三井不動産 人事担当者に聞く

デベロッパーってどんな仕事?

2021年01月07日
(聞き手:西澤沙奈 白賀エチエンヌ)

マンション、オフィス、商業施設・・・。私たちの暮らしに欠かせない建物を扱う不動産業界ですが、その仕事内容はあまり知られていません。不動産会社と建設会社ってどう違うの?新型コロナでリモートワークが進んでいくと、オフィスはどうなっていくのでしょうか?三井不動産の人事担当者に聞きました。

不動産会社って何してるの?

学生
西澤

よろしくお願いします。不動産会社ってどんな仕事をしているんですか?

僕が就職活動しているときも正直、全然イメージできなかったので、分かりにくいかもしれないですが、結構、色々な商品を扱っています。

成相さん

マンションもそうですが、皆さんに近いところだと「ららぽーと」やアウトレットなどの商業施設、ホテルやオフィスビルも手がけています。

家・オフィス・商業施設、かなり人と接点が多いものを扱っている会社です。

人事部の坪浦 諒子さん 成相 海太さん

デベロッパーと建設会社との違いを教えてください。

川上から川下まですべてやるのがデベロッパーの仕事です。例えば我々が土地を買って「こういうものを作る」というコンセプトを作って、行政に開発許可を取って。

建設会社の人たちが出てくるのは「開発」からです。我々が提示した予算と、設計会社が書いてくれた図面をもとに、実際に現場でつくってもらいます。

デベロッパー、建設会社、設計会社は三位一体です。建設が始まると、ほぼ毎日のように打ち合わせをして情報を共有しています。

建物が完成する前には「営業」も行います。例えば扱う物件がオフィスビルや商業施設だったらテナントさんに、マンションだったら入居者に入ってもらえるように。

そして物件の「運営」というところも大事になってきます。私たちには「経年優化」という言葉がありまして・・・。

「経年劣化」ではなく「経年優化」ですか?

年を取ると劣化する「経年劣化」というのが一般的なんですけれど、逆に年が経つほどよくなるという考え方です。

学生
白賀

どういうことでしょう?

たとえば霞が関ビルディングは築50年過ぎている物件ですが、過去に3回大きなリニューアルをしています。

竣工当時の霞が関ビルディング

霞が関ビルディング

1968年竣工。高さ147メートル、地上36階建ての日本初の超高層ビルで、当時36階にオープンした展望台には1日に2万人以上が訪れ観光名所にもなった。完成から50年余りがたつが、1989年、1999年、2006年と3回の大規模リニューアルを行い、空調や水回り、情報通信などのインフラを最新設備に変えている。

相当額の投資をしていますが、いまは非常用発電機も入っているため、非常時の電源供給も可能になっています。経年優化のことば通り最先端の物件で、今も我々の基幹物件にすえています。

今度行ったときに見てみたいです。

あとはソフト面もそうですよね。

物件を建てても、周りに新しい建物が出来ると純粋なハードスペックだけでは負けてしまいます。負けないためには「そのエリアの地熱をあげる」ためのエリアマネジメント(民間主導で地域の価値を上げていく取り組み)が大事になります。

東京ミッドタウン

投資をしながら色々なイベントをやったり、地元の人たちを巻き込んだりしながら、町を盛り上げていく。建物を開発した後の「運営」まで全部出来るところがデベロッパーの醍醐味だと思います。

建てるだけじゃないんですね。

変わるオフィス

新型コロナウイルスの影響で、テレワークに、オンライン会議と働き方も大きく変わりました。オフィス以外で働くという選択肢も増え、シェアオフィスを活用する人も増えているといいます。

オフィスへの新型コロナウイルスによる影響はどうですか?

不動産事業は非常に息が長い開発で、5年後10年後のものを仕込んで事業をスタートしているので、現時点で、マーケットに顕著な影響はまだ見えてきていないのが正直なところです。

でも、働く場所はなくならないので、その場を提供し続けていくのは変わらないと思っています。

オフィス不要論みたいな話を聞いたりもしますけれど、必ずしもそうではないと思っています。オフィスに来た方が効率がいい側面もあるという経営者からの声も聞こえてきています。

そうなんですね。

例えば、みんなでディスカッションして新しいものを作る時とかルーティンワークじゃない業務は、会って顔を合わせてホワイトボードに書いたりしながら進めるほうが、圧倒的に効率が良かったりします。

新しいチームのキャッチアップの時なども、会ってその場でいろいろ教えてもらったほうがスピードが速いし。効率の良さだけ考えるとオフィスに来る方がいいのかなと思います。

その一方で、コロナの感染対策やワークライフバランスのためには在宅勤務も必要ですよね。

なるほど。

ただ、日本の産業界がイノベーションを止めないためには、オフィス環境は絶対に必要だと思います。

坪浦さん

オフィスにいると、意図しない偶発的な、他部署の人とのコミュニケーションをとる機会があり、「あっ面白いこと出来そう」みたいな新しいイノベーションが起きることもありますよね。

それと、シェアオフィスのサービスもしています。外出先であと1時間仕事をする時間があったときに、近くにあるシェアオフィスで働けるようなサービスです。

「ワークスタイリング日本橋三井タワー」の個人ブース

2020年の4月時点では約50拠点だったんですが、今は約100拠点に増えています。ホテルって昼間の時間帯空いてるじゃないですか。そこも使えるようにしたりして拠点の数も増えていますね。

オフィス環境で工夫されていることはあるんですか?ここもカフェみたいな感じですね。

本社のオフィス

そうですね。決まった自分の席にいるだけだと、結局、シェアオフィスで集中してやるのと一緒になってしまうので、社員の移動を促すような仕掛けをしています

偶然出会って何か新しいことをやりましょう、というのがすごく大事で。「最近何しているの?そんなことしているんだ。じゃあこういうことできるね」という会話とかが大切です。

そうなんですね。

社内イノベーション

大企業がイノベーションを起こす手段の一つとして広がっているのが、「社内ベンチャー」。三井不動産では、2018年から社員が新規事業を提案できる制度をスタートさせている。

新しい事業って、例えばどんなことを提案しているんですか。

そもそも制度が始まったきっかけは、ホテルや商業施設、住宅だけじゃなくて、もっといろんなサービスを進化できるのではないかというところからでした。

うちは色々な場所を扱っているので、例えば建物を建てるだけじゃなく、不動産と親和性があるものなら何でも対象になります。

不動産と親和性があるものと言われても、ちょっとイメージがつかないです・・・。

例えば、ぶどうの生産も始めたんです。

シャインマスカットの苗木と

ぶどう栽培事業

新規事業提案制度から生まれた社内ベンチャー事業。季節が正反対の日本とニュージーランドでぶどうを生産し、一年を通して旬の生食用ぶどうの生産・販売を目指す。初収穫は2023年予定。

えっ!どうやって結びついたんですか。

生食用ぶどうの生産・販売も不動産事業も、どちらも土地の付加価値を上げるという点が共通しています。

社内提案制度で通った3人が、2019年12月に新会社を立ち上げて、農園を買ってという流れですね。

イノベーションによって社会の課題が解決されたりしているんですか。

別の農場で収穫されたぶどうをタイに輸出。海外販路の開拓も。

まだ形になっているとまではいえないんですけど、農業従事者が減っていたり高齢化していたり、それに辞めてしまう人も多いですよね。そういった現状を、なるべく変えていきたいという思いがあります。

この新規事業の提案制度は非常に社内の関心も高くて、総合職は約1300人なんですが、2年間で150件の応募があったんです。

結構、多いですね。

なぜかというと不動産にはまだまだ可能性があるからだと思うんです。場所を押さえているので、そこにテクノロジーなど付加価値をつける余地がいっぱいあると思います。

テクノロジーといえば、さっき乗ってきたエレベーターが気になったんです。12階のボタンを押すと、直行するエレベーターが来ました。

オフィスのエレベーター

不動産業界は、なかなかデジタルが入りにくかった場所なんですか、どんどんデジタル化が進んでいます。

例えばアバターロボットを使って、遠隔で参加した人も目の前にいるように見えるような会議の実証実験も行っています。

へー。イノベーションを起こす秘けつってなんですか?

私はふだんの仕事もイノベーションだと思っています。何か新しい価値を創出するためには、何が出来るか。ふだんから自分の知見、関心の幅を広げることがイノベーションにつながると感じますね。

不動産会社の海外進出

国内では人口減少や少子高齢化が急速に進んでいる。一方、海外では人口増加・経済成長にともないアジア新興国を中心に、市場規模は拡大を続ける見込み。不動産業界では海外進出が増えている。

最後は海外進出ですね。日本だけじゃないんですね。

そうですね。業界の中でもうちは特に海外に力を入れていると思います。きょうお話ししようと思ったのが、「ハドソンヤード」の再開発です。ニューヨークには行ったことありますか?

ハドソンヤードのイメージパース

ハドソンヤードの再開発

ニューヨーク・マンハッタンのミッドウエストで、合計11haという大規模再開発プロジェクト。オフィスビル、商業施設、マンションや、高級ホテル、文化施設や学校などが整備される予定。三井不動産としては、2018年に地上51階建てのオフィスビルが竣工。2022年には地上58階建ての2棟目のオフィスビルが竣工予定。

僕、ニューヨーク生まれなので、懐かしいです。

そうなんですね。2015年にマンハッタンで26年ぶりの新駅「34丁目駅」ができたのですが、この場所は2012年の夏のオリンピックの候補地としてニューヨークが手を上げ、メインスタジアムを作る予定だったので、広大な土地があったんです。

へー。

2018年竣工「55ハドソンヤード」

現地、アメリカの不動産会社からお話があって参画したのですが、すでにオフィスビルが一棟完成しています。2022年に完成するオフィスビルには、Facebookのアメリカ東海岸最大拠点がくることになっています。

アメリカ以外にも注目している国はありますか?

ちょっとたくさんありすぎて、あげきれないですね。北米とヨーロッパは、住宅やオフィスが比較的多いです。アジアでは、主に住宅と商業施設ですね。2021年、上海とクアラルンプールにららぽーとが新しくできます。

へー。ららぽーとが海外にも。

2021年春開業予定 ららぽーと上海金橋

日本に主軸を置くというのは変わらないのですが、東南アジアなどはどんどん生活レベルが上がり、生活スタイルが日本に近づいているので、チャンスがあると思っています。

会社としては2025年までにグループの営業利益の30%を海外でというのが目標ですね。

三井不動産さんって、財閥系の伝統的な大手企業というイメージがあったので、イノベーションや海外進出の話は意外な感じがしました。

会社の歴史をひもとくと、もともとは三井財閥の持っている建物の管理会社から始まっていたので、さらなる収益拡大のため色々なことに挑戦せざるを得なかった歴史があるのかなと思っています。

東京ディズニーランドのオープン時の支援もそうですが、昔から色々なことにチャレンジしていますし、そういう風習が今でも非常に濃いですね。

最後に就活生に向けて一言お願いします。

本当に色々なことをやっているので、色々な人がいないと事業展開していけないと思っています。

学生時代には一生懸命好きなことをやって、色々な個性を持った人たちに来て欲しいと思っています。

ありがとうございました。