審査対象の11人が
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2020年9月16日決定医師免許なしでタトゥー
有罪か無罪か

どんな
裁判か

  • タトゥーの彫り師をしている男性が医師免許がないのに客にタトゥーを入れたとして医師法違反の罪に問われた裁判
  • 最高裁第2小法廷は「無罪」と判断
  • 3人の裁判官のうち1人が補足意見

大阪・吹田市の彫り師の男性は2015年までに4回、医師の免許がないのに客にタトゥーを入れたとして医師法違反の罪に問われました。
1審の大阪地裁は、タトゥーを入れる行為が医療行為に当たると判断して罰金の有罪判決とした一方、2審の大阪高裁は医療行為ではないとして逆転で無罪を言い渡しました。
有罪か、無罪か。
最高裁第2小法廷は検察の上告を退ける決定をし、男性の無罪が確定することになりました。決定では、タトゥーを入れる行為が医療行為に当たるか判断する前提として、「行為の方法や作用だけでなく、目的や状況、実情、それに社会における受け止めを考慮し、社会通念に照らして判断すべきだ」という考え方を示しました。その上で「タトゥーを入れる行為は、美術的な意義がある社会的な風俗として受け止められ、医療行為とは考えられてこなかった。医学とは質の異なる美術に関する知識や技能が必要な行為で、長年にわたって彫り師が行ってきた実情があり、医師が独占して行う事態は想定できない」と指摘し、医療行為にはあたらないという判断を示しました。3人の裁判官全員一致の意見でした。

厚生労働省の見解とは異なる

最高裁が示した「タトゥーを入れるのに医師の免許は必要ない」とする判断は、それまでの厚生労働省や捜査機関の見解とは異なるものでした。
医師法を所管する厚生労働省は、2001年に各都道府県に出した通達で、医師免許がないと医師法違反となる行為の1つに入れ墨を挙げています。その上で、行政の指導にも従わず、悪質だと判断した場合は、刑事告発を念頭に警察と連携を図るよう自治体にも周知していました。また、裁判での検察の主張によりますと、タトゥーを入れた被告が医師法違反に問われ、有罪とされたケースが大阪や神戸などの簡易裁判所で複数あったということです。

この裁判についての最高裁判所の資料はこちら(NHKサイトを離れます)

審査対象の裁判官たちの判断は

  • 裁判長草野 耕一

    結論と同じ 補足意見あり

    タトゥーの施術が医療行為だと解釈した場合、日本でタトゥーの施術を職業にする人が消失する可能性が高い。タトゥーの施術による保健衛生上の危険を防ぐため法律の規制を加えるのであれば、新たな立法によって行うべきだ。

  • 岡村 和美

    結論と同じ