三菱商事 人事担当者に聞く

社会とともに歩む 持続的な成長とは?

2019年04月09日 (聞き手:勝島杏奈 佐々木快)

約90の国・地域に拠点を持ち、約1,400社の連結対象会社とビジネスを展開する三菱商事。就活生からの人気も高い総合商社です。今回、3つのニュースを!という取材依頼に対して「具体的なニュースは絞りづらい」との回答。なぜなのでしょうか?そこには商社の仕事を読み解くポイントがありました。

国際情勢・経済の動向や変化

取材対応してくれたのは人事部採用チームの塚田光さん。実は、子役としてNHKの番組にも出演したことがあるそうです。

学生
勝島

きょうはよろしくお願いします。「国際情勢・経済の動向や変化」が最初のニュースですね。

そうですね。三菱商事は世界各地に拠点を持っていますし、多くの会社さんと一緒に事業に取り組んでいます。「すべての産業に接している」という言い方をすることもあります。

塚田さん

私たちのビジネスは、国際情勢・経済の動向や変化に大きな影響を受けるので、戦略を立てる上で外部環境の認識が基本だと思っています。

国際情勢と言いましても、相当幅広いのですが、具体的にどのようなニュースに注目すべきですか?

かなり大きなテーマで申し訳ないですが、1つのニュースに絞れない理由があるんです。

例えば、米中貿易摩擦や英国のEU離脱問題は、連日報道されていますし、世界経済に大きなインパクトを与える可能性がありますよね。ただ、注目度の高いニュースだけが重要とは限らないんです。

どういう意味ですか?

例えば、日本から遠く離れたある都市が洪水で被害を受けた、というニュースを耳にしたとします。日本で暮らしていると、直接的な影響がなければ、「自分とは無関係だ」「自分にとっては小さなニュースだ」と感じてしまうと思うんです。

ところがです。その洪水の影響を受けた都市で、自分が、米や小麦といった食品原料の生産事業に携わっていたと仮定してみるとどうでしょうか。洪水の影響で、食品原料の生産に大きな影響が出てしまう、と想像できますよね。

行ったこともない国のニュースについては、自分とは関係ないと思ってしまいがちですが…

では、食品原料の生産が滞ってしまうと、何が起きると思います?

供給量が減ってしまうと、市場価格が上がってしまうかもしれない。食品原料の買い占めが起きて、混乱が生じてしまう可能性もある。

パンやお菓子などの生産にも影響が及べば、日本で販売される食品加工物の価格にも影響が出てくることも考えられますよね。

これはあくまで1つの事例ですけど、1つの出来事が国や地域を越えて、様々な方面に影響を与える可能性がある、そして三菱商事の場合、多くの業界や関係者と連携して事業を行っているので、多方面の影響を考える必要が出てくるということなんです。

回り巡って自分の身近な事とつながっているということですね。とはいえ、学生にとってすべてのニュースを自分事とするのは難しいと思うのですが。

そうですね。例えば、どこの国や地域でも、何の商品やサービスでも何でも構わないので、興味があるテーマを探して、それに関するニュースに興味を持つ習慣を身につけてもらえたらと思うんですよね。

学生
佐々木

なるほど、興味をもったところからはじめると。

仮に国内では扱いが小さなニュースだったとしても「自分には無関係」と考えるのではなくて、そのニュースがどんな影響を社会に与えるか、最終的には自分たちの生活にどのような影響があるかを自分なりに考えてみてほしいなと思います。

ここで1つの例えを出してみましょう。
そうですね…、皆さんのスーツのタグについている原産国とか原料が何なのかとか気にしたことはありますか?

タグですか…気にしたことがなかったです。

スーツが1着できるには、どこでどんな仕事をしている人たちがいるのかとか、そこをさかのぼってみると、思いもよらない色々な繋がりがあるかもしれないですよね。そういう風に関心をもっていくといいんじゃないかな。

関心をつなげていくということですね!

興味があることを深堀りすることで、知識も得られると思いますよ。

SDGsとESG

SDGsとは、2015年の国連サミットで採択された2030年までの国際目標。「誰ひとり取り残さない、持続可能で多様性と包摂性のある社会」の実現のために、貧困問題やエネルギー問題の解決など、世界が目指すべき17のゴールが設定されている。

 

ESGは、「環境」(Environment)「社会」(Social)「企業統治」(Governance)の頭文字をとったもので、近年、企業の持続的成長に影響を及ぼすと考えられるようになってきた3つの指標。

この2つのテーマも、よく、このコーナーでは出てくるんです。やはり重要なテーマなのですね。

ESG・SDGsの観点は、三菱商事で働くうえで非常に大事なことなんですよ。

私たちは、昨年11月にこの先の3年間の経営戦略を発表しました。その中で「経済価値」「社会価値」「環境価値」の3つの価値を同時に実現していくんだと言っているんですね。

3つの価値とSDGsは、どのように結びついているのですか?

SDGsの「持続可能な価値を追求する」という世界観は、僕らが考えている世界観とマッチしているんですよ。

もちろんビジネスですから利益を出すのは大事です。でも、それだけではなくて、社会や環境にとっての価値も考えなくては「持続的な成長」は期待できない時代だと思っているんですよ。

そして、根本には、三菱商事の企業理念に「三綱領」というのがあるんですが・・・。

どのようなものですか?

「所期奉公」「処事光明」「立業貿易」の3つの企業理念のことです。

自分たちのビジネスは世のため人のためにあるんだということを大事にするんだというのが、「所期奉公」。「処事光明」はフェアにやりましょう、そして「立業貿易」はそれをグローバルなビジネスにしていきましょうと。

そういう企業理念と、ESG、SDGsの世界観は、マッチするので、これまで大事にやってきたことを、これからより意識してやっていくということなんです。

素朴な質問なんですけど、この三綱領は皆さんは言えるんですか?

絶対、言えると思います。

三菱商事を希望する就活生は、言えたほうがいいですよね?

いえ、そんなことないです(笑)。それはみなさんが入社していただいてからで大丈夫です。毎朝、唱和することもないですし、仕事中に、これは「三綱領だね」とかも言わないですよ。

でも、仕事の中で、「そういう事か」「こういうふうに考えていくんだな」という事は、三綱領の価値観と自然とつながっていることがあって、だから、社員は皆、言えるものだと思いますし、知っていると思います。

会社としての方向性はわかりました。事業の中で、ESG、SDGsについて、どのような取り組みをされているのですか。

1つ事例をあげると、クリーンエネルギーの供給を通じて、低炭素社会に移行しようという取り組みがあります。

北海沖やイギリス沿岸部での洋上風力発電(陸上でに比べ大きな風力が得られる海上に風車を設置して発電する。近年ヨーロッパで普及が進む)が有望視されています。

発電した電力は、海底ケーブルで陸地まで送る必要があるのですが、イギリスとドイツでの海底送電事業に、日本企業としていち早く参入しました。

自然エネルギーを活用した発電事業は、環境にも社会にも意義があるもので持続可能なビジネスモデルの一例だと考えています。

デジタル技術(AI/IoT)の進化

最後のトピックですが、取り上げた理由を教えてください。

デジタル技術の進化は世界経済全体を引っ張っていて、技術革新によって既存のビジネスモデルが大きく変わることも起きています。

デジタル技術を活用した具体的な事例はありますか?

ドローンや人工衛星で上空からデータを取得しています。というのも、センサーが上空から取得するデータは、あらゆる産業分野で事業の効率化や低コスト化、正確性が上がることが期待されているんですよ。

これは1つの事例ですけど、デジタル技術を活用し、新たなビジネスモデルを形成すること、既存のビジネスと融合させることに取り組んでいきたいと考えています。

そうした事業に関わるには、プログラミングやデジタルに関する知識が就活生にとって必要でしょうか?

当社の選考を受けるにあたって、必ず必要だという知識やスキルは設けていません。知識があることはいいことですが、なくても入社してから身につけることができますからね。

三菱商事グループ全体としては、事業を構想する力や実行力を大事にしているんですね。どうやって事業を発展させるか、事業の成長の芽を見つけるかという事の1つのきっかけとして、デジタル分野があるかもしれませんし、みなさんの感度が大事になるかもしれない。ぜひアンテナを張っていってほしいなと。

構想力が高い人間になるために、大学生からできることはありますか。

大切なことは自分の興味のある分野に対して、熱意を持っているかどうか、そのことについて自分なりに情報収集をしているかだと思います。

ゼミやサークル活動など何でもいいんですが、何かをするためにプランを練るとか、何かを変えてみるということは構想に近いと思うんです。みなさんが興味あることに全力で取り組んで、成功や失敗をすることが、社会に出たときに生きてくると思います。

なるほど。

あとは、どれくらい物事に対して情熱を持てるかは大事だと思っています。エネルギーレベルというか、バイタリティとか情熱とか、それが高いって事はすごく大事だと思うんですよね。

皆さんが入社したらさまざまな産業に接し、いろいろな国とビジネスをしますから、必ず壁にぶち当たると思うんですよね。でも、どんな時でも突破するには、物事への情熱が求められてきます。さらに周りと信頼関係を築く事も重要な要素だと思ってますので、そういう方に目指していただきたいなと思います。