ベネッセコーポレーション 人事担当者に聞く 

今だからチャレンジ

2020年12月21日
(聞き手:勝島 杏奈 高橋 薫)

一斉休校にオンライン授業、新型コロナウイルスは教育現場にも大きな影響を及ぼしました。この先、教育はどのように変化していくのでしょうか。いまの時代に必要な学びとは?教育業界最大手・ベネッセコーポレーションの人事担当者に、就活生が知っておくべきニュースを聞きました。

赤ペン先生も進化

学生
高橋

よろしくお願いします。そもそもベネッセという会社はどういう仕事をしているんですか?

事業内容は国内教育事業の部分でいうと、大きくは個人のお客様向けと、学校や自治体向けの事業があります。

北村さん

皆さんも知っている通信講座の「進研ゼミ」とか、「こどもちゃれんじ」などは個人向けの事業です。あと、高校時代に皆さんが受けていた「進研模試」は学校向けの商品ですね。

左:五反田 麗さん  右:北村 洋子さん

進研ゼミといえば、赤ペン先生・・・。

そうですね。でも今は紙の教材が届いて解くだけではなくて、タブレットでも学習できるようになっているんです。皆さんの世代はどうでした?

学生
勝島

私たちの時はまだ紙だったかな。

高校生向けの通信教材は、紙に加えてスマホ学習がメインになってきていますし、中学生向けの講座でもタブレットを使っている方が半数を超えているんですよ。

五反田さん

タブレット版の教材

だいぶ変わってきているんですね。

教育のデジタル化

新型コロナの影響で、各地でオンライン授業が一気に進んだ。2020年度から小学校ではプログラミング教育が必修になったほか、文部科学省は小中学校の児童生徒に一人一台のコンピューターを整備するGIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想を立ち上げていて、この先もデジタル化は進む見通し。

最初のニュースは、教育のデジタル化ですか。

今年のコロナで、オンライン授業を皆さん体験したと思うんですが、教育のデジタル化が進んでいますよね。デジタルって多種多様なニーズにこたえやすいんです。

取材は距離をとって行いました。

距離の概念がなくなったので、たとえば海外からインターンに参加するのも可能になったわけですよね。

今までだったら諦めていたイベントへの参加も可能になってくるし、直接行かないと触れることができなかった教材ともオンラインでつなぐことができる。

なるほど。

今までの進研ゼミでも赤ペン先生とやり取りして、双方向感はある程度ありましたが、やっぱり限界がありました。でも、現在力を入れているオンライン授業なら、すぐに質問ができます。

それにオンラインだったら一緒に授業を受けている子の質問の仕方を見ることができるし、みんなの前では手を上げにくい子もチャットで書き込んだりもできます。

また、その子の学力やペースに合わせて問題を提案できるんですね。今までの紙教材では、志望校や教科書のタイプ、定期テストの時期に合わせるなどして個別化してきました。

それがタブレット学習になると、つまずく内容や勉強時間もデータ化され、それを元に提案できるんです。

へー。

高校生向け学習アプリでは、AIがつまずきを分析するんですよ。同じ問題をつまずいても、人によって提案される問題が違ってくる。その子が問題や映像を見ている時間も分析しているんです。

高校生向け学習アプリ

いろんなデータを活かす時代に来ているんです。個別化がだいぶできるようになったのが、デジタル化の大きなメリットですね。

いろいろとメリットありますよね。でも、正直私たちの大学でもオンライン化が進んでいるんですけれど、どうしても先生や友人とコミュニケーションがとれなくて寂しい部分もあって、メリットだけじゃない気もします。

やっぱり直接会った方が、その人の空気感はつかめますよね。営業の担当者からはオンライン商談だと実際に学校に行くのと比べて、先生や生徒、学校の雰囲気を肌で感じるという情報量はやっぱり減ったと聞いています。

本質について議論する上では、オンもオフも変わらないと思いますが、先生たちからも直接会いたいという声も聞くので、必要に応じて使い分けている感じです。

あとデメリットについてあげるとすると、やっぱり情報へのアクセスの格差というか、皆さん自身もことし電波の強弱による差を感じたと思うんですね。

うーん、確かに。

例えば光ファイバーの家にいる人はいいけど、ポケットWi-Fiだと切れちゃう人もいて。通信が切れちゃうと話が聞けないところもあるので、通信環境の差は影響しますね

あとアナログというか、オフラインの時と同じことをデジタルにただ入れ替えただけだと価値を損なうこともたくさんあります

みなさんもオンラインで聞いていて、つらい講義もあったりするかもしれないですけれど(笑)

(笑)

作り手側は、オンラインでの見せ方、利用しているデバイスがスマホなのかパソコンなのか、シチュエーションとかも相当考えて開発していかないといけないと思います。

働き方改革

ベネッセではこれまでも柔軟な働き方を進めてきたが、新型コロナ感染拡大のなか、出社率は5割程度を目標に各事業部の状況に合わせて在宅勤務と出社の「ハイブリッド勤務」を推進した。社内での会議はTeamsを活用している。

次は、働き方改革ですか。

新型コロナウイルスの対応で、在宅勤務の対象範囲を拡大しています。出社のあり方とか、座席を固定しないとか、どうすると組織が柔軟になって働きやすくなるのか。

在宅ワークしやすいように社員のコミュニケーションのあり方を考えています。部署によっては、1か月に1日も出社しない月もあるんです。

すごい!

全然、問題ないです。

コミュニケーションの部分も、今まではわざわざ声を掛けて会議を設定していたのが、ちょっとしたチャットで確認しようかなと思えるので、すごく情報開示が進んでいる気がします。

コメントにいいねとかハートとか押せるんですよね。メールだと、「いいねと思いました」とは書かないですよね。

確かに(笑)

メールだとそもそも、件名とか考えないといけないじゃないですか。でも、チャットとか、オンライン会議でコメントを入れながらやるのって、議題に集中できると思うんです。

「このテーマについて私はこう思う」「あなたの発言に対してこう思う」というテーマベースで議論できるのようになったのは、大きな進化かなと個人的には思います。

在宅勤務がいいというよりは、成果を出すためにはどんな働き方がいいかという選択を会社としては支援したいと思っているので。

なるほど。

私は小さい子どもがいるんですけど、通勤にかかっていた1時間の生産性を考えると、すごい大きな差があると思います。

介護とか子どもがいる人とか、いろんなステージにある人たちにとって働き方の選択肢が広がったかなと思います。

現場の先生たちの働き方改革に関わることはあるんですか。

先生たちがやりたいことに時間を割けるようにするのが、会社としてやるべき使命だと思っています。先生が時間を割きたいのは、指導だと思うんですね。

授業を補足する役割だけでなく、提出物の管理や生徒の進路指導のサポートなどができるツールを使った学校業務の支援サービスによって、先生たちの時間を捻出することに力を入れています。

少子化

2019年に生まれた子どもの数は86万5000人余りで、前の年より5万人以上減少。10年前と比べると、20万人以上減っている。

少子化のニュースを選んだ理由を教えてください。

少子化は大きなトピックなので、一番気にしているニュースなんですが、子どもの数が減るということと、教育市場が縮むというのは実はイコールではないんですね。

どういうことですか?

教育市場自体は成長している領域なんです。先ほどお伝えしたようにデジタル化やオンライン化が進んでいますし、マーケット自体は面白くなってきていると思います。

これはいろんな考え方があると思うんですが、子どもが少ないと、1人にもっといい教育をしてあげたいとか、投資する金額が増えることもあるのかなと思います。

あとはこれまでの学びに加えての付加価値ですね。英語がしゃべれるようになりたいとか、プログラミングをやってみたいとか。

大人の学びの支援にも力を入れています。

大人の学びを支援するサービス「Udemy」

選択肢が広がっているんですね。

少子化そのものへの対策もやっています。妊娠出産メディアのサービスです。

「ワンオペ育児」って聞いたことありますか?

はい。

お母さんが1人で孤独で追い込まれているけれど、助けられないっていう問題ですよね。だから、チームで育児をしましょうという発信をしたり。

不妊で困っている人に向けて情報発信したり。少子化そのものの解決にも貢献したいと思って事業展開しています。

教育業界の競争は激しくなっているんですか?

参入障壁は減っているので、教育業界以外からも学校向けのICT教育に参入していますね。デジタルサービスの参入は教育業界に限らないと思いますけれど。

紙だった時は、紙を刷って倉庫に置いて発送するという基盤が優位だったんですが、デジタルになると、その強みは生かせないですね。

でもコンテンツは負けないと思っています。

いまはオンライン授業が進んでいますが、今後、受験生の志望校選びが変わったりするのでしょうか。

もっと自分の住んでいる地域にとらわれない進路選択が今年は出るのかなと思ったら、そんな単純にはいかないと感じました。

遠くの大学に行っても遠隔授業ならば、地元にいて地元の大学に通えばいいと考える人もいるし、オンラインだからもっと会える教授の選択が広がると考える人もいるし。

オンラインでオープンキャンパスを主催したんですが、すごい盛況だったんです。ちょっとずつ学校の変化のスピードが、子どもたちにあってくるのではないかと感じています

デジタル時代 必要な学びとは?

このデジタル化が一気に進む時代に、必要な能力は何だと思いますか?

大学入試をめぐる議論

グローバル化やAI技術など社会構造の変化により、求められる学力も変化している。従来のセンター試験に代わる「大学入試共通テスト」では、「英語の民間試験(英検やベネッセ GTEC等)」と「国語と数学の記述式問題」の2021年度からの導入は見送られたが、新しい入試のあり方について議論が続いている。一方、従来のOA入試に代わる「総合型選抜」では、新型コロナウイルスの影響で、面接などをオンライン化する大学も出ている。

変化が激しくスピード感があるので、視野を広く、とにかく分からないことがあったら調べることですね。

そのためには何をどう調べればいいかを知っていることが大事で、いろんな情報を整理して自分で解釈する力が必要ですね。

アンテナの高さとか、変化や情報量の多さに対して、自分なりに蓄積や理解できる力があると強いなと思います。

なるほど。

あとは情報感度ですね。新しい技術の仕組みに興味を持って理解できるとか、違うところから得た情報をつなげられるとか、色々な情報を言語化して説明する力はより必要になってきていると感じます

みんなが同じテレビ番組を見ていた時代とは違いますよね。「こういうことなんです」と説明する力が必要になってきているなと感じますね。

どうやったら身につけられるでしょうか。

日常的に自分が関心があることだけじゃなくて、興味が無くても耳を傾けるとか、目に触れた情報で気になることがあったら疑問を持つのがおすすめです

世の中の技術は思いもよらない進歩をとげていたりするので。今は自分がやっていない領域の話もアイデアの源泉になるんじゃないかなと思います。

知っていることが多すぎて、損することはないです。

最後に就活生に向けてのメッセージをお願いします。

コロナの影響で混乱した時期だったし大変なこともあったと思いますが、いかに大変なことを楽しく、どう楽しみながら前に進んでいけるかという時代だと思っています。

あまりネガティブに捉えすぎずに、いまだからできるチャレンジは何か。チャレンジ精神を持っていい学生生活を送ったり、社会人に向けた準備をしたりしてもらえたらいいかなと思います

ありがとうございました。