目指せ!時事問題マスター

1からわかる!18歳成人(2)何が変わる?変わらない?

2022年03月30日
(聞き手:小野口愛梨 本間遥)

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ことし4月から、成人年齢が18歳に引き下げられます。でもお酒が飲めるのは20歳のまま。その線引きはなぜ?結局何が変わったの?20歳になったばかりの学生リポーターが、司法担当の山形晶解説委員に1から聞きました。

変わること、変わらないこと

学生
小野口(21)

18歳で成人しても、お酒は飲めないと聞きました。

大人なのになんで?という気もするのですが。

そう思いますよね。実は、お酒、たばこ、ギャンブルは、今回わざわざ「別扱い」にして20歳のままにしたんです。

山形
解説委員(47)

学生
本間(21)

わざわざ?

そうです。理由になったのは年齢を線引きする“性質”の違いです。

ちょっと今回の成人年齢引き下げで、変わること、変わらないことをまとめてみました。

まず変わることで言えば、「契約」ですね。

「スマホの契約」「アパートやマンションを借りる」「クレジットカードを作る」などを18歳から親の同意なくできるようになります。

未成年の時は、正直面倒でした。

それと親の同意がなくても「会社の取締役」になれます。

これまでも18歳で会社の取締役になりましたという人はいたけれど、その人たちは親の同意があったわけです。

なんだか自由!他にはありますか?

「国家資格」も取れるようになります。公認会計士、司法書士、行政書士、それに医師も。

医師にもなれるんですか?

6年制の医学部を卒業する必要があるので、18歳の医師が誕生するかと言えば、実際はそうならないですよね。

そうですよね。高校生のお医者さんが出てくるのかと思ったんですけど(笑)

どうしていま引き下げ?そもそも大人、成人って何? 1からわかる!「18歳成人」(1)なぜ今?大人ってなに?はこちらからご覧ください

それで、これらの「契約」「取締役」「国家資格」などは、今回、民法の成人年齢が20歳から18歳に変わったので、自動的にその対象年齢も変わりました

それぞれの法律に”未成年はダメ“としか書いてなかったからです。

結構いろんな法律に関わってきちゃうんですね。

お酒・たばこ・ギャンブルの法律も、もともと”未成年”という表現が使われていました。そこをわざわざ改正して“20歳未満はダメ”ということにしたんです。

その理由が“性質”の違い

具体的に言うと?

今回、成人年齢を18歳に引き下げたのは、法律的にもう十分、自立した大人とみなしてよいと考えられたからです。「契約」とか「国家資格」は、その考え方が前提にあります。

でも、お酒やたばこには健康への悪影響がありますよね。それに18歳でも体の成熟の度合いには差があるし。

そうなったときに、法律的に自立した人間かどうかと、健康への影響。これは別の”性質”だよね、同じものとしては考えられないよねということになったんです。

たしかに。

ギャンブルについては“依存症”の問題がありました。

これも十分自立した大人とみなすということでOKして良いのか?変えちゃいけないよねとなったんです。

山形晶解説委員は、司法取材のスペシャリスト。社会部記者時代には裁判員制度が始まり、制度をめぐる課題を取材。2020年から司法・事件事故などを専門とする解説委員を務める。

20歳のまま変わらないもの。ほかには「年金」も変わっていないですね?

これも“性質”の違いが理由です。

年金は国民がお互いに将来を支え合うという考え方です。

国民年金は20歳からとなっていますが、所得の少ない学生は特例で猶予されます。一方で、未成年でも企業で働いていたら厚生年金に加入します。

となると、中身や外見がどうだろうが“大人とみなす”という成人年齢の話とはちょっと違いますよね。

なるほど。

女性の結婚可能年齢は18歳に引き上げ

女性が結婚できる年齢が、16歳から18歳に引き上げられますよね。これは、どうしてなんですか?

これはこの際だから変えてしまおうということで、変わりました。

もともと変えた方がいいという意見が結構あったんですよ。なんで男女で違うのって?

なんでだろうって思いました。

歴史を振り返ると、日本で法律を作ろうとした当時、男性より女性の方がわりと早く結婚していたという実態がありました。

ただこれ、女性が結婚したいと願ったからというよりも、早く嫁いできてもらって後継ぎを産んでもらう。そんな考え方があったかもしれませんよね。

もう1つ、女性のほうが発達が早いとも言われていたんです。

これも、そもそも発達が早いというのは何を根拠に言っているんですかと。そういうのもあって今回18歳に引き上げられました。

男女ともに16歳でそろえるのはダメだったんですか?

いつ結婚したいかは人それぞれの価値観だと思います。

でも、社会の中で昔ほど若くして働くことがなくなってきましたし、子どもが生まれた場合の養育環境なども考えないといけない。となると、そろえるのであれば引き上げた方がいいということですよね。

社会的に本人たちのことを考えてのことと。

ほかに、この際だから変えたものとしては、パスポート。18歳から10年有効のものを取れるようになりました。これまでは5年有効のものしか取れませんでした。

あとは性同一性障害の方の性別変更も可能になりました。

少し複雑なのが、少年法です。法改正はされましたが、罪を犯した18歳や19歳は「特定少年」として子どもと大人の間のような位置づけになります。

ただ、実際は、18歳・19歳でも大人と同じ刑事裁判の対象が広がります

どうなる成人式!?

それと忘れちゃいけない成人式。「大人といえば成人式」の印象もありますが、18歳に変わるんでしょうか?

私は儀式的なものが苦手なので、成人式に行かなかったんですけど(笑)

それはいいとして、成人式は、多くのところで20歳のまま変わらないのかなという感じですね。

変わらないんですか?

これは、法務省がことし1月に公表した調査結果です。

回答した1176の自治体の8割以上、982の自治体は「20歳、または20歳を迎えた年の次の年度」に成人式を行うとしています。

18歳で行うとした自治体は2つしかありませんでした。ということで、成人式はあまり変わらないのではないかと。

よく考えると18歳の1月に成人式となると、就職とか受験と重なっちゃう。

まさにそこ。20歳から変えない理由も「受験と重なり出席者が減少する」という回答が最も多かったんです。

私は成人式で大人になったなという感覚がありました。成人式が18歳で行われないと、実感がわかない人も多そうですね。

少なくとも成人式については、18歳の人たちの生活実態とちょっと合っていませんでしたね。

ただ成人式は法律で決まっているものではないですし、絶対にこうしなければいけないというものでもない。柔軟に対応でいいのではないでしょうか。

変わること、変わらないこと。それぞれにいろいろな理由があるんですね。

そう、いろいろあります。

ただし、変わることの中で、私は改めて「お金のことだけは注意してね」と、そこを本当に言いたいんです。

自由になる反面、責任が増えるというお話でしたよね。

まさに、そのことです。自由になるというのは、責任も増えるし、危険も増えるんです。

山形解説委員が「注意が必要だ」というお金のこと。そう訴える理由はなぜ?どこに注意が必要? 次回は〈番外編〉”お金の話”を掘り下げます。

 

編集:種綿義樹  撮影:石川将也

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