教えて先輩!シナモンCEO 平野未来さん【後編】

仕事を通して 未来をつくる

2020年05月26日
(聞き手:高橋薫 田嶋あいか)

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AIスタートアップとして注目を集める「シナモン」。CEOを務め2児の母でもある平野未来さんは、子どものころからインターネットにのめり込んだ結果、「勘違いして」起業に至ったといいます。(※新型コロナウイルスの感染拡大前に取材しました)

“ネット中毒”な少女時代

学生
高橋

平野さんはどんな子ども時代を過ごされましたか。

けっこう“浮いてる”存在ではあったんですよね。

平野さん

そんな中、インターネットに出合って。まだインターネットってほんとごく一部の人しか使ってなかったんですよね。

学生
田嶋

そうなんですね。

シナモン 代表取締役社長CEO 平野未来さん(36)

大学院在学中に最初の起業をして、その後売却。現在は2社目の起業。これまで人が行ってきた仕事をAIで効率化し、人が創造性あふれる仕事に集中できる世界を目指す。3歳と1歳の子どもを持つ2児の母。

それが、たまたま親がパソコン買ってくれて、学校にあるコンピューター室でもインターネットを使うようになって。

そこで自分の居場所を見つけられたっていうか、ネットを通じてまったく学校とは関係ない人たちと出会うようになったんです。

えー、そうなんですね。

それで「救われた」っていう感覚があって、そこからネットにのめり込んでいったんです。

で、高校3年間は完全なネット中毒者になってました(笑)

どれくらい使ってたんですか。

放課後から夜寝るまでずっと、みたいな感じですかね。

匿名のチャットで「こんにちは。高校生の未来です」みたいな、いろんな人とくだらない話をしていた感じです。

デジカメで写真を撮ってはパソコンで編集してとか、そういうこともやってました。

編集したものはどうしてたんですか。

メルマガを個人的に、毎日やってました。

めちゃくちゃはずかしいんですけど、「平野未来通信」っていうのをやっていて、メールアドレスを持ってる友達100人くらいに、ひたすら送るっていう(笑)

ネットがすごいポジティブな存在だったんですね。

はい、とても。

まだそのデータが残ってたらどうしようって思いますけど(笑)

インタビューの前編はこちらからご覧ください。

シナモンCEO 平野未来さん「“アンハッピー”な働き方をなくしたい」 

起業家として“勘違い”し続ける

大学では、コンピューターのことを本格的に学んだんですか。

大学に入って初めてプログラミングを知ることになったんですけれど。

これまで自分が使っていたサービスを作ることもできるんだって視点になって、「これはすごい」って。

なので、大学生の時は完全に“プログラミング中毒“っていうか、一日中プログラミングしているような女子大生でした

大学院時代の平野さん(写真中央)

どんなプログラムをつくるようになったんですか。

自分でもウェブサービスを作るようになりました。

当時、mixiっていうサービスが急激に伸びていて、それを大学生がみんな使ってるような感じだったんですけど。

ただ、すごい長い日記を書くみたいな使い方だったんですね。

そういう感じだったんですね。

でも、「何か違うな」って。

これからモバイルの時代になるって思ったので、モバイルだとそんな何ページも書けないじゃないですか。

なので、一言だけ書くようなSNSがあったらおもしろいんじゃないかなと思って、そういうものを作りました。

今で言うとTwitterみたいな感じですね。

起業しようと思ったきっかけは何ですか?

学生時代に「未踏ソフトウェア創造事業」っていう、世界を変えるようなアイデアを持ってる人に助成金を出してサポートするという政府系の事業があったんですね。

それに応募して合計で2500万円もらったんですよ。

えー!

今の私にとってもすごく大きな額なんですけれども、学生にとっての2500万円とか「やばい!」みたいな感じじゃないですか。

せっかくなら自分がチャレンジできる事に使いたいなと思って、それで起業をしようと思いましたね。

その時期に研究してた内容がグーグルの創業者たちと同じ分野だったっていうのもあって。

「科学が世界を一瞬にして変える」みたいなところにすごく憧れたんです。

それで、「自分もできるんじゃないか」って、“勘違い”を起こして起業した感じです。

勘違いだったんですか。

論理的に考えたらそんなふうに思えないじゃないですか。

でも、まず自分が「できる」と思わないと、最初の一歩を踏み出さない

なのでいい勘違いだったなと思いますし、いまだに勘違い中です(笑)

CEOであり2児の母

CEOで2児の母でもある平野さんの、1日のスケジュールを聞きました。

スケジュールは、ちゃんと一日8時間労働なんですね。

必然的にっていう感じですね。

どうしても朝も夜も子ども対応の時間ができるし、あと私寝ないとだめなんで(笑)

2人お子さんがいて、それでCEOってどうやって両立しているんですか?

2つポイントがあって、1つは「すばらしい旦那さんを見つける」っていうところですね。

うちでいうと家事はむしろ旦那さんの方が多い感じなんですけど。

お互い一緒にやっていきましょうっていうか、どっちかが大変な時は、大変じゃない方がやりますとかでもいいと思うし。

いいですね。

もう1つは、「自分じゃなくてもできることは、ほかの人に助けていただく」っていうところですね。

自分が苦手なことは仕事でも家庭でも人にお願いするので、働く時間を8時間にできています。

一日の中で大切にされていることはありますか?

ほぼ毎日子どもたちとご飯を食べてますね。その後一緒にお風呂に入って、絵本読んであげて。

子どもたちに一番愛を持って接することができるのは私だと思うので、子どもとコミュニケーションをとることには自分の時間を使うようにしています。

未来をつくる

平野さんにとって仕事とは何か、書いてもらいました。

「未来をつくること」。人類ってどんどん進化していってるわけですよね。

「石器を発明しました」とか「火を見つけました」というところから、「馬車を、車を、スマートフォンを作りました」と。

仕事っていうのは人類の進化をプッシュするものだって思うんです。

はい。

私はその進化を「最大化」させたいって思っています。

私みたいに「最大化させたい」っていうふうには思ってなくても、進化させるっていうところに貢献しているのは、多くの方がやっている。

仕事ってそういうものなのかなって思ってます。

未来をつくりたいと思って仕事をされているんですね。

そうですね。それは学生時代から変わらないです。

平野さんの考える「未来」って、人間がやらなくてもいいことはAIに任せて、人間ならではの力を発揮させるということですか。

人間が持っているその可能性をもっと引き出そう、人類を進化させていこうみたいな、そういうイメージだと思ってもらえればよくて。

今は働いてる人たちが、みんなちょっとアンハッピーで、それが当たり前になってしまっている。

私はそれがすごく悲しいことだと思うし、大きな人類の課題だと思うのでそれを解決していきたいです。

これからの働き方

これから日本ってどういった働き方をしていけばいいと思いますか?

これまでの働き方って、20世紀型の工場型っていうか。

ひたすら流れ作業を分担して、自分の個を消してやっていたみたいなところがあったと思うんです。

ちょっと、つらいですね。

これまでやっていた大量に反復しないといけない作業を全てAIがやってくれるってなれば、そもそも人類が働かなきゃいけない時間が数分の一になるわけですよ。

一人一人の働く時間は短くなるし、かつ自分が真にやりたいこと、かつ得意なことに集中する。

やりたいことができて、仕事が1日数時間って最高ですね。

理想!

そもそも何で今1日8時間働かなきゃいけないのか、から疑問を持たないといけないし。

むしろ8時間どころかほとんどの会社が10何時間働くっていうのがわりと当たり前になってると思うので。

そういう働き方は私たちの世代でなくさないといけない

何年後くらいに、そうありたいってありますか?

本当に大きな課題だと思うので、2~3年とかで絶対できるとは思っていなくって、10年後でもけっこう早い。

でも、私がこの事業をやってる理由は子どもたち、次世代のためです。

自分の子どもが働き始める頃がだいたい20年後なんですけれども、そこをひとつのデッドラインにしたいなって思います。

新しい働き方を自らつくる姿に刺激を受けました。ありがとうございました!

こちらもご覧ください。
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