投票の改善を求める声に自治体はどう答える? 
副市長に聞いてみた

「みんなの選挙」サイトには、障害のある人や支える人などからさまざまなご意見や悩み、ご提案が寄せられています。

障害のある人たちの投票を巡る状況は改善されるのか。自治体にはどんな対応が求められるのか。東京・狛江市の副市長で、総務省の主権者教育アドバイザーを務め、投票現場の実情に詳しい平林浩一さんに聞きました。

質問者は報道局の杉田淳記者

付き添いを断られた?

投票所で付き添いの人の同行を断られた、という声が少なくありません。
例えば「知的障害の姉の投票の折、家族は投票所内では付添えないと同行を遮られ、代わりに職員さんが付添われましたが、環境の違いに姉自身も緊張して落ち着きをなくし、職員さんも不慣れな方でさらに姉を混乱させてしまいました。以降、姉を投票に連れて行けないです」という体験がありました。
一緒に付き添われる方がどこまで同行できるのか、どう理解すればいいのでしょうか?

平林さんの話:
平成28年に公職選挙法が改正されて、投票所には子どもや介護者が一緒に入れるようになりました。ただしこのときの国会審議では、子どもについての議論がメインでした。
そんなこともあり、介護する人の同行を認めることについて、迷われたり、消極的な解釈になってしまう投票所もあるのかなと思っています。
基本的には子どもさんがついてこられるときと同じで、記載台で投票用紙に書き込むところだけ離れていただければいいと思います。
投票所の管理者は、投票の秘密を守りつつも、もう少し柔軟におおらかにやっていただければいいのではないでしょうか。

「代理投票」でプライバシーを守るには?

自分で投票できない人のかわりに投票所の係の人が投票する「代理投票」について、「個人のプライバシーが尊重されていないように感じる」という意見がありました。プライバシーは守られるのでしょうか?

平林さんの話:
候補者名を2人の補助人に伝えることによって「漏れてしまうのではないか」とご心配になるのだろうと思います。しかし私たちは地方公務員法の守秘義務がありますので、そこは「絶対に話さない」と信じていただいて、安心していただきたいと思います。補助人が投票内容を確認する際、周囲に聞こえないようにするという配慮は当然必要なことです。

投票所のバリアフリー化は?

投票所内の物理的な環境について、改善を求める声も多くあります。

平林さんの話:
「段差がある」とか「くつを脱ぐのが大変」といったご意見もありますが、一つの解決策として、選挙管理委員会に事前に事情を教えていただき、「こんな支援が必要だ」ということを伝えていただくのもありだと思います。
すべての投票所があらゆる対応ができればいいのですが、そうでなくても事前にわかっていれば、それなりの対応はどこの投票所でも可能だと思います。選挙管理委員会の連絡先は、ご自宅に届く入場整理券にも書かれています。
また「ちょっと手を引いてほしい」とか「固い机で書きたい」「いすに座って書きたい」といったご意見は、現場で言っていただければ対応できることだと思います。コミュニケーションによって解決できることは結構多いのではないでしょうか。

投票方法は変えられないか?

タッチパネルで投票できるようにしてほしいとか、ネット投票を導入してほしいという意見も多くあります。今後の見通しはいかがですか?

平林さんの話:
自分で投票用紙に書くことができないという人がたくさんいることは国も認識していて、総務省も研究しています。先日、最高裁で、海外に住む日本人が国民審査の投票ができないのは憲法違反だという判決が出ました。これまでは、投票用紙の印刷などに時間がかかるため困難ということだったんですが、今後やるということになれば、デジタルの力が必要になってくると思います。
総務省の研究会も報告書で、まず在外投票で一歩進めて、国内の選挙に誘導していくというシナリオを書いていますので、それが加速するかもしれません。
基本的な仕組みとしては、投票所でタッチパネルを使って投票するか、自宅などでスマートフォンを使って投票するかということで大きく分かれますが、近い将来、道が開かれる可能性はあると思います。

選挙は「何もかも難しい」

狛江市では知的障害のある子どもを持つ親の会や福祉作業所などが協力して、障害当事者の子どもたちが選挙について学ぶ取り組みを進めています。主権者教育アドバイザーとして取り組みに助言してきた平林さんは、次の投書にどんな言葉をかけますか?

「二十歳の娘はダウン症で重い知的障がいがあります。選挙権を得て早速投票へ行きましたが、誰を選ぶのか、自分で選びたい人の姓名を書くこととか、何もかも難しくて。選挙そのものの理解の難しい人の一票はどう生かされるのか、本人の意志はどうやって確認すればいいのか、初めての選挙で張り切って連れていったはいいけれどモヤモヤしました」

平林さんの話:
まだまだ選挙に行けてない人が結構いると感じています。 一度嫌な思いをして、『もう金輪際、選挙に関わりたくない』という声を聞くこともあります。できるだけわれわれも積極的に支援して一人でも継続的に投票ができるような環境をつくっていきたいと思ってます。
この人たちも行っているんだから私たちもっていう流れができていけばいいですね。そのためには、お子さんの投票を信用してあげてください。そういう姿を候補者は必ず見ています。わかりやすいことばで伝えようとか、その人たちに届くことを話そうということになっていけばいいと思います。

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