2020年01月08日
(聞き手:佐々木快 田嶋あいか)
サッカー、野球、バスケットボール、ラグビー。華々しいスポーツの世界で働く事に一度は憧れを持った就活生もいるのでは。今回は、Jリーグ川崎フロンターレで裏方として選手を支える石田亮太さんに取材しました。
本日は宜しくお願い致します。まず石田さんの業務を教えて下さい。
自分は川崎フロンターレのサッカー事業部という部署にいて試合運営担当という立場です。主に年間20数試合行われるホームゲームの全体統括を担当しています。
お話を聞いた石田さんの業務は「ミライのしごとーく」
1/10(金)「プロスポーツチームの仕事」(再放送1/24)、
1/17(金)「スポーツ業界の未来」(再放送1/31)、
Eテレ 金曜午前(木曜深夜)1:20~1:30でも詳しくお伝えします。
統括といってもいろんな仕事があると思うのですが、具体的には何をするんですか?
前提として私たちがホームゲームで使用しているスタジアム(等々力陸上競技場)はフロンターレの持ち物ではなくて、川崎市に借りて試合をしています。
行政施設を借りる中で、行うイベントが問題なくできるのか、川崎市とのパイプ役をやっています。
スタジアムの特徴を活かして、いろんなイベントを中でも外でもやっているので、行政の担当者からしたら、トラブルが起きないか心配だと思うんです。
あー確かに!
好き放題やる訳にはいないので「準備から対策してやるので大丈夫です」と説明して、実現できるように調整してます。
ふだんは、どんなニュースにアンテナを張ってますか?
1番はサッカー、スポーツ関係につながればと思っています。
たとえばどんなものですか?
川崎市出身の陶芸家がテレビに出ていたんですよ。川崎市と関係がある人とはコラボレーションできるかもしれないので情報として社内に共有しました。
実際、そういうところからつながることもあったりするんですよね。
そうですね。イベント担当が何か出来ると思ったら、アクション起こすとかですね。
そういうアンテナの張り方もあるんですね。
会社も人数も多いわけじゃないんで、社長とも朝会った時に、フランクに会話できるのがすごい強みですね。
スケジュールで、サポーターの発信動向を気に掛けるというのは、どういうことでしょうか?
今はSNSって発信力がすごいじゃないですか。良い面ばかりだけでなく、時には対戦相手を挑発するような発信がお客さんから出てしまったり。
そういうやりとりが試合前にあると試合でもトラブルのリスクが増えるので、チェックして共有します。
企画から運営まですべて携わっているんですね。
ほんと、“なんでも屋さん”ですね。
専門的なところでいうと、セキュリティー部門に関しては、警備員の手配からボランティアさんやイベントのアルバイトさんを合わせると800人くらい運営に関わっていて、事前に社内資料を作って共有してます。
それでいってもA4版で10ページくらいになっちゃうんですけど。
A4版10ページ…!
当日のスケジュールから、今日のイベントとか、こんなもの売ってますよっていう資料を毎試合作って臨むという形ですね。
膨大な情報を処理する上で、気をつけていることはありますか?
めちゃくちゃチェックしますね。自分が作っている資料が基となって、社内、社外、各所に共有されてホームゲームに臨むので、やっぱりそこで間違いがあると、すごい混乱を招いてしまうので。
僕の仕事としては事前準備がとても大事なんですよ。どれだけ当日までにやりきれるかっていう準備ですね。
そもそもこの仕事に就こうと思ったきっかけはなんですか?
きっかけは、高校生の時です。僕は小学校の頃からサッカーをやっていて将来働くならサッカーに関わる仕事をしたいなと思っていました。
自分がそういう道に進みたいって言ったら、高校の先生が学生サッカー連盟の存在を教えてくれて、「大学行くんだったらやってみたら」と言ってくれて。
関西学生サッカー連盟に所属して、学生幹事という立場で連盟で働かせてもらっていました。
今のような全体をまとめるお仕事ですか?
関西の大学サッカーの中立的な立場で、日程や会場の調整をしたり、ドクターを手配したり。
当日は、ライン引きやゴールの設置から会場設営、ミーティングも学生で全部やっていました。
サッカーの試合運営をするために必要な経験をそこで身につけたかなと。
まさに今の仕事にいかされていますね。
ちょっと調べたんですけど一般企業のように定期的な人材募集を行うクラブが少ないっていうのは本当ですか?
そうですね。基本的に会社としても新入社員を定期的に採って指導するような研修制度もなくて、基本即戦力として入社してくるので。
即戦力!
自分は運よく新卒で入れましたけど、一般企業だったら、現場に出るまでは3か月とか研修積むと思うんです。
でも、入社する前の大学4年の秋からアルバイト契約でもう「お前のポジションはここだ」という感じで任せてもらって。
4月からは他の社員の方と同じように働いてという?
そうですね。1つのポストが割り振られていました。
石田さんは、学生連盟での経験もあって、即戦力で働くことができたと思いますが、Jリーグのチームで働くルートってどういうものがあるんですか?
ルートでいうとインターンですかね。
インターンの募集はしているんですか?
ごめんなさい。インターン募集も公にはしてないです。
繋がりですか…?
繋がりですね。スタッフの母校とか。紹介とか。
インターンの受け入れ自体は何人くらいいるんですか?
年によってばらつきがあるんですけど、だいたい夏休み期間の時に多かったら、2、3人。
えええ!多くて2、3人!?
少ない。狭き門…!受け皿やポストが少ないというか・・・。
そこは課題ですね…。やっぱり受け皿が少ない理由の一つは、まだ、日本のスポーツビジネスで、あんまりお金を儲けられる仕組みが整ってなくて。
そうなんですね。
この前、会社の研修でアメリカのラスベガスにスポーツビジネスの勉強に行かせてもらったんですよ。
ラスベガス=カジノって印象ですけど、街がカジノからスポーツやショービジネスにどんどん移行していってました。
サッカーや野球、アメフトやアイスホッケーとか全部見させてもらった中で感じたことがあります。
何ですか?
掃除のおばちゃんや洗濯するおばちゃんとかマスコットも、プロ契約じゃないけど、それだけで食べていける仕組みになっていて、大きな衝撃を受けました。
それだけじゃなくて、現場の人も働いている誇りみたいなものが前面に出ている感じで。環境がやっぱり全然違うんだなと。
日本には何が足りないんですか?
全部です。高校、大学、アマチュアも全部みたんですけど、やっぱり一流の施設が整ってるというか。観客とかサポーターを受け入れる体制ができているんですよね。
どういう事ですか?
私たちのホームスタジアムは、26,827人というキャパシティーで、年間20何試合しかできないんですよね。
「もっと見て貰いたい」とか「フロンターレの事知ってもらいたい」と思っても限界があるんですよ。
だから試合以外でフロンターレを知ってもらう活動に力を入れないといけないかなって。
そういう活動の規模が大きくなってくれば、必然的に多くの働き手を受け入れられると思いますね。
好きなスポーツを仕事にすると、関わり方とか悩ましいところもあると思うんですが、どうですか?
僕も最初は葛藤がありましたね。サッカーが好きだから、それを仕事にした時に、嫌いになっちゃうわけじゃないですけど。
スポーツ業界を目指すのか、一般企業で、週末にプライベートでサッカー観戦するのが良いのかなって思ったりもしたんですけど。
最終的に決断できたのって、どういう理由ですか?
後悔するなって思って。親にも相談しましたね。僕は長男だし、実家が家業してるのもあって、戻った方がいいのかなとも思ったんですけど。
でも親に「あなた絶対後悔するでしょ」って言われて、それで決心しましたね。
実際一般企業じゃなくて、川崎フロンターレに就職できてよかったって思いますか。
今はやりがいしかないですね。勝つとファン・サポーターと喜びも共有できるし。
負けたときの苦しさも共感できるのが、自分にとってすごいやりがいでずっとこの仕事をしたいと思っています。
スポーツ業界で働くってどんなことですか?
「日本の未来」ですかね。アメリカの研修で感じたことなんですけど、観戦会場が楽しい空間というかエンターテインメントに全部絡んでて。
それを日本に置き換えると、まだまだ可能性はたくさんあるなって思いますね。
スポーツビジネスが膨らむと、日本の社会はどういう風になるんですか?
絶対明るくなりますよね。
スポーツってほんと幅が広いというか、何にでも結び付けられるので、未来そのものです。可能性しかない!ですよ。
ありがとうございました。