目指せ!時事問題マスター

1からわかる!参議院選挙(中)

2019年07月16日
(聞き手:井山大我 西澤沙奈)

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令和初の国政選挙、参議院選挙(投票日は7月21日)。今回は、ネットで選挙どこまでOK?そして、参議院の特徴や選挙の仕組みも、1から学生リポーターが取材しました。

選挙でネット どこまでOK?

学生
井山

最近は、TwitterなどのSNSでも、政党の活動を見かけますよね。

インターネットを使った選挙運動は、昔は認められていなかったけど、解禁されてから、だいぶ進んできたね。

伊藤
解説委員

今回も政治担当の伊藤雅之解説委員が学生の質問に1から答えます。

学生
西澤

いつからできるようになったんですか?

2013年の参議院選挙から。でも、できることと、できないことがあります。

ホームページとかブログとかSNSだったら、政党や候補者は投票を呼びかけていいし、有権者(=18歳から)も選挙運動してOKだよ。

私たち有権者も、ネットで選挙運動をしていいんですか?

うん。有権者も「この人に投票してください」とネットに書き込んだり、候補の街頭演説を撮影してネットに投稿したりしてもいい。

注意点あり。選挙運動は、投票日の前日までに限られています。投票の当日に特定の候補者や政党への投票を呼びかける文章をSNSに書き込んだりブログを更新したりすることはできません。ただし、前日までに書き込んだ文章を削除する必要はありません。

気をつけてほしいのは、WEBと電子メールは区別されていること。

電子メールも政党と候補者は、「投票をお願いします」と送っていいけど、有権者は電子メールで「○○候補に投票をお願いします」と送ることは禁止されている。

SNSはいいけど、メールはだめなんだ…

もうひとつ注意点として、ホームページやメールなどの内容を印刷して配るのはダメ。

ネットに載っているのにですか?

印刷して配ると、選挙違反になっちゃう。選挙運動ができるのは、選挙がスタートした日から投票の前日までということにも気をつけてください。

ネット選挙について、詳しくはこちらをご覧ください。

NHK選挙WEB「知っていますか?ネット選挙運動のキホン」

衆議院と参議院の違いって?

そもそもの質問ですけど…、参議院と衆議院の違いを教えてもらえますか?

国によって違いがあるのだけど、G7に参加する主要7カ国は二院制を導入している。2つの院に分けているのは、本当にそれでよかったのかをチェックしよう、という意味があるわけだ。

いちばんの違いが任期。衆議院議員の任期は4年、解散もある。

衆議院で任期満了で選挙になったのは戦後1回だけ。ほとんど任期4年を待たずに解散になっている。それだけ民意を聞く機会が多いということだね。

参議院は解散がないというのは、学校で習いました。

衆議院はどちらかというと、時の権力闘争や激しい対立があるかもしれない。

一方、参議院は、長期的な展望に立って世の中を見よう、法律や予算が本当にこれでいいのか別の角度からもう1回見ようということで、「良識の府」とか「再考の府」と呼ばれることもあるんだけど、現状はどうだろう。

あまり機能していないようなイメージがあります。

よくある批判は、衆議院のカーボンコピーじゃないかと。政党の力が大きく影響して、大所高所からもう1回考えてみるとか、長期的な視点ということが本当にできているだろうかという疑問もあると。

なので、参議院の改革をしようということはずっと話し合われてきているんだ。

参議院選挙 どう選ぶ(1)選挙区

参議院の定数は、去年6増えて248になったんだ。

3年ごとに半数が改選されるので、今回決めるのは124議席分。うち選挙区が74議席で、比例が50議席です。

まず、選挙区は、人口によって定員は1人から6人。
選挙区は、以前は都道府県単位だったけど、3年前、前回の参議院選挙から「合区」という制度が導入されたんだ。

「徳島と高知」「鳥取と島根」という隣り合う2つの県を1つの選挙区として、そこから1人を選ぶんだ。

なぜ2つの県で1つの選挙区にしたんですか?

いわゆる“1票の格差”の問題があってね。選挙無効を求める裁判が各地で起こされ、最高裁はこの状態を“違憲状態”として是正を強く国会に促した。

1票の格差=有権者が投じる1票の価値の違いを示すことば。

有権者が少ない地域では、少ない得票数で当選が決まるが(=有権者の1票の価値が大きい)が、有権者が多い地域ではたくさんの票を集めないと当選できない(=有権者の1票の価値が小さくなる)という差が生じること。

それで悩みあぐねたところ、47都道府県で人口が少ない「鳥取県と島根県」、「高知県と徳島県」の隣り合う2つの県をあわせて1つの選挙区になったんだ。

(2)比例代表

比例代表の制度は、衆議院選挙と参議院選挙では大きく違います。

1つは、選ぶ範囲の広さだね。衆議院の場合は全国を11のブロックに分けて行うんだけど、参議院の比例代表は、全国を1つと考えているんだ。

投票のしかたも違うね。

衆議院選挙は政党名を書くけど、参議院選挙の場合は政党の名前と候補者の名前、どちらを書いてもいい。

これを合わせて、その政党の得票と計算をします。その合計数に応じて、議席を配分していく。

参議院選挙は、タレント候補、知名度がある人が多く立候補しているイメージがあるのですが、個人票が多く集まることが期待できるからですか?

まさにそのとおり。全国的に知名度のある人や支援組織や団体が全国規模で広がっている人なら、ドーンと票を集められて、その人が当選するだけなく、同じ党のほかの人も当選する力になるかもしれないよね。

今回から導入「特定枠」って?

比例代表で当選する順番は、どう決まるのですか?

これまでの制度では、その党の候補者のうち、個人名が書かれた票が多い順に当選者が決まるという仕組みだった。

今回は違うんですか?

今回の選挙から「特定枠」が導入されたんだよ。

「特定枠」?初めて聞きました。

政党がぜひとも議員にしたい人を、あらかじめ何人か選んで順位を付けて、優先的に当選させることができる仕組み。

なぜですか?ただでさえ複雑なのに、もっとわかりづらくなった気が・・・

さっき、選挙区のところで、2つの県を1つにする「合区」ができたと説明したでしょう。もともと両方の県からそれぞれ候補者を立てていた政党にしてみると、合区によって候補者が1人立てられなくなってしまう。

だから選挙区から立候補できない県の候補者を比例代表の特定枠の候補者にして優先的に当選させることで地元の理解を得ようということもあったんじゃないかと言われている。

「当確」って誰がどうやって決めているの?

ところで、開票速報で「当確」っていつもやりますけど、あれは、誰が決めているんですか?

「当確」、つまり「当選確実」は、選挙管理委員会で発表するものではないんだ。報道機関が重い責任を持って自分たちで判断して出しているんだ。

そうなんですか。どうやってわかるんですか。

取材の積み重ねだよね。1つ目は情勢取材。候補者がどんな人か、支持しているのはどんな人や組織か、資金力や地域の人たちの評判とかね。

2つ目は、たくさんの調査結果。政党の支持や政策への関心などについて世論調査で調べるし、期日前投票の行動調査や、投票日の当日は出口調査をやります。

これらのデータと自分たちの取材をつきあわせて、有権者の意識や選挙情勢を分析します。

2017年衆議院選挙 佐賀県唐津市の開票所

3つ目は開票所での取材。

この3つのポイントで、当選確実かどうかを判断しています。

開票率が0%で「当確」が出るのは、なぜですか?

記者の情勢取材と、期日前の投票行動、そして当日の出口調査、これで明らかに大きな差がついていると判断できた場合に限って、投票終了と同時に当選確実を判断する。

これはあくまでも報道機関がそれぞれの基準を持って、責任を持って判断している。責任の重さは自分たちもよく分かってますし、やっぱり当確打つ時は、緊張で震えるよね。

当確は、そうやって出しているんですね。

自分が投票した人が当選したかどうかを知りたいのは、人情じゃないですか。だとすると、その「知りたい」にできるだけ早く応えることが大切なので、一生懸命努力をする。

大切なのは「正確で早い」こと。選挙報道に携わる者として、正確に、いち早く知りたいという期待に応えることが大切だと考えています。

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