながりますね。

店側にとっても混雑しすぎると十分なサービスが提供できませんし、客があきらめて別の店に行ってしまうかもしれません。予約システムで“来店の波”をなだらかにすることができれば従業員を効率よく配置できるというメリットもあるようです。

「予約制」は当たり前になっていくのでしょうか。

野口記者

消費動向に詳しい日本総研の小方尚子主任研究員は「予約のシステムは費用や労力がかかるため、なかなか導入が進んでいませんでしたが、新型コロナウイルスをきっかけに広がりました。インターネットの予約に不慣れなお年寄りなどへの配慮は必要ですが、人手不足の中で効率的にサービスを提供することにもつながり重要性が高まっていく」と話しています。

コロナが生み出した新たな日常=ニューノーマルとして「予約」がどこまで広がるのか注目したいと思います。