NEW2018年03月02日

日銀総裁って なにする人?

「銀行の銀行」である日本銀行、略称「日銀」。政府は、ことし4月に任期を迎える日銀のトップ、黒田東彦総裁を再任させる方針です。

日銀と言えば「物価の番人」だなんて習った記憶があるけど、そのトップである総裁はどんな役割を果たしているの?

最大の役割は、物価の安定に向けた「金融政策のかじ取り」よ。日銀は、年に8回、金融政策決定会合という会議を開いて、世の中に出回るお金の量や金利の水準をどうコントロールするのか、議論をしている。

この会合の議長を務めるのが総裁なの。金融政策は総裁と2人の副総裁を含む9人の政策委員が多数決で決めるんだけど、これまで、議長である総裁の提案が否決されたことはないのよ。

総裁の判断は重いんですね。毎回の記者会見も国内外のメディアが大勢集まり注目されていますよね。

そうね。日銀の金融政策の動向は私たちの暮らしはもちろん、株価や円相場など、金融市場にも大きな影響を与える。なので、市場関係者も日銀の次の一手を探ろうと、総裁の一言一句に神経をとがらせているのよ。逆に言えばちょっとしたニュアンスの変化でも投資家が過敏に反応することがあるので、日銀総裁は「市場との対話」がとっても重要なの。

また、G7やG20などの国際会議の場で、日本経済の状況や金融政策の考え方をしっかり伝える発信力も求められるわ。

その総裁を決めるのは日銀自身ではないんですね。

日銀総裁は国会の同意を得たうえで、内閣が任命することになっているの。任期は5年間で、黒田総裁が再任されて5年間を大きく超えて総裁を務めることになれば、昭和31年から8年余り、総裁を務めた山際正道氏以来、およそ60年ぶりのことになるわ。

戦後就任した日銀総裁14人を見ると、13人は日銀と旧大蔵省の出身者。昭和44年に就任した佐々木直氏から平成10年就任の速水優氏までの7人は、日銀出身者と旧大蔵省の事務次官経験者が交互に総裁になる「たすき掛け人事」なんて言われた時期もあったわ。

戦後の歴代日銀総裁

氏名

出身

31

黒田 東彦

財務省

30

白川 方明

日銀

29

福井 俊彦

日銀

28

速水 優

日銀

27

松下 康雄

旧 大蔵省

26

三重野 康

日銀

25

澄田 智

旧 大蔵省

24

前川 春雄

日銀

23

森永 貞一郎

旧 大蔵省

22

佐々木 直

日銀

21

宇佐美 洵

旧 三菱銀行

20

山際 正道

旧 大蔵省

19

新木 栄吉

日銀

18

一萬田 尚登

日銀

17

新木 栄吉

日銀

金融政策を決めたり、国際会議に出たり…。総裁の仕事はやはり激務なんでしょうね。

責任の重さはもちろん、実際の仕事もハードよ。2017年の1年間で、黒田総裁はG20などの海外出張が13回、合計60日間あり、国会への出席も合わせて20回あった。

黒田総裁は現在73歳。再任されてさらに5年間務めれば80歳近くになるだけに、まさに激務になりそう。

ニュース画像

再任が決まった場合、課題は?

デフレ脱却に向け、物価を2%上げるという目標を実現させたうえで、今の大規模な金融緩和を正常化させていくことに尽きると言えるわ。

黒田総裁は5年前の就任時に「2%の物価目標を2年程度で実現させる」と明言したけど、今なお実現できないでいて、達成時期の見通しもこれまでに6回も先送りしたの。

2008年のリーマンショック以降、危機対応で異例の金融緩和に踏み切ったアメリカやヨーロッパの中央銀行は金利を引き上げたり、金融緩和を縮小したりする「金融政策の正常化」にすでに踏み出している。

一方の日銀は大規模な金融緩和が長期化して歴史的な低金利がさまざまな副作用を生じさせているので、2%の物価目標を早期に実現し、金融政策の正常化に向けた道筋をつけていくことが急がれているのよ。