AI企業 石角友愛さん

シリコンバレー流 情報活用術

2019年05月17日 (聞き手:伊藤七海)

アメリカのグーグル本社での勤務を経て、今は日本企業などにAIを使ったビジネスを提案する石角友愛さん。AIは毎日耳にする言葉だけど、本当のところよくわからない。。その仕事内容とIT最先端のシリコンバレーで磨かれた情報活用術とは。

シリコンバレーを拠点にしながら毎月のように日本とアメリカを往復する生活を送る石角さん

早速ですが、どのような仕事をしていらっしゃるか教えてください。

アメリカのシリコンバレーを拠点に最先端のAI技術とAI戦略を日本企業に導入する会社を経営しています。

具体的なイメージが浮かばないのですが、最近ではどんなお仕事がありましたか。

中小の物流業者が顧客で、そこの配車作業のAI化をやりました。

配車というのは、トラックが例えば50台あって、明日の配達が100件だとしたら、どのトラックがどの順番で物を運べば一番効率いいかを考える作業です。

それを最適化してトラックの運転手さんの負担も緩和して、かつコストも抑えるアルゴリズムをつくって導入しました。

作業時間は6分の1ぐらいに短縮になって、社員の方の働き方改革にもつながるなど、価値のあるプロジェクトでしたね。

そんなことができるんですね。

AIは仕事を奪う?

AIが普及していくと、仕事が奪われちゃうって、よく言われるじゃないですか。実際はどうなんでしょうか。

長期的に見たら、淘汰される仕事はあると思います。でも、それは昔からあったことで、例えば馬車の運転手さんっていう仕事はもうなくなったじゃないですか。

そう言われてみればそうですね。

時代とテクノロジーの進化で淘汰される仕事は昔からあったわけで、そういう流れで無くなる仕事はあっていいと思うんですよ。

それがイノベーションだし新陳代謝ですから。そして常に新しい職業も生まれるから、これまでの仕事がなくなることは必ずしも悪なのか、という話だと思うんです。

なくなる仕事があれば、新しく生まれる仕事もあると。

そうです。逆に興味があることを本気でやることでAIに絶対代替できないスキルを身につけられると思いますね。想像力とか推進力とか企画力とか。それってもう本当に何でもいいんです。

AI事業のきっかけはグーグル

AIって、どこでも耳にするようになってきましたが、AIに着目したきっかけは何だったのですか?

アメリカのカリフォルニア州にあるグーグル本社で働いていた時に、たまたま配属されたプロジェクトがAIを使うものだったんですよ。AIの機械学習ですね。

機械学習

人工知能の要素の一つで、あらかじめ人間がプログラムして指示しなくてもコンピューターが自ら学習すること。いずれは人類の知能を超えるという予測もある。

その時は機械学習なんて何も知らなかったんですけど、どうせやるからには全力でやりたいし、求められてること以上のことをやりたいっていう性格なのでがんばりましたね。

本を買ったり、オンラインで勉強したり。あと勉強会開いたりとかして理解を深めるなかで、AIに出会ったっていうのが最初です。

じゃあ、きっかけはたまたま?

はい、たまたまです。

グーグルを就職先に選んだ理由は?

大学院のインターンシップなどでITの仕事が楽しいなって、この世界に入りたいと思ったのが最初ですね。それでまずはシリコンバレーに引っ越しして、とりあえずは人脈作りですね。

アメリカでは人脈が無いと自分が求めてるキャリアは手に入らないっていうのがあって。

すごいですね。

“グーグルで働きたい”というのが明確にあったんですよ。私は数打ちゃ当たるっていうのはあまりやらなくて、ここって決めてそこに全力投球するタイプで(笑)

でも、そんなに簡単にいかないですよね?

そうですね。たくさん落とされたし、人格否定みたいのもいっぱいされました。でも最終的にはグーグルに行けたので、すごくよかったです。

“この会社!”って心を決める要素みたいなものってありますか?

私が若い方に言うのは、その業界のナンバーワンのプレーヤー、つまり伸びてる会社を狙うってことです。

私はIT業界と決めてたので、ITで当時、2010年ごろですけど、一番クールな会社は間違いなくグーグル、フェイスブックだったんですね。

なるほど。

自分がやりたい職種か業界で決め、その分野で一番伸びている会社で働くのがいいかなって思います。

そうすると、おのずと世界から頭脳が集まるし、自分よりもすごい人たちと仕事をして刺激も受けるし学ぶことは大きいですよね。

それなのに、グーグルに入って、わずか2年で辞められたんですよね。どうしてですか?

以前から自分で会社をやりたいって思いがあったからです。珍しくないですね、グーグルでは。1年、2年で辞める人いっぱいいますから。

中小企業にAIを

石角さんは特に中小企業を対象にAIを導入していますね。それはどうしてですか。

日本の中小企業や地方の会社は情報格差が大きいんです。そうした現状に対して自分は何ができるのかと、すごく考えて今の会社を起業した経緯があります。

現場のニーズに合わせた形で、本当にかゆいところに手が届くAIをつくらないと日本に浸透しないと思っているからです。

日本の企業を顧客にしているのに、シリコンバレーに拠点を置いているのは、アメリカの方がAI技術が進んでいるからですか?

そう単純には言えませんが、GAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップルの総称)もほとんどがアメリカの西海岸です。そういう会社があるところには優秀な技術者や起業家が集まるというのはありますね。

産業が集まるところには優秀な人材が集まると。

はい。そういう所に足場をもつ利点は大きいです。AIはアメリカと中国が競争している構図ですが、その中で、日本が独自の強みを生かしてどうやれるかという視点でやっていますね。

”WLB”ではなく”WLI”

石角さんは2人の子どもを育てる母親でもあります。子育てと仕事の両立は大変じゃないですか?

8歳の娘と3歳の息子がいます。大事なのはよく言われるワーク・ライフ・バランス(WLB)じゃなくてワーク・ライフ・インテグレーション(WLI)だと思っています。

ワーク・ライフ・バランス(WLB):

仕事と私生活のバランスがうまくとれていること。仕事をしながら家庭や子育てなどを両立させる考え方。

 

ワーク・ライフ・インテグレーション(WLI):

職場を早めに退社して子どもを幼稚園から迎えて、家で仕事のメールを打ったり、職場でヨガ教室を設けるなど、仕事と私生活を分けて考えるのではなく、2つを統合(インテグレーション)させて、効率的にどちらも進めるという考え方。

ワークとライフのバランスを両立させようとすると多分難しいんですね。両立は、どっちかに偏っちゃいけないから。

もし私が7:3で子どもをなおざりにして、仕事ばかりしていたら罪悪感が生まれてしまう。両立って5対5じゃなきゃいけないという前提があるから。

両立というと5対5と思っちゃいますよね。

でも私はその前提自体がおかしいと思っています。ワークとライフはそもそも敵対するものじゃなくて全部を統合して自分の望む生き方をすることの方が大事だと。そういう考え方になってからすごく肩の荷がおりましたね。

両立じゃないとするとどうすれば?

母として一番子どもにとって与えられる価値って何だろうって考えて。寝る時にいてハグしてキスしてあげることだったり、誕生パーティーや保護者会にいることだったり。

“私じゃなきゃ絶対できない事は何か”で優先順位をつけて、それ以外はアウトソースして他の人にやってもらってもいいって。

そういう考えをしたことありませんでした…

でも、それは仕事でも必要なんです。全部自分でやってたら会社自体大きくならないし自分も成長できない。本当に自分の強みが発揮できるところに特化する方がいいと私は考えています。

自分の強みっていうのは、どう見つけていきましたか。

自分の中で自分の強みはこれだと思っていても、社会に出てほかの人からそう思われるのかどうか。実際は、現場でやらないと分からないと思うんですよ。でもその仮説があることは大事だと思います。

仮説ですか?

今までこういう経験してきたからこういう強みがある、という自分なりの仮説があった上で就職先を探すべきだと思うんですよ。

自分のやりたいことは何か、自分の強みは何か、そうやって絞っていく感じですかね。

石角さんの1日のスケジュール

1日のスケジュールをお伺いしたいんですけど、朝は5時から。すごく早いですね。

私はディープワークとシャローワークという概念をすごく大事にしていて。

ディープワークとシャローワーク?

シャローワークは浅いっていう意味で、あまり頭を使わず集中しなくてもできる作業、Eメールの返事を書くとか、ですよね。

ディープワークはその逆で、本当に一切の邪魔が入らない時間を作って集中しないとできない仕事ですね。

そういう考え方があるんですね。

私は朝型なので、朝にディープワークの時間を持つようにしています。

情報収集はデジタルばかりではない!?

AIのお仕事というとデジタルばかりと思っていましたが、読書もされているんですね。

本はめちゃめちゃ読みますね。一切惜しまずに、どんどん買うし。本が一番大事かも。インターネットの情報量と本の情報量、全然違いますから。

どうして、そこまで本にこだわるんですか?

私も本を書く側に回ったことあるからわかるけど、本って入魂して書くじゃないですか。

調べて、校閲もして。だから、いい本に巡り合った時のリターンは計り知れない。

常にそれを期待しているんだと思いますね。知らないことが、この本に書いてあるんじゃないかって。

本は全部読み通すのですか。

最初から最後まで読む必要はなくて。自分のなかで良いアウトプットが得られれば、もう十分価値はあります。

限られた時間の中で、仕事も子育ても読書もってすごいですね。

オバマ前大統領は、常に7冊の本を同時進行で読んでたらしいんですよ。私は同時で読んでるの大体2冊だから、あー、まだまだだな、みたいな(笑)

インプットをアウトプットに

情報の活用で意識していることはありますか?

インプットをアウトプットにする事ですね。

どういうことでしょうか。

ニュースも「ふんふん」って読んで終わりだと絶対忘れるから、これを読んだときに、「あっ、これこのプロジェクトに使える!」っていうのを記録しておく。

そうすると忘れないし、クライアントに会った時に「あっ、これ言わなきゃ」ってなるし。

ちなみに、学生時代はどうやってニュースを集めてましたか?

ニュースってすごく情報量が多いから目的意識がないと頭に残らないんですよ。

そうすると何も抽出できずに終わっちゃうから、私は興味がある業界とか興味がある会社のニュースを自分のEメールボックスに送るようなサービスを使って読んでいましたね。

「石角さんにとって情報とは?」を書いてもらいました。

AIはインプットするデータが悪いとアウトプットが悪くなるんですよ。だから、いかに活用できる価値あるデータをAIに入力できるかが大事なんです。

ある意味で、人間と同じだなと感じていて。より良いアウトプットをするために必要なのがより良いインプット、つまり良い情報という意味です。

仕事は人生の旅路!

最後にもう一つ。「石角さんにとって仕事とは?」

エンデバーってどういうことでしょうか?

エンデバーっていうのは、未知のところに行って開拓して、今まで見たことのない自分を見るっていう意味を込めています。

仕事をすることで、また別の自分が見えてきたりするし、新しい人と出会って新しい社会貢献ができると思うし。

仕事はそういう意味で一種の旅路であり、その道を歩むこと自体が楽しいなって思います。

ありがとうございました!

仕事と私生活を完全に分けずに、統合させるワーク・ライフ・インテグレーション(WLI)というのは、私にとっては新しい考え方でした。WLIを実現させている石角さんは、かっこよかったです。そして、インプットできる情報がたくさんある今の社会だからこそ、情報を自分のものにしていく大切さを感じました。

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