予算に出てくる「真水」って何?

政府が新型コロナウイルスの感染拡大に対応するための第2次補正予算案を決定しました。予算に盛り込んだ一連の対策の規模について、安倍総理大臣は230兆円を超える世界最大の対策だと強調する一方で、「真水」(まみず)としては、そこまで大きくないというニュースや記事を見かけます。この「真水」、一体何のことなんでしょうか。財務省で予算取材を担当している坪井宏彰記者に聞きます。
今年度早くも2度目となった補正予算案。「『真水』としては大したことない」と、その効果を疑問視する声も聞くのですが、「真水」とは、何を指すんでしょうか。
坪井記者

「真水」は、意味からすると「飲める水」「何か別のものを混ぜていない水」ということになりますが、予算や財政の用語として使うときは、実は明確な定義があるわけではありません。
その説明のために、まず、第2次補正予算案の内容を見てみます。
政府が実施する経済対策では、その規模を示す指標として「財政支出」と「事業規模」という数字が示されます。今回の対策では、「財政支出」が72兆円、「事業規模」が117兆円です。
「財政支出」は国の一般会計や特別会計からの支出・「国費」に、地方自治体の支出や、政府系金融機関などを通じて民間に資金供給する「財政投融資」を加えたものです。
一方、「事業規模」は、財政支出に、金融機関の融資や保証の枠、補助金を受けて民間企業が設備投資に拠出する資金なども含みます。一連の対策の規模が230兆円を超え、GDP=国内総生産の4割にのぼる世界最大の対策だと安倍総理大臣が強調しているのは、この事業規模のことで、財政支出に比べかなり大きくなります。
政府は、対策の大きさをアピールするため、事業規模のほうを強調したがる傾向があると言えます。
なるほど。そうすると、「真水」というのは財政支出のことを指すのですか?
坪井記者
「真水」は、財政支出よりもっと狭い概念で、一般的には、財政投融資は含まれません。財政投融資は、国が「財投債」と呼ばれる債券を発行して調達した資金を政府系金融機関などを通じて民間に供給する仕組みです。
今回の対策でいえば、中小企業向けの無利子・無担保の融資資金などとして活用されますが、回収を前提にしていることなどから除外されます。
最終的に、「真水」は、国の一般会計の支出だけを指しているケースや、これに特別会計や地方の支出も含めて言うケースもあり、何を「真水」とするかは、時の政権によって、また人によっても、異なるようです。
「真水」の支出には、具体的にどんな予算が含まれるんですか?
坪井記者

例えば一律10万円の給付、最大200万円を給付する事業者向けの「持続化給付金」や家賃支援の給付金。それに地方創生臨時交付金や10兆円の予備費などが含まれ、第2次補正予算案の国の一般会計の歳出は、過去最大の31兆9114億円となっています。
一方、4月に決定した緊急経済対策で打ち出した納税・社会保険料の猶予や、先ほど説明した金融機関の融資枠などは含まれません。
事業規模よりも「真水」のほうを重視する考え方があるのは、なぜなのでしょうか?
坪井記者
経済対策の効果を見るうえで、重視されるのが「真水」と言えます。
「真水」は国が直接支出する、実際に使われるお金を指しているので、GDP=国内総生産をどれだけ押し上げる効果があるのか、測りやすいとされています。
ほとんどが真水には含まれない、企業の資金繰りの融資枠なども、経済を下支えする大きな意味がありますが、実際にどれだけ利用されるかは見通せず、効果を測りにくいのです。
また、国の支出は、私たちの税金がどれだけ使われるのかを示しています。2つの補正予算を合わせて、一般会計の追加歳出は57兆円余りとなる一方、財源は全額を新たな借金にあたる国債の追加発行で賄い、将来世代につけを回す形になりました。そうした実際の負担を考える上でも、「真水」という概念は大事です。
いずれにしても、今回の2つの補正予算案は、「真水」にしても「事業規模」にしても、かつてない大規模なものであるのは確かです。
本当に有効に使われているのか、チェックしていく必要があります。
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