原発事故12年 各号機の現状 「燃料デブリ」取り出しへ重要局面

2023年3月10日

東京電力・福島第一原子力発電所の事故から12年となるなか、廃炉作業は、最大の難関とされる「燃料デブリ」の取り出し開始に向け、重要な局面を迎えています。

廃炉 計画に遅れ

国と東京電力の福島第一原発の廃炉に向けた中長期ロードマップでは、廃炉が終わるまでには最長40年かかるとされ、工程は以下のように大きく3つに分けられています。

▼第1期・使用済み核燃料の取り出し開始までの期間(2年以内)。

▼第2期・燃料デブリ取り出し開始までの期間(2021年12月)。

▼第3期・廃炉措置の終了までの期間(事故の年から30~40年後)。

この計画に基づくと、事故から12年となる2023年3月時点は「燃料デブリ」の取り出しが開始されているという想定でしたが、まだ取り出しは始まってなく、計画より遅れています。

デブリとみられる堆積物

「燃料デブリ」推定880トン

「燃料デブリ」は、事故で溶け落ちた核燃料が周囲の構造物と混ざり冷えて固まったものです。1号機から3号機までの原子炉や外側の格納容器の下部には、あわせて880トンの燃料デブリがたまっていると推定されています。燃料デブリの取り出しは、廃炉作業における最大の難関とされていますが、強い放射線で人間は近づけず、内部調査に使われるロボットも、事故で壊れた構造物に行く手を阻まれるなどして、調査の段階から作業は難航しています。

1号機内部

格納容器内部はいまだに全容がつかめない状況ですが、10年以上かけてロボットによる調査を重ねた結果、少しずつ1号機から3号機までの状況が明らかになってきました。

3号機 格納容器内部

その結果、これまでに1号機から3号機の格納容器の底の付近では、燃料デブリの可能性がある堆積物が見つかっています。こうした成果を踏まえ、国や東京電力は最も内部調査が進んでいる2号機で、2022年内にイギリスで開発されたロボットアームを使い試験的な取り出しに着手する計画でしたが、改良や設計の見直しなどが必要になり、1年から1年半程度、延期することにしました。

これに伴い、早ければ2023年に2号機で燃料デブリの試験的な取り出しが始まる可能性があり、ロボットアームの先端に取り付けた金属製のブラシで堆積物をこすりとり、数グラム程度を採取する計画が示されています。この作業が実現したあと、国と東京電力は、燃料デブリを取り出す量を段階的に増やすとしています。

このため燃料デブリ取り出しの第一歩となる2号機での計画の成否は、廃炉全体の工程にも影響を及ぼす可能性があります。

各号機の最新の調査状況

ここからは各号機の格納容器内部など最新の状況を見ていきます。

1号機 格納容器内部の状況把握進める

1号機では、2022年2月からのロボットによる格納容器内部の調査で堆積物の塊が映像などで確認され、東京電力は、この一部が燃料デブリである可能性があると発表しました。また、2022年5月には、格納容器の底部で、原子炉を支える鉄筋コンクリート製の「ペデスタル」という構造物が壊れ、鉄筋がむき出しになっている状況が映像で確認されました。

ことし1月からは堆積物のサンプリング調査が行われ、国や東京電力は、1年ほどかけて元素の種類などを分析するほか、堆積物の広がりを3Dで再現するなどして、内部の状況を詳しく把握することを目指すとしています。

2号機 調査が最も進展、試験的な取り出し開始目指す

2号機は、原子炉建屋が水素爆発を起こした1号機や3号機と比べ、調査を妨げる構造物が比較的少なかったため、3つの号機の中で最も内部調査が進んでいます。

このうち2018年に行われた調査では、格納容器の底の付近で燃料デブリと見られる厚さ40センチから70センチほどの小石状の堆積物があることが確認され、堆積物の硬さなどの調査も行われました。現在、試験的な取り出し開始に向けた準備が進められています。

3号機 燃料デブリが水没、今後10年程度で取り出し開始目指す

水素爆発が起きて2日後の3号機(2011年3月16日撮影)

3号機は、2017年の格納容器の内部調査で、厚さ3メートルほどの燃料デブリとみられる堆積物が確認されました。その多くが水中にあると見られていて、燃料デブリの取り出し方法については、原子炉建屋を巨大な構造物で覆い内部を水で満たして取り出すなど、複数の案が検討されている段階で今後、10年程度かけて取り出し開始を目指すとしています。

4号機 核燃料の取り出し完了済み

中央下が4号機 建物の上部が激しく壊れている(2011年3月16日撮影)

事故当時、定期検査中だった4号機は原子炉に核燃料はなかったものの使用済み燃料プールに1535体の核燃料が入っていました。事故のあと電源が失われ燃料プールの冷却ができなくなった上、原子炉建屋が3号機から流れ込んだ水素の影響で水素爆発を起こして壊れました。燃料プールの水がなくなり、使用済み燃料などの冷却ができなくなると燃料が溶け出すおそれがあるため東京電力や国は燃料プールへの注水への対応に追われました。

その後、東京電力などは代替の冷却装置などでプールへ注水するとともに、2013年11月から使用済み燃料プールからの燃料の取り出しを始め、1年余りあとの2014年12月に取り出しを終えました。

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