ゼロックス買収 阻む人物とは?

富士フイルムホールディングスがしかけた、アメリカの名門企業「ゼロックス」の買収。ことし1月に合意したものの、ゼロックスは一転して買収合意を破棄すると発表しました。その理由とは…?

ゼロックスの買収、ずっともめていましたが、合意を破棄したと発表しましたね。

ゼロックスは1906年創業で、複写機を普及させたことで知られる、アメリカを代表するメーカーの1つ。かつて紙をコピーすることが、“ゼロックス”と呼ばれたくらい、よく知られた名門企業なの。同じゼロックスでも、日本の「富士ゼロックス」は、アメリカのゼロックスと富士フイルムホールディングスの合弁会社なのよ。

富士フイルムホールディングスはことし1月、このアメリカのゼロックスを買収し、子会社の富士ゼロックスと経営統合させることで合意したと発表していたの。古森重隆会長は「世界最大規模の情報機器会社になる。売り上げ拡大とコスト削減が可能になる」と自信を示していたけど、実はこのときから「本当に大丈夫?」と不安視されていたのよ。

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何が不安視されていたのですか?

「物言う株主」よ。そのひとりが、大株主のカール・アイカーン氏。
かつて「ブリヂストン」のアメリカ企業の買収を断念させたこともある著名な投資家で、「アクティビスト」とも言われている。彼らは、買収が決まる前からゼロックスに対して、富士フイルムとの合弁事業を見直せ、と強く要求していた。

そして今回、買収が合意したあとも、ゼロックスの価値が過小評価されているとして、買収に反対する立場をとったわけ。ほかの株主に書簡を送って反対するように呼びかけたり、ニューヨーク州の裁判所に買収の差し止めを求める訴えを起こしたりしたの。

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それで結局、買収の合意を白紙にさせたということですね。

そういうことね。アイカーン氏は「非常に喜んでいる。きょうはゼロックスにとって新たな始まりを告げる日だ」というコメントを発表し、まさにしてやったりというところね。
一方、富士フイルムは「ゼロックスには一方的に契約を終了する権利はなく抗議する」という声明を出し、訴訟や損害賠償請求も辞さない構えで、長期戦は避けられそうもないわね。

この業界は、インターネットの普及によるデジタル化、ペーパーレス化が進み、厳しい経営環境が続いている。だからこそ、富士フイルムは、ゼロックスを買収して企業規模を拡大し、コストの削減を実現しようとしたし、ゼロックス側もそれに応じようとしたわけ。 富士フイルムは、買収を諦めていないけど、それにこだわっていれば時間だけがいたずらにすぎていくリスクもある。買収に代わる新たな戦略も迫られることになりそうね。