アナウンサーが聞きました 選挙のニュース、どうすればわかりやすくなりますか?

「ふだんの選挙のニュース、果たして障害のある人にもわかりやすい内容になっているかな?」

愛知県知事選挙を前に、軽度の知的障害のある人と一緒に、考えてみました。

(名古屋放送局 田所拓也アナウンサー)

特別支援学校へ行きました

アナウンサーとして、ニュースをできるだけ分かりやすく伝えようという心構えは持っています。

でも実際に選挙に関するニュースがどこまで伝わっているのか、少し不安…。

訪ねたのは、愛知県豊田市の豊田高等特別支援学校です。

選挙権のある18歳の4人に、集まっていただきました。

「難しい文章や漢字の読解に時間がかかる」「知らない人の前ではことばが出にくい」など、ひとりひとり苦手なことが違います。

選挙にはどんなイメージが?

まずは2週間後に控えた知事選挙について、どんなイメージを持っているか、4人に聞いてみました。

「本当にその人がリーダーにふさわしいかを決めるもの」

「1票を入れることで自分の意見を示すことができる」

「人混みが少し苦手なので不安ですが、行きたい」

「僕の1票でより良い社会ができたらいい」

ニュース、何言っているかわからない

みなさんとても前向きな思い。

では私がふだん読んでいるニュースはどう受け止めているのか。

実際のニュースの原稿を読んでみました。

「任期満了に伴う愛知県知事選挙がきょう告示されます。現職と新人のあわせて6人が立候補を予定していて・・」

返ってきた反応は・・。

「正直、ちょっと何言っているかよくわからない」
「難しい言葉ばかりが並んでいてわかりづらかった」

特にどんなところがわかりにくかったのか。原稿を見てもらいました。

そもそもニュースの冒頭にある「任期満了に伴う」の部分から、わかりにくいという指摘が。

そこで「任期満了」をかみ砕いて話してみました。

「任期満了ということは、愛知県知事という人が任される期間は4年あります。ずっとやってきて4年間たちました。4年たった時点で満了、ということ」

みなさんからは「だいぶわかりました」という感想、いただきました。

多くの人に届けたいと、わかりやすい表現や言葉を使っているつもりでしたが、伝え切れていないことがあるんだと考えさせられました。

投票所は緊張する!

去年の参議院選挙で初めて投票した小島さんが、投票所での体験を話してくれました。

小島紅彩さん
「投票所はすごく緊張感のある空気感で、何個も候補者名を書いたりして、細かい字を見つけて書くのが大変でした」

今度の知事選挙で初めて投票に行こうと考えている中島さんからの質問は。

中島孝輔さん
「(投票所に)顔写真ってよく貼ってある?」

小島紅彩さん
「顔写真はない。ほんと名前だけの立候補者一覧の中で探して書く」

戸惑った様子の中島君、候補者の顔写真があるとスムーズに投票先を選べる、と提案してくれました。

中島孝輔さん
「演説する時って、顔とかよく見るじゃないですか?投票するときに顔写真があれば、演説してたときにこの人がいいって言った人だと選びやすい」

あらためて、障害のある人の投票にはさまざまな壁があることがわかりましたが、みなさんの声からは、1票を投じたいという思いが伝わってきました。

和田浩樹さん
「投票の仕方がだいたいわかって、いろいろ意味もわかってきたので投票にだいぶ安心して行けるようになってきました」

後藤陽向さん
「選挙に行く前に、もっと自分でどんなやり方があるのかとか、仕組みを自分で理解した上で選挙に行けたらいい」

生徒たちをよく知る先生は、今回の選挙が大きなきっかけになればと期待しています。

豊田高等特別支援学校 落合大輝先生
「選挙というものが、彼らにとって生きやすい社会にしていくための第一歩じゃないかなと考えています。少しでも障害に関して理解しようとしていただける社会になって欲しいなと思っています」

生徒のみなさんに共通しているのは、選挙のことも候補者の主張も理解したうえで投票したいという気持ちです。

今回お聞きした4人のみなさんは、軽度の障害のある方でしたが、中度や重度の障害のある方の中には、選挙制度などを理解したり、みずから意思を示して投票したりすることに壁を感じている方もいます。

投票に向けた情報の伝え方をもっと工夫し、投票の仕組みからわかりやすく説明すること。

そうしたことの積み重ねが、みんなが投票できる選挙につながっていくのだと、今回の取材から強く感じました。

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