「投票に行けない」バス運行が1日4本だけの村で

奈良県と三重県に囲まれた全国唯一の飛び地の村、和歌山県北山村。

人口はおよそ400人。「じゃばら」というかんきつ類の栽培や観光業が盛んです。

そして、村の誇りはもうひとつ、その投票率の高さです。

ことし7月の参議院選挙では77点54%、去年10月の衆議院選挙では80点58%。

この10年間、国政選挙における投票率は県内トップが続いています。
(取材・和歌山放送局 藤田 真由香記者)

誰もが投票に行けるように

村の投票所は、投票日に4つの集落に1か所ずつ、期日前投票所は村の中心部に1か所設けられます。

一方、村の公共交通機関といえば、集落をめぐる定期運行のバスです。

その本数は、平日が1日最大4本、休日になると2本だけ。村にはタクシーの営業所もありません。

そこで村は3年前、歩行が難しい人も投票ができるよう、投票所までの移動を支援する制度をつくりました。

この移動支援は期日前投票の期間中、無料で利用することができます。

利用したい人は、村の選挙管理委員会に連絡して希望の日時を伝えると、社会福祉協議会の職員が車で自宅を訪れ、投票所まで送迎してくれます。

使われる車は、車いすをそのまま乗せることができ、乗り降りの補助もしてくれます。

そして投票所でも、村の職員が投票をサポートします。

選挙のたびに制度を説明するチラシを全戸に配布し、周知を徹底してきたこともあり、これまでに車いすや歩行器を使っている高齢者など10人が利用しました。

村に住む寺前君子さん(72)です。自分で車を運転できるので、まだ制度を利用したことはありませんが、運転ができなくなったときには支援を受けたいと考えています。

寺前君子さんの話:
「自分の足が悪くなっても、こういうサービスがあるなら安心して投票に行けます。また、90代の母親が近くで妹と住んでいるので、家族の都合が悪く、投票所まで送迎する人がいないという場合にはサービスを使ってみたいです」

北山村選挙管理委員会 古根川康真さんの話:
「貴重な1票なので、この制度を使うことに遠慮している人がいたら気兼ねせず積極的に使ってほしい」

移動する投票所も

こうした取り組みは、和歌山県内のほかの自治体でも行われています。

古座川町は、人口減少で廃止された投票所の近くに住む人たちが困らないように、最寄りの投票所まで無料で送迎する取り組みをしています。

また、有田川町は、投票所から遠い山間部を中心とした5か所の地域に、期日前投票の期間中に「移動投票所」を設ける取り組みを行っています。

障害がある人、高齢の人など、投票所に行くのが難しい人たちが安心して投票できる取り組みが少しずつ広がっています。

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