NEW2019年02月26日

取締役が減る?!

株主が、企業経営の透明性をより高くするよう求める傾向が強まっています。大株主の機関投資家や、彼らに助言を行う会社が「社外取締役」を増やすよう求めているのです。その結果、「取締役の数を減らす企業が出てくるかも…」というのですが、いったいどういうこと?

社外取締役って、社内出身ではない人が取締役になって経営をチェックするんですよね。どのくらいの企業が導入しているのでしょうか。

東京証券取引所のまとめによると、上場企業のうち、社外取締役がいる企業は全体の97.7%。このうち、社外取締役が1人いる企業は17.8%、2人が43.9%で、3人以上という企業が36%。
東証が、「企業統治の指針」(コーポレートガバナンス・コード)で、社外取締役を2人以上選ぶよう上場企業に求めていることもあって、社外取締役の選任は進んでいる。
一方で、外部からは、まだまだ足りないという声もある。

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外部?

企業の大株主として経営に目を光らせる生命保険会社や信託銀行などの「機関投資家」や、その機関投資家に大きな影響力を持つ「議決権行使の助言会社」のこと。

株主が株主総会で議案に賛否を投じることを「議決権の行使」と言うんだけど、助言会社は、上場会社の総会の議案を分析して、株主に賛成すべきか反対すべきかをアドバイスしている。

たとえば世界的な助言会社「ISS」が2月に公表した日本向けの助言基準だと、上場企業およそ900社を対象に(※1)、社外取締役の割合を「3分の1以上」にすべきだとしている。

公表時点で373社はこの基準を満たしていないとのことで、今後も基準を満たさない場合、株主総会で、社長や会長の取締役選任に反対するよう株主に勧めているの。

3分の1以上…。10人の取締役がいたら、少なくとも4人は社外取締役にしろということですね。それが出来ない場合、経営トップの選任にたくさんの反対票が集まりかねないと。

そう。だから基準を満たしていない企業は対応を迫られていて、6月の株主総会の集中時期に向けて、社外取締役を増やす企業が相次ぎそう。

ただ、問題はここから。日本では、この5年ほどで急速に社外取締役を選任する企業が増えてきたこともあって、「なり手不足」が指摘されている。社外取締役になるにはそれなりの知見が必要だし、株主代表訴訟の対象になって損害賠償を求められることだってあり得るから、誰でも気軽に引き受けられるというわけではない。有望な「なり手」が見つからないとしたら、企業が取り得るのは…。

取締役全体の数を減らして、今いる社外取締役の割合を上げるってことですか!

その場しのぎに見えなくはないけど、企業の手としてはあり得るわけ。取締役の総数が適正かどうかは企業の規模や業務の範囲によって一概には言えない。ただ、企業の経営者が、取締役は何人で、そのうち何人が社外取締役であるべきか、真剣に考えさせられる時代になっていることは間違いなさそう。

同時に、日本全体として社外取締役の「なり手」をどう増やしていくかも考える必要がある。

ちなみに、別の助言会社「グラス・ルイス」は、経営陣の多様性を高める観点から、2020年2月以降、東証1部・2部の上場企業で、女性役員(※2)が1人もいない場合、会長や社長の選任に反対するよう勧める方針を明らかにしていて、社外取締役だけではなく、さまざまな観点で企業経営の透明性や多様性を高めるよう求める動きは強まっていきそうね。

※1 会社法上の「指名委員会等設置会社」と「監査等委員会設置会社」が対象

※2 取締役や監査役、「指名委員会等設置会社」での執行役。