2020年08月17日
(聞き手:伊藤七海 佐々木快 白賀エチエンヌ)
どんな会社でも通用するスキルって何ですか?25歳の若さでヘッドハンターとして社会で活躍する人材をマッチングしている中田莉沙さんに、ヘッドハンターになった理由、そして大切にしていること、そして、「どんな会社でも通用する人材ってどんな人?」、気になることを聞いてきました。
学生
白賀
中田さんは、大学生の時には、どういう就活をしていたんですか。
挑戦する起業家たちを投資で支えたいと思っていたんです。金融機関を受けて、野村證券に入りました。
中田さん
学生
佐々木
印象に残っている仕事はありますか?
社会人になると「社会に貢献する」っていうか、「人のために働く」という責任感がより出てきましたね。
証券会社って人のお金を預かるんですよ。私が1年目の時、ある法人のお客様から多額の資金を入金いただいたことがあって。
おおー。
やっぱりお金って大事じゃないですか。知人や家族にもいくら持っているか教えないくらい。信頼を得たからこそ、預からせてもらえたというか。
責任の重い仕事を一人で任された、“中田莉沙”として仕事を頂けたという経験に責任や使命感を感じて、社会人って面白いなと思いました。
そういったお仕事もされていた中で、なぜ転職しようと思ったんですか?
大学時代に小さなベンチャー企業でインターンをしていたので、ベンチャーと大企業で働くことの比較ができたんです。
やっぱり私は、小さなベンチャー企業で働く方が合ってるなって思いました。
どんな時に感じましたか?
当時はiPadなどは使えたものの、基本は全て紙文化で、口座開設など全ての契約は紙で記入し、はんこを押す必要がありました。
もしミスがあれば、再度記入して郵送していただいたり、取りに行ったりしていたんです。
面倒くさいですよね・・・お客さんも。
フィンテック企業が複数成長しているタイミングで、口座開設なども非常にスムーズになっている状況でしたので、ユーザーエクスペリエンスの悪さを痛感したのを覚えています。
世の中にどれだけフリーで使える新しいサービスがあっても、大企業だとセキュリティが問題だってなりがちなところがありますよね。
そもそも、上の人が使えないから導入できないということもあったりします。
なるほど。
でも、テクノロジーって絶対に後退しないんです。
今の時代、スマートフォンのアプリでも、見た目や動きがちょっとでも使いづらいと、すぐに使われなくなりますよね。
学生
伊藤
たしかに。
それくらいみんな使いやすいものにどんどん触れているのに、もう一度、再送してくださいとか言われるのは嫌じゃないですか。
より使いやすいものを求める社会の変化に合わせていく必要があるのに、どうしても規模が大きい会社だと動かすのが難しくて。
20~30年間かけて役員になって変えていくよりも、今のこの5年で何ができるかということにチャレンジしたいと思っていたので、私には合わないと思ってやめました。
固い決意がうかがえますね。
当時は新入社員の私が「こうしたらどうか」と次々提案していたので、社内ではキューバの革命家の「チェ・ゲバラ」と呼ばれていました(笑)
転職活動はどのように進めたんですか?
社員が1、2人の会社に入ろうと思っていて、「その起業家と一緒に命をかけて戦えるか」。
もしくは「本当に自分が人生をかけたいと思えるような事業か」という2つを軸で考えていました。
求人広告が出ているわけじゃないので、本当に色々調べて気になる企業の社長に「関心があるので、話を聞かせてください」とTwitterやFacebookでDMを送ってました。
そうなんですね。
でも、やっぱりなかなか思うような会社に出会えなくて。
大学時代にインターンをしていた企業の社長に相談したら、今の会社を紹介してもらって。だから私は、もともとは転職希望者として入社したんです。
それが気づいたら・・(笑)
そうなんです。もともと人材業界にはあまり興味がなかったんですが、話を聞いてみたら「企業の成長を支援するためには、いま『人』が必要だからこの事業をやっている」と言われたんです。
シリコンバレーのように当たり前にスタートアップに人が集まるような時代になったら、別の事業をやりますと。
広い視野でいろんな企業を見られるというわけですね。
もともとはスタートアップが成長するために、もっとお金を回したいと思って証券会社に入ったわけですし。
支援の方法が「お金」じゃなくて「人」に変わっただけで、自分の目指している方向性は変わらないと思い、入社を決めました。
インターンが中田さんの中でキーポイントになっていると思うのですが、そもそもインターンはなぜ始めたんですか?
本当にくだらない話しかないんですけど(笑)
友達に「から揚げとハイボールが無料で出るイベントがあるから来なよ!」って言われて行ってみたら、スタートアップに興味がある学生向けのイベントだったんです。
そこで「この人と一緒に働きたい!」と思う人に会って、後日会社を訪問させてもらったら、インターンに採用されました(笑)
から揚げとハイボールが運命を変えたんですね・・!
はい(笑)。イベントには、みんなが知ってるような企業も来ていたんですが、インターン先は来ていた5社の中で一番小さな会社、コネヒトでした。
「ママリ」というお母さん向けのサービスを運営していたんですけど、当時、お母さんが毎日見るページをインターンの私に任せてくれたんです。
社員が少ないからというのもあったと思いますが、いろいろチャレンジさせてくれる環境で、「手触り感」がすごくありました。
手触り感・・?
サービスを通してコメントやメッセージを送っていただけることが多くて。
自分たちが作ったもので、人生のちょっとかもしれないけれど、嬉しいことや思い出に残るようなことができるってすごいなと思ったんです。
中田さんが大事にしているものって何ですか?
私は「時間」が1番大事だと思ってます。正直、お金って人から奪えるし、生み出すこともできるんです。
でも、「時間」は絶対に奪えないんですよ。1日24時間というのは等しく決まっているから、それをどう使うかで、その後も変わっていくじゃないですか。
人ってお金の運用は考えるんですけれど、実は「時間」の運用ってあんまり考えないんですよね。
たしかに・・・そうですね。
自分が「時間」の価値をすごく大事にしているからこそ、社内のミーティングの時でも何を伝えるかということを重要視しますし。
仕事で付き合う人にもこの1時間で何が提供できるのかということを結構、考えますね。
どんな会社に行っても通用する人になるために、必要なスキルってありますか?
一番、難しい質問ですね。やっぱり明確なスキルというのはないんですけど、「柔軟性」は絶対大事だと思います。
時代に適応していく上での「柔軟性」ですか?
そうですね。あとスタートアップは、「素直な人が欲しいです」ってよく言うんです。
自分の信念を持つことはすごく大事だと思いますが、相手の意見を受け入れられる人は本当に全然違うんですよ。
とりあえず1回やってみることができる人は、チャレンジする回数が増えるから、学べるものや得るものが大きいと思うんです。
柔軟に自分の色を変えられる人はどこでも通用すると思います。
どうやって身につければいいのでしょうか。
結構、難しいんですよね。例えば、携帯も昔ガラケーだったときは、世界で日本がトップだったんですよ。でもスマホとなった今はiPhoneに取って代わられました。
変化が起きたときに、じゃあ次はどうすると切り替えることができる柔軟性が必要だと思います。
個人に置き換えると、全然失敗していいんですよ。「これはダメなんだ」とわかることで、一つ消せる項目が増える。そうしたら次に成功する確率が高くなるじゃないですか。
なるほど。
そのために、自分の興味・関心があるものは触ってみる、やってみるのが大事だと思いますね。から揚げ目当てで、フッ軽で私がインターンに参加したように(笑)
最後に、中田さんにとって「仕事」とはなんですか?
「道をつくること」ですね。
例えば、女性の働き方を考えてみても、昔は金融機関で女性が総合職で働くというのは少なかったんですよ。
それが働けるようになったのは、私たちの先輩の女性たちがモチベーションを持って行動してきてくれたからで、誰かが何かをやったからこそ、私たちが今やっている仕事があると思います。
なるほど。
だから仕事って、このあと後ろを歩いてく誰かに道を作ってあげることなんじゃないかなって、すごく自分は思っています。
社会に出るとチャレンジャーに対して非難する人たちも多いと思うので、そこを支援する、応援することも大事だと思います。