「投票に行きたい。でも投票所まで行くのが大変だ…」
このように感じている、障害のある人や高齢者にも気軽に投票してもらおうと、茨城県つくば市がある取り組みを進めています。
事前に予約すると投票箱を載せた車、「移動投票車」が家の前まで来て、そこで投票できるというもの。
先月(2024年1月)に行われた「模擬投票」の様子を取材しました。
(NHK水戸局記者 丸山彩季)
「家族に負担をかけたくない」
つくば市に住んでいる90代の男性は、日頃の生活で、つえが欠かせません。
選挙のときは期日前投票所が自宅から2キロ以上離れたところにあるため、いつも投票所まで息子に車で送ってもらっているそうです。
90代の男性
「自力で投票所に行くことが難しいのですが、息子に連れて行ってもらっているのも本当は心苦しく、負担はかけたくないんです」
つくば市では2020年の市長と市議会議員の選挙で、投票率がいずれも過去最低でした。中でも80代以上の投票率が約40%と低くなっていました。
できるだけ多くの人に気軽に投票してもらおうと、ことし(2024年)秋に予定されている市長選挙と市議会議員選挙では、誰もが投票しやすくなるための準備を進めています。
「移動投票車」とは?
対象としているのは、自力で投票所まで行くのが難しい、障害のある人や高齢者です。
実施は期日前投票の期間中で、対象者は事前にスマートフォンか電話で車を予約します。
その際、
① 自宅の前に投票箱を載せた移動投票車に来てもらう。
② 自宅から移動投票所まで送迎してもらう(自宅前にスペースがない場合)。
どちらかを選んで申し込みます。
(つくば市の資料より)
取り組みのPRと、課題を探るためにことし1月、移動投票車による模擬投票が行われました。
「家族に負担をかけたくない」と話していた90代の男性も参加。
電話で送迎車を予約し、家の前に来た車で案内された移動投票車に乗り込みます。
乗り込むときの介助もあります。
投票箱は運転席の後ろにあり、座ったまま投票できるようになっているため、負担は少なかったそうです。
90代の男性
「予約も簡単で、投票車までの送迎サービスがあるので、家族に負担をかけずに利用できてよいと思いました。次の選挙で実際に始まったらぜひ利用したいです」
「移動投票車」は車いすの人でも使いやすいようにスロープが取り付けられていて、車いすに乗ったまま、車内で投票することができます。
「本番」の投票では公正に行われているかを監視する投票立会人が必要で、「移動投票車」では、立会人が後部座席から見守ることになっています。
このほかスマートフォンを使えば、「移動投票車」の場所も確認できるということです。
投票率の向上に期待 将来は?
5日間かけて行われた模擬投票には約70人が参加して、今後、市では参加者の意見を聞いて、使いやすい方法を考えていくことにしています。移動の負担を抑えることができれば、投票率の向上につながるのではないかと期待しています。
つくば市 科学技術戦略課 前島吉亮 課長
「高齢者の多い地域で、投票の選択肢として提供したい。今回の模擬投票では『本番でもこうした環境があれば利用したい』という声が聞かれ、特に投票所まで移動が困難な人からはとても便利だと好評でした。自宅まで来てくれるという点が今回一番よかったと言われているので、移動期日前投票所は投票率を上げるひとつの方法だと思います」
つくば市には国の研究機関などが多く集まっており、最新の技術を積極的に活用しようとしています。
例えばインターネットを使った投票は今の法律では認められていませんが、つくば市では将来実現したことも視野に入れていて、今回の取り組みもその一環と位置づけています。
誰でも投票しやすい環境を作ることができるか、まずはこの秋の「移動投票車」の取り組みに注目です。