挑んだ国政 バリアフリー化は進んだか

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重い障害があり大型の車いすを使う2人が4年前の参議院選挙で当選し、国会議員になりました。

国会ではハード面のバリアフリーは進みましたが、課題はないのでしょうか。どんな活動をしているのでしょうか。話を聞きました。

(政治部・森裕紀記者)

「暮らしやすい社会づくりを」と国政へ

「重度の障害がある人でも国会活動をして、少しでも問題解決のために関わることができる。そのことを知ってもらうことがとてもやりがいで、うれしいと思う瞬間です」

こう語るのは参議院議員の木村英子さん(58)。

生後8か月のときに歩行器を使って歩いていたところ、玄関の段差を転げ落ちて頭を強く打ちました。

以来、木村さんは両手と両足をほとんど動かすことができません。大型の車いすを使い、介助者が付き添っています。

障害のあるなしに関わらず暮らしやすい社会をつくりたいと、4年前の参議院選挙で、れいわ新選組から立候補して初当選しました。

初登院の前から国会のバリアフリー化が進められた

2019年8月1日 初登院した木村さん

この年の参議院選挙では同じ党から、全身の筋肉が動かなくなる難病のALS=筋萎縮性側索硬化症の舩後靖彦ふなごやすひこさんも、初当選しました。

舩後さんも介助者を必要としていて、大型の車いすを使っています。

また、車いすを使う無所属(当時)の横澤高徳よこさわたかのりさんも同じ選挙で初当選しました。

参議院で車いすを使う議員は、木村さんたちの前にも、郵政大臣を務めた八代英太さんがいたため障害者用のトイレや、本会議場に登壇するための簡易なスロープはありました。

ただ木村さんのように大型のものを使う人はいませんでした。

このため参議院では、2人が国会に初登院する前から要望を聞き取り、約2年かけてバリアフリーの整備を進めてきました。

木村英子 参議院議員
「要望の聞き取りは、どんな配慮が必要かを直接、本当に丁寧に聞いてもらえました。さまざまな設備をバリアフリー化して、(初登院の時には)かなり使いやすくなっていたので、さほど障壁は感じませんでした」

そのひとつが本会議場に新たに設けられたスロープです。

参議院の採決で投票する木村さん

投票などの際に大型の車いすのまま演壇にあがることができるよう、おととし1月(2021年1月)に改修されました。

また木村さんと舩後さんの議席は、大型の車いすがそのまま入ることができるように改修されました。

もともとこの部分には3人が座ることができる議席がありましたが、2人の初登院に間に合うように机やいすを取り外し、床を上げる工事をして、専用の議席がつくられました。

このほかにも参議院の玄関には、大型の車いすをのせることができる昇降機が取り付けられたほか、木村さんらが使えるトイレも新たに4つ整備されました。

木村さんの支援者の中で、障害のある人が委員会を傍聴する機会も増えたことから、一部の委員会室では車いす専用のスペースも設けられました。

木村さんは、国民の代表者である国会議員には一定の配慮がされていると感じています。ただ同じことが地方議会で可能なのかということは、疑問に感じています。

木村英子 参議院議員
「ある地方議会では議場にスロープを付けることさえ、予算面でかなりご苦労されたと聞いています。バリアフリーにするには地方は特に予算が少ないと思うので、そこは国の予算をつけていくのがいいのではないでしょうか」

地方議会でも障害者が議員として活動できるようにするため、国の支援が必要だと考えています。

国会活動と並行して“介護者探し”

議員活動を続けるうえでの心配は施設面だけではありません。

木村さんと介助者

木村さんは国会での活動のほかに各地を訪れて、障害のある人の権利の拡充を訴えています。

ただ木村さんは夜間も体調の変化を確認する必要があり、24時間の介助を必要としています。

毎日3人ほどの介助者が交代で活動を支えています。しかし人手不足もあり、介助者の確保もギリギリの状態です。

木村英子 参議院議員
「国会活動と同時に介護者探しをしています。本当にひと事ではなく、介護者が見つからず本当に国会に通えるのだろうかという不安を抱えながら国会活動をしています」

議員だからできること

それでも国政に直接、障害者の思いを届けることができることに手応えを感じています。

新型コロナが世界で猛威をふるった3年前、重い障害のある人から相談が寄せられました。

入院した際に感染対策の強化を受けて、ふだんからお世話になっている介助者の付き添いを病院から断られて困っているという相談でした。

このため国会で質問したほか、厚生労働省の担当にも状況を説明し、ふだんからの介助者による付き添いは問題ないと、自治体などに通知を出してもらいました。

自治体への通知

この通知については、相談を寄せた人以外にも多くの人から感謝されたといいます。

木村英子 参議院議員
「(国会議員になって)直接、省庁や行政の方とすぐに話ができることが増えました。障害者の方から相談をいただいた時にすぐに対応でき、とても良かったと思います。議員としてやりがいというか、思いを聞いて私の力でできていることはすごくよかったと思っています」

木村さんは今後も国政の場で、障害者にしか分からない社会の課題の解決に取り組み、障害のある人もない人も、暮らしやすい環境を整えていきたいということです。

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