ここまでできた!初めての投票の思い

今回の参議院選挙では、知的障害がある人がどのように投票に臨んだのでしょうか。

おとといの投票日に、人生で初めて投票した重度の知的障害がある男性を取材しました。

選挙への挑戦

東京都狛江市に住む福田悠太さん(24)は、(ふくだ・ゆうた)重度の知的障害があります。

母親の彰子(あきこ)さんは、選挙に参加することは成長につながると期待しています。

彰子さんの話:
「悠太も成人して大人になって、社会の一員であると言う所では選挙においても挑戦してみる機会はあってもいいのかなと」

自閉症もある悠太さんをスムーズに投票につなぐには入念な準備が欠かせないため、市の担当者に相談しました。

特に心配なのは初めての場所を訪れると不安で体が動かなくなる、悠太さんの特性です。

相談の結果、悠太さんが信頼するヘルパーの松島和真(まつしま・かずま)さんが同行することになりました。

支援者は原則、投票所の中には入れませんが、本人が不安で動けなくなるなど特別な理由がある場合は認められます。

緊張をほぐそうと、大好きなおもちゃも準備することにしました。

候補者選びは特製の冊子を準備して家にいる時間に見てもらい、最も長い時間眺めていた候補を悠太さんの選択にしました。

そして通う事業所で開かれた本番さながらの模擬投票で、会場の雰囲気に体を慣らしました。

「帰りたくない」

迎えた投票日当日、投票所は自宅近くの学校です。彰子さんと妹のりささんも陰から見守ります。

ヘルパーの松島さんが、「今日は選挙です。朝、説明した通り」と話し、学校に入ろうと促しますが・・・悠太さんは手を振る拒否の意思を示し、体が動かなくなってしまいました。

10分、20分と時間が過ぎていく中、松島さんはこう問いかけました。

「じゃあ帰る?。(悠太さん、違うと手を振る)。帰らない?。(悠太さん、手は振らない)」

悠太さんは手を振って『帰りたくない』と意思を示しました。自分の気持ちと戦っていたのです。

彰子さんの話:
「ここに行く事はわかってるんだけれども勇気が出ない。どうしようっていうのですごく時間がかかっているという風に見えました。あともう少し。私が悠太の手を引いてあげれば・・・」

彰子さんが動き、妹の、りささんも語りかけました。少しずつ門に近づき、悠太さんは葛藤を始めてから約45分後、ついに門をくぐりました。

投票所に入った悠太さん、練習の成果か、まっすぐ受付票を渡して、その後はほとんどちゅうちょせず、スムーズに投票を終えました。

彰子さんの話:
「ここまでできたっていうことに驚いているっていうのが一番正直な感想ですね。いわゆる健常と言う人たちと同じルールで同じようにやるのは難しいかもしれないけれども、機会は平等であって欲しい誰もが皆安心して票を投じることができるように環境が整っていくといいなと改めて感じました。今日悠太が頑張ったことが、そのためのほんの少しでも何か役に立てたらありがたい、嬉しいなと思います」

2022年7月12日放送

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