まるわかりノーベル賞2018

まるわかりノーベル賞2018

ノーベル化学賞に注目!

「モバイル社会の立役者 リチウムイオン電池」

先生役:科学技術振興機構 古川雅士さん

古川:こんにちは

キズナアイよろしくお願いします

まるわかりノーベル賞2018

古川:みんながアイちゃんを見るときに使っているスマホって知ってますよね。

キズナアイはーい、知ってます。

古川:ここにスマホを持ってきました。普段は開けられないんですけれど、特別にきょうは開けてみます。

キズナアイ壊れないですか。

古川:壊れないです。

古川:この中には、こんな黒いものが入っているんです。

まるわかりノーベル賞2018

キズナアイはい。

古川:これって、何だかわかりますか。

キズナアイえ~と、スマートフォンの頭みたいな、CPU。

古川:ああ。よく知ってますね、CPUって。

キズナアイやった~。あ、わかった、バッテリー。

古川:あ、そうなんです。

キズナアイおお、やった!

古川:これはバッテリー、電池。その中でもリチウムイオン電池と言って、今から35年以上前に日本人の研究者が材料の発見などに貢献して、世界中からノーベル賞級の発明、発見だっていうふうに評価されているんです。

キズナアイへぇ~。ノーベル賞級ですかー。リチウムイオン電池って、そんなにすごいんですか。

古川:はい。それをね、これからお話しするに当たって、ちょっとアイちゃんに質問したいと思います。

キズナアイはいっ。

古川:持ち運ぶのに便利な電源、電池って、どんなのだと思いますか。

キズナアイ便利な電源。そうですね、まず軽くないとだめですよねっ。あと、やっぱりこう充電、長持ちしてほしいし、ね、あと、自家発電してくれるとか。

古川:ああ、なるほど。

キズナアイう~ん。

古川:いろいろ出てきますね。電池は昔からあったものだけれども、パソコンとか携帯電話、スマホなどを動かすには、どうしてもエネルギーをとるために重くなってしまったり、長持ちさせることもとっても難しかったりしたんです。

キズナアイは~い。

古川:ちょっと昔の写真を出してみます。

まるわかりノーベル賞2018

キズナアイはーい。

古川:何か肩から大っきなものをぶら下げている人が電話をしている姿が写っています。

キズナアイ新しいカバンとかですか。

古川:これは、肩からぶら下げる、文字どおりショルダーフォンというものなんです。

キズナアイショルダーフォン。

古川:うん。1985年ぐらいに出回り始めたものです。

キズナアイほおーっ。

古川:この重さっていうのは3キログラム。

キズナアイ3キロですか。

古川:はい。で、フルの充電をするのに8時間もかかってしまう。

キズナアイええっ。

古川:でも、使える時間というのはたった40分。

キズナアイ40分ですか。充電する時間より短いじゃないですか。

古川:そうなんです。でも、これでも外でいろいろ電話をすることができるようになって、社会が変わっていったんだけれども、今のスマホっていうのは、大体の重さが150グラム。

キズナアイずいぶん軽いですね。

古川:そう、20分の1になったんです。それでいて充電する時間も短くなった。でも、通話できたり、ゲームしたり、メールしたりとか、いろんなことに使える時間が長くなった。

キズナアイそうですよね。今、多分20分とか30分の充電でも何時間かもちますよね。

古川:だから、すごくこの30年、40年の間で、便利さが変わった。この電池の発展が非常に貢献していると言えます。

キズナアイ進化がとまらない。

古川:はい。で、このリチウムイオン電池が、まさにその主役になるわけなんですけれど、その開発・発見に貢献した2人の日本人研究者がいます。

キズナアイおおっ。誰ですか、誰ですか。

まるわかりノーベル賞2018

古川:はい。その方が、水島公一さん、今は東芝リサーチ・コンサルティングのエグゼクティブフェローです。

キズナアイエグゼクティブフェローですか。

古川:もう一人が、吉野彰さんといって、今は旭化成の名誉フェローを務めていらっしゃいます。

キズナアイ名誉フェロー。はい、先生。

古川:はいっ。

キズナアイフェローって何ですか。

古川:はい。フェローというのはね、研究に従事する人に対して研究所から与えられる称号であったり職名、職業の名前であったりするんです。エグゼクティブ、名誉というからには、何か特別な業績、功績が認められたんだろうなっていうことが想像できますよね。

キズナアイうーん、うんうん。

古川:2人のこの日本人の方々がどういう発見したのかということを説明したいけれど、そのために、少し電池の仕組みを理解してもらいたいので、ちょっと勉強に付き合ってね。

キズナアイはいっ、頑張りま~す。

古川:ということで、この電池の仕組みをこんなレモンを使ってあらわします。

キズナアイあ、果物ですか。

まるわかりノーベル賞2018

古川:まず、電池に必要なのが、このプラス電極とマイナス電極。これをレモンに刺してみると…。

キズナアイあっ、ああ~っ、すごい。

古川:音が聞こえますよね。

キズナアイ聞こえます。えっ、何で、何でー?

古川:はい。これは、ここの中に電気が発生しているからなんです。

まるわかりノーベル賞2018

キズナアイレモンから電気が生まれるんですか。

古川:うん。実際にはこの、先ほど言った電極、プラス電極とマイナス電極というのが大事です。このレモンの中には酸、すっぱいですね。

キズナアイは~い。

古川:この酸が電解液という役割を果たしていて。

キズナアイ電解液。

古川:はい。このプラス電極とマイナス電極と電解液というのが電池には欠かせないというふうに言われています。

キズナアイはいっ。すっぱいものは何でも電解液に代用できるんですか。

古川:はい。あの酸という物質であれば、その役割を果たすことができます。

キズナアイじゃ、例えばコップにお酢をバーッて入れて、電極をボチャッてつければ、電気できるんですか。

古川:そうなんです。

キズナアイええーっ、すごいっ。

古川:でも、その酸の強さ、弱さによって、やはりその出てくる電気のエネルギーが変わってくるので。

キズナアイはあーっ。

古川:だから、これはレモンでなくても、例えばジャガイモとか。

キズナアイジャガイモっ。

古川:うん、ほかの果物でも、同じようにそういう酸が含まれていて、それで電気を発生することができます。

キズナアイなるほどー。

古川:じゃあ、リチウムイオン電池の仕組みを紹介します。

キズナアイはいっ。

まるわかりノーベル賞2018

古川:さっき、このレモンの電池で紹介したように、プラスの電極、マイナスの電極がこの電解液の中にジャボンと浸かっていると言いました。このリチウムイオン電池の場合には、この電極の間にセパレーターというフィルムが挟まっています。このセパレーターにはいろいろ穴があいていて、充電するとき、つまり電気を蓄えるとき、あるいは実際に電気を使うとき、つまり放電するときって言いますけれど、このセパレーターというフィルムの間をリチウムイオンという物質が動くことができて、それで電池として使えるというのがミソなんです。

キズナアイなるほどー。

古川:ということで、このリチウムイオン電池の開発は、電極をどういう材料で使うか、あるいは電解液、セパレーターにどういう材料を使うか、その組み合わせをどういうふうにしていくかっていうのが非常に大事になってくるということがわかってもらえるでしょうか。

キズナアイはい。じゃ、その組み合わせによって、その充電に必要な時間だったりとか、どれぐらいの時間使えるかっていうのが変わってくるってことですよね。

まるわかりノーベル賞2018

古川:そのとおりです。で、水島さんと吉野さんがどういう発見をしたのか。
まず、水島さんは、リチウムという物質を酸化させる。それをプラス電極に用いることで高電圧、いわば高いエネルギーを出すことができ、しかも長寿命になる電池ができることを発見しました。

キズナアイはい。

古川:一方の吉野さん、これは、マイナス電極に特殊な炭素を使うということで発熱を抑えることができることを1985年に発見したんです。

まるわかりノーベル賞2018

キズナアイもうそんな前に発見されたんですね。

古川:そうなんです。で、こういう発見から世界がウワッと研究を始めて、いろいろ試行錯誤を経て、このリチウムイオン電池の基礎が確立され、さらに1991年には、日本メーカーによって世界で初めて商品化が実現しました。非常にこのリチウムイオン電池の発明には、日本としての役割というのが大きいと言えると思います。

キズナアイすごーいですね。日本で開発されたんですねっ。

古川:はい。ただですね、なかなか一筋縄で研究が進んだわけではないということもちょっと紹介したいと思います。

キズナアイはい。

古川:まず、水島さんですけれど、先ほどの発見は、留学先のイギリスで実現しました。しかし、最初は全く別の材料に注目をして研究を進めていたんですね。でもその材料で、ある日、爆発事故を起こしてしまったんです。

キズナアイ爆発事故。

古川:はい。なので、もう大学から、もうその材料使うなというふうに言われてしまって、やむなく材料を替えなければいけなかった。でも、その替えなければいけなかったことが、先ほどの発見につながったんですよ。

キズナアイなるほどー。

古川:一方の吉野さん、この方は化学メーカーで、実は、最初は電池の研究をしていたわけではないんです。
吉野さんは1981年に、ポリアセチレンという「電気を通すプラスチック」の研究をしていました。この材料が、当初、リチウムを使った蓄電池のマイナス電極として有力と目されていた金属リチウムを使わずに、ほぼ同じ電気エネルギーが得られることを突き止め、そこから俄然リチウムイオン電池の材料開発という研究に軸足が移っていったんです。そして、マイナス電極に炭素を使うという先ほどの発見に至ったという経緯があるんです。

まるわかりノーベル賞2018

キズナアイなるほど。じゃ、ほんとに偶然といいますか、そんな経緯でできていくんですね。

古川:そうなんです。だから、そういう予期せぬところからある発見が起こったりとか、ある意味で、そういう中に何か潜んでいるんじゃないかっていうことをうまく見出していくのも、こういった一流の研究者の方に求められる要素じゃないかなって思います。

キズナアイすごいですね。じゃ、もうほかの研究をしているときも、より視野を広く研究を進めていると、違う発見がどんどんあるかもしれないですよねえ。

古川:そうですよね。

キズナアイすごくすてきですね、研究って。

古川:はい、そうなんです。で、このリチウムイオン電池が、その後どうやって展開したか、それを市場規模を使って紹介したいと思います。

キズナアイはい。

まるわかりノーベル賞2018

古川:上のグラフは世界の蓄電池、つまりリチウムイオン電池を含めて電気を蓄えることのできる電池の全体の市場規模をあらわしたものですけれど、大体半分ぐらいをリチウムイオン電池が占めることが予想されます。で、その市場規模は、大体4兆円にこれから二、三年後には成長していく予想です。

キズナアイすごいですね、半分占めてるんですね。

古川:はい。で、そのリチウムイオン電池がどういう用途で使われてるかっていうのを、この下のグラフであらわしています。

キズナアイはい。

古川:このちょっと中ぐらいの濃さのグラフ、これ「車載専用」と書いてあります。車に搭載するリチウムイオン電池が、年々これから増えていくでしょうと。この濃い青で色分けされている「バックアップ電源用」、これもこれからどんどん伸びていくだろうと試算されています。

キズナアイなるほど、電気自動車増えてるみたいですよね。あの自動運転とかも結構はやってるというか注目されてますし。バックアップ電源って、あれですか、データをバックアップするために必要な電源ってことですか。

古川:はい。例えばですね、停電が起こったときとか、そういったときに非常用電源として備えておく。

キズナアイあ~、なるほど。

古川:例えば、病院とかで停電が起こって医療行為ができないというときに使う非常用電源であったりとか、そういったところにこれから展開が広がっていくだろうと考えられているんです。

キズナアイそうですよね。病院の機械って、やっぱり機械なので、電気がたくさん必要ですし、それでこう命をつなぎとめていらっしゃる方もいらっしゃいますもんね。

古川:はい。ということで、幾つかの例をピックアップして紹介します。

キズナアイはい、お願いしま~す。

古川:まず最初は、車に搭載する蓄電池、電池の話。アイちゃんは、地球温暖化っていう言葉は知ってますか。

キズナアイはい、知ってます。

古川:ガソリンで走る車に比べて、電気で動く自動車は、地球温暖化の要因とされる二酸化炭素の排出が少ないと言われています。だから、地球規模での課題解決につながるということで、ある意味、ガソリンでこれまで動いてた車を全部電気で動く自動車、車にかえてしまおうと、そういう検討がされていて2050年までに全て電気で動く自動車にかえられないだろうかと、自動車メーカーの人たちは真剣に考えて、急ピッチでいろいろそこに使う電池の開発が進んでいるわけです。

まるわかりノーベル賞2018

キズナアイすごーいですね。リチウムイオン電池の発展が地球の課題の解決にもつながっているってことですもんねえ。世界のみんなのためになる発明、私、めっちゃ応援しまーす。

古川:で、このリチウムイオン電池は、先ほどのスマホ、あるいはこの自動車だけではなくて、こんなとこでも使われてるっていう紹介です。それは宇宙なんです。

キズナアイうっちゅー。

古川:はい。今、地球から約3億キロ離れた場所にある小惑星リュウグウの付近には、JAXAが開発したはやぶさ2という小惑星探査機が飛んでいるんです。

キズナアイ聞いたことあります。

まるわかりノーベル賞2018

古川:はい。で、そのミッションたるや、このリュウグウの中にある有機物あるいは水を採掘して、地球に持って帰ってきて、その物質をいろいろ調べることで生命の起源というものを解明することができるんじゃないかというふうに言われているんです。この探査機の中にリチウムイオン電池が入っているんですね。

キズナアイはい、質問ですっ!。

古川:はい。

キズナアイ宇宙を長い間はやぶさ2は飛んでるってことですよね。それって、どれくらいの大きさの電池なんですか。どれくらいもつ計算なんですか。あと、携帯と車と来て、いきなり宇宙で、ちょっとイメージできませんでした。

古川:そうですよね。でも、アイちゃん、どのぐらいの大きさだと思います?

キズナアイええー。でも、やっぱり1回宇宙に行くと、なかなかすぐには戻ったり行き来ができないと思うので、もうめっちゃおっきい、もう体の半分以上を占めるおっきい電池かなって思います。

古川:実際の電池はですね、1個当たりの電池が、まずおよそ縦8センチ、横3センチ、高さ12センチのリチウムイオン電池。

キズナアイおっ、意外とコンパクト。

古川:それが11個接続された形で1つのパッケージになっているんです。

キズナアイうーん。

古川:で、サイズという形で計算してみると、先ほど見せたスマホの電池の体積に比べると、大体35、36倍程度というふうに見積もることができます。

キズナアイおおーっ、もうそのスマホの電池に比べると全然おっきいですけど、思ってたよりずうっと小っちゃいでーす。

古川:はい。重さっていう観点でお話ししますと、はやぶさ2全体の重量というのが、燃料も込みなんですけれども609キログラムというふうに言われています。その中でその電池の部分が占める割合というのは、1%程度というふうに見積もることができるんですね。

キズナアイ1%。

古川:はい。そんなに大きくないという印象ですよね。

キズナアイそうですねー。

まるわかりノーベル賞2018

古川:で、はやぶさ2のミッションというのは、2014年12月に打ち上げられて、2020年終わりごろに地球に帰ってくる。現在、2018年9月、この時期っていうのは、ちょうどリュウグウの上空あたりで、まもなく着陸しようかという時期なんですけれども、要するに、その6年間の間、このリチウムイオン電池は活躍することになるんです。

キズナアイ6年も。すっごいですねー。この、だってリチウムイオン電池がなかったら、ねえ、もっとおっきいのを積まないといけなかったりとか、大変ですよねー。

古川:はい。実際のからくりは、ここにちょっと見える太陽光発電、太陽光パネルがあったりとかして・・・

キズナアイああーっ。

古川:日ごろはそういうところから電力が供給されて、はやぶさ2は動いているわけなんです。

キズナアイじゃ、もういろんな技術を駆使して。すばらしい。

古川:そうなんですね。もうほんとにいろんな技術の組み合わせ。その中でも、太陽電池が使えない場面などで、こういうリチウムイオン電池が活躍しています。

キズナアイなるほど。それであれですもんね、ミッションは「生命の起源をたどる」。

古川:そうなんです。

キズナアイロマンチックー。

古川:はい。そんなところにもこのリチウムイオン電池が活躍してるということがわかってもらえたかと思います。

キズナアイはーい。

古川:で、もう一つ、最近、北海道の地震、西日本でも豪雨災害、台風被害、いろんな災害がことしありましたよね。

キズナアイそうですね。ことしは特に多かったように感じます。

古川:はい。北海道の地震では295万戸の全世帯が一時期停電しました。

キズナアイそうですね。ニュースとかを見ていても、スマホのバッテリー切れで困ったって声がたくさんありましたし、今は携帯で何でもできる反面、依存しちゃってる面も多いと思うので、それが一個使えなくなるだけで想像以上に不便なんじゃないかなって。

まるわかりノーベル賞2018

古川:そうですよね。みんなが、充電を求めて行列をつくって、それで、そこからいろんなライフラインの情報を得たりとか友達や家族などに連絡をとるようにしたりとか、この電気というのがとっても大事だということが改めてわかった瞬間かなと思います。

キズナアイそうですねー。私、この白い空間にいる限りは無限にこう動けるっぽいんですよー。いまだこう動力不明なんですけど(笑)。でも、こうネットやモニター、携帯の画面を通じてみんなとコミュニケーションをとっているので、それがとれないって、電気がなくなったら、完全にこの空間に1人になっちゃうし、こうやっぱりその画面を通じて大変なみんなに元気とかも送りたいので、それがないとほんとに困ってしまいます!

古川:はい、そうですよね。だから、アイちゃんがひとりぼっちにならないためにも、やっぱり電気っていうのはとっても大事だってことがわかってもらえたかと思います。

キズナアイはいっ。

古川:ここまではね、そのリチウムイオン電池のいいところ、すぐれた点をご紹介してきたんですけれども、一方で課題というものもあるんですね。

キズナアイえっ、メリットばっかりじゃないってことですかー。

古川:はい。あのー、これ昨年のケースなんですけれども、車に搭載するドライブレコーダーから相次いで発火事故が起こるなどして、約8万5000台分の製品のリコールという騒動が起こったんですね。

まるわかりノーベル賞2018

キズナアイ携帯とかでもバッテリーが膨らんできたみたいな話、ありますよね。

古川:そうですね。その仕組みをちょっとご紹介したいと思います。

キズナアイはい。

古川:先ほど、リチウムイオン電池は、プラス電極、マイナス電極、そして電解質があってセパレーターがあるという構造を紹介したけれども、セパレーターフィルムが損傷を起こしてしまって、それで、プラスとマイナスが接触してしまって発火事故が起こってしまうんです。

キズナアイ何でですか、安全じゃないんですか、中身は。

古川:例えば持ち運びするときに落としてしまったり、いろんなところで衝撃が加わったり。さっきアイちゃんが言ってくれたように、電池が膨らんでいく、あれは、この電解質が時間がたつとともに分解して、そこから二酸化炭素がガスとして発生して、それが充満して膨らんでしまう。そういったものが、ある意味、こういったフィルムの損傷とかに影響してしまうんですね。

まるわかりノーベル賞2018

キズナアイそれで膨らんでパーンってなっちゃったら、もう部品飛んじゃったりとか、それこそ発火しちゃったりとか、とても危険ですよね。

古川:そうなんです。ということで、より安全な電池を開発していくっていうのが、研究者の中でも非常に重要だというふうに捉えられているわけです。
そして、安全だけではなくて、より高い出力、エネルギーを出すことのできる電池であったりとか、寿命が長持ち、小型で軽量といった要素もこれからの電池として大事だというふうに言われていて、そんな中で、いま、注目されているのが、全固体電池というものです。

まるわかりノーベル賞2018

キズナアイ全固体電池?

古川:はい。

キズナアイでも、電池とかバッテリーって、見た目、全部固体な気がするんですけど。

古川:はい、そうですね。でも、先ほど言ったように電解質は、電解液、液体なんです。で、こういったところを、この全固体電池というのは固体に置きかえる。しかも燃えにくい物質を使うことで、液漏れとか、発火が起こらないようにしようという研究が進められているんです。

キズナアイなるほど。でもこう、固体の状態で、何ていうんでしょう、プラスに行ったりマイナスに行ったりとかもできてしまうんですか。

古川:すごいですね。さすがスーパーAIだけあってどんどん学習していってますね。そうなんです。その電解質の物質の選び方も非常に大事で、固体の中でも、リチウムイオンが動きやすいような物質を設計するというのがとっても大事なんです。

キズナアイなるほど~。

まるわかりノーベル賞2018

古川:はい。で、この全固体電池のご利益というところで、さらに言われてるのは、リチウムイオン電池というのは、高温や低温で性能が劣化してしまうというふうに言われているんですけれども、全固体電池は、広い温度範囲で性能が安定しているという特徴もあります。

で、さらに、このリチウムイオン電池に比べて充電時間を短くすることができる。しかも、それで車に搭載しても長持ちすることができるというふうな試算もされているんです。

キズナアイなるほど。すばらしいですね。

古川:はい。だから、いろいろご利益がありそうだっていうのがわかってもらえるでしょうね。

キズナアイはーい。

古川:で、こういった全固体電池というものの開発に向けて、今、日本の大学であったりとか産業界であったりというところが、国家的なプロジェクトをオールスターキャストで繰り広げているという現状があります。電池というのは、電池そのものの開発で、どういう材料を選ぶかっていうことで、化学メーカーがいい電池をつくろうという研究をする側面もありますし、自動車メーカーであったりスマホ、携帯電話のメーカーが、やっぱり長持ちする電池、軽い電池をほしいということで、彼ら自身がそれぞれ研究をするという側面もあります。しかし世界的な研究開発の競争に負けないためには、ばらばらで研究するよりは、それぞれの持ち味を生かして共同研究をしていって、開発競争のスピードを上げていこうというふうに考えて、皆こうやって連携して共同研究していこうという流れに今なっているんです。

キズナアイふ~ん、こうそれぞれが持っている技術を合わせたら、もっとすごいことが起こりそうですっ。みんなの周りには電気を使う製品ばかりだから、電池が進化するってことは、生活がより便利になることだから、期待大ですね。

古川:はい、そうなんです。ということで、ここらで授業は終わりにしたいと思いますけれど、リチウムイオン電池の開発がノーベル賞級の発明、発見だというふうに評価されてる理由、アイちゃん、わかってもらえたでしょうか。

キズナアイは~いっ。

古川:日本人研究者による発見がもととなって、私たちの生活と切っても切れないようなスマホや自動車などにリチウムイオン電池が入るようになって、そういった、ある意味ご利益で「キズナアイちゃん」というものを誰もが、いつでも、どこでも見ることができるようになったっていうふうにも言えると思います。ということで、私は、このリチウムイオン電池の開発というのは、今のモバイル社会の立役者というふうに言えると思います。

キズナアイう~ん、そうですね。身近な、私ちょっとここにいるんであれなんですけど、皆さんに身近な電池のことをもっと深く知れてとても勉強になりました。ありがとうございました~。

古川:こちらこそ、ありがとうございました。