NEW2019年05月27日

なぜFCA+ルノー 日産はどうなる?

大手自動車メーカーのFCA=フィアット・クライスラーが、日産自動車と提携するフランスのルノーに対して対等合併による経営統合を提案しました。FCAは、ルノーが経営統合を求めている日産とも協力したいとしていて、今回の提案が日産とルノーの協議にどのような影響を及ぼすか注目されます。

FCA=フィアット・クライスラーとは、どんな自動車メーカーなんですか。

イタリアのフィアットが、2014年に、アメリカのクライスラーを完全子会社化して誕生した。SUVの「ジープ」のほか、「マセラティ」や「アルファロメオ」といった高級車ブランドも抱えている。世界での販売台数は484万台で世界8位。

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FCAは、統合によってルノーと合わせて870万台を販売する世界3位の規模を目指し、電気自動車や自動運転の開発で優位に立ちたいとしている。仮にこの統合案に日産と三菱自動車が加わった場合、世界での販売は1559万台となり、首位のフォルクスワーゲンを大きく上回ってダントツで世界トップのグループが誕生することになる。

でも、ちょっと待ってください。ルノーは、日産に対して経営統合を求めていましたよね。

そうなの。ルノーとの経営統合について、日産側は経営の自主性が失われるとして協議を拒否しているの。そうした中で、今度は、ルノーとFCAの経営統合の話が出てきたわけだから、問題はますますややこしくなっているわね。

FCAは提案の中で、ルノーと統合する場合には、会社の取締役の1人を日産から選び、日産や三菱自動車とも協力を進めたいという考えを表明しているの。

FCAは、なぜ、ルノーと経営を統合したいと考えたのでしょう。

FCAは、クライスラーを中心に北米市場が世界販売台数のおよそ半数を占めている。一方のルノーは、世界販売のおよそ半数をヨーロッパ市場が占めている(最大の市場はフランス)。

だから、両社は北米とヨーロッパ市場で補完関係にあると言えるわけ。またルノーは、傘下にロシア最大手の自動車メーカー「アフトワズ」を持ち、ロシアがルノーにとって2番目に大きな市場となっているから、FCAは進出の足がかりが得られる一方、高級車ブランドを持っていないルノーにとっては、FCAが持つブランドは魅力と言える。

自動車メーカー各社は、電気自動車や自動運転の技術開発を迫られているから、FCAは、規模の拡大や投資の効率化につながる自動車業界の再編にかねてから積極的。ことしに入ってからもフランスのプジョー・シトロエンとの統合を模索していたと伝えられていたの。

FCAとルノーの経営統合、日産への影響は。

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ルノーとの経営統合の行方に影響を与えるのはもちろんだけど、それだけじゃない。FCA+ルノーの連合に日産が加わった場合、主力の北米市場でFCAと競合することになる。日産は、北米市場を中心に業績の低迷が続き、立て直しが差し迫った課題になっているので、北米に強いクライスラーの車種と競合することになれば事業戦略の見直しを迫られる可能性もあるわ。

仮にルノーが日産と調整を行わないまま、FCAとの経営統合に向けた協議を行えば、北米市場で競合する問題を議論しないで話を進めることになって、日産側が反発を強めることも予想される。

それに加えて、ルノー側がFCAとの経営統合を前提にした新たな要求を日産側に今後示すかどうかも焦点となるわね。