NEW2020年07月21日

うなぎ、ことしはちょっぴり安い?

ことし、「土用のうしの日」は7月21日と8月2日の2回めぐってきます。この時期、気になるのが、うなぎ。ここ数年は高値が続いていましたが、ことしは少しだけ値下がりしています。なぜなのか?農林水産業を取材している岡谷宏基記者、教えて!

ここ数年、うなぎは高くて手が出しにくかったです。ことしはどうなんですか?

岡谷記者

ことしは、去年やおととしに比べれば、少しだけ安くなっています。養殖業者で作る業界団体によると、今月1日の時点での出荷価格は1キロ当たり4800円と、去年より400円安くなっています。

これを受けて、スーパーなどの小売店でも、うなぎの価格は去年より安くなっています。流通大手のイオンでは、かば焼きを1匹当たり、去年より1割ほど安い2080円で販売しています。

どうして安くなったんですか?

岡谷記者

背景にはうなぎの稚魚=シラスウナギの漁獲量が増えたことがあります。

日本で消費されるうなぎのほとんどが養殖ですが、稚魚は漁でとる必要があります。その稚魚の今シーズン(去年11月~ことし4月)の漁獲量が17トン余りと、過去最低だった昨シーズンに比べて4.6倍に増えたのです。

漁獲量が何倍にも増えたのなら、もっと安くなってもよさそうなものですが?

岡谷記者

漁獲量が4倍以上に増えたからといって、市場に出回る量が一気に増えるわけではありません。

うなぎが市場に出回る量を左右するのは、稚魚がどれだけ養殖池に投入されたかを示す「池入れ量」です。国内で漁獲された稚魚と、輸入された稚魚を足し合わせもので、これには、資源保護のため上限が設けられているのです。

国内で稚魚の漁獲が少なかった時には、輸入を増やして対応してきた経緯があり、今シーズンの池入れ量は確かに平成27年以降では最多ですが、去年と比べた増加幅は32%ほどです。

また、うなぎ特有のタイムラグもあります。稚魚を養殖池に入れてから、出荷されるまでに半年から1年ほどかかります。そのため、土用のうしの日に向けて出回っているのは、昨シーズンのものが大半で、今シーズン分は昨年末から年明けにかけて漁獲された一部に限られます。

このため、漁獲量や池入れ量の増加がうなぎの小売り価格に、本格的に反映されるのは、ことしの秋以降になると見られます。つまり秋以降は、さらに値下がりすることも期待できます。

うなぎは、絶滅が心配されているとも聞きました。来年以降も大丈夫なんですか?

岡谷記者

ニホンウナギの稚魚

来年の漁獲がどうなるかは見通せないのが実情です。私たちになじみの深いニホンウナギの生態は、いまだに謎が多く、今シーズンの漁獲が多かった理由も分かっていないんです。

ニホンウナギは、野生生物の専門家などでつくるIUCN(国際資源保護連合)に絶滅危惧種に指定されるなど、長期的にみると資源量の減少が懸念されています。

こうした状況を背景に、稚魚の密漁に対する罰則が今の10万円以下から3年後には3000万円以下へと、大幅に引き上げられます。

一方で、ニホンウナギの稚魚は日本だけでなく、中国や台湾、韓国でも漁獲され利用されています。

うなぎを食べるという日本の食文化を次世代に引き継いでいくためには、こうした国・地域とも協力して、国際的に資源として保護していくことがますます重要になっています。