民主党候補者選び 大混乱

新型コロナウイルスの感染拡大は、アメリカの大統領選挙にも影響を与えている。
トランプ大統領に対抗する野党・民主党の候補者選びが多くの州で事実上中断し、再開の見通しが立たなくなっているのだ。

3月のスーパーチューズデーで大きく躍進して候補者指名に近づいた中道派のバイデン前副大統領。
撤退圧力が強まる左派のサンダース上院議員。
いよいよ大詰めを迎える民主党の候補者選びだが、3月中旬、その動きはほぼ止まってしまった。

これまでに予備選挙や党員集会を終えた州は、全米50州のうち27州。
残り23州と首都ワシントンはまだ実施されていない。

最後に投票所で投票が実施された3月17日。
この日、予備選挙を予定していた中西部オハイオ州は、前日になって州知事が公衆衛生上の危機にあるとして投票を延期する方針を示し、当日、投票所を閉鎖した。
延期に踏み切る州や投票をやめる州はその後も相次ぎ、これ以降、候補者選びを実施した州はない。

ニューヨーク・タイムズスクエア

4月28日に予備選挙を予定していたニューヨーク州は感染拡大の中心地となり、実施を6月23日に延期した。
6月2日には10州と首都ワシントンが予備選挙を予定しているが、実現は危ぶまれている。

民主党の候補者に指名されるには、全米に割りふられた3979人の代議員の過半数の1991人を確保する必要がある。
指名争いをリードするバイデン氏は3月末の時点で1200人以上を確保する見通しだが、過半数には及ばない。

民主党全国委員会のペレス委員長は3月、これから候補者選びを予定している州に期日前投票の基準の緩和や郵送による投票で実施するよう求めている。
そしてとうとう4月になって民主党は、大統領候補を最終的に決めるため7月に予定していた全国党大会の延期に追い込まれた。
党大会は1か月遅らせ、8月17日の週に中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで開かれることになったが、本選挙に向けた準備が遅れる可能性もある。

民主党の全国党大会(2016年7月)

感染拡大は候補者にも大きな影響を与えている。 支持者を集めた集会を開くことができないため、インターネットで演説を配信したり、テレビのインタビューに答えたりして、存在感をアピールする。

バイデン氏は、長期戦をにらみ自宅に専用のスタジオを設けて、副大統領時代の経験と実績を強調する一方、トランプ大統領の対応を批判して政権交代を訴えている。
サンダース氏は、医療体制への不安が広がる今こそ持論の国民皆保険が重要だと訴えて巻き返しを図る。
だがいずれも連日、記者会見を開くトランプ大統領の露出度にはかなわない。

新型コロナウイルスの感染拡大、これと裏腹ともいえる選挙への関心の低下。
今回の危機の長期化は、大統領選挙の行方に予想以上の影響を与えるかもしれない。

石部 俊

ワシントン支局記者

石部 俊

2003年入局。
山口放送局、国際部、広州支局を経て
2018年からワシントン支局で主に国務省を担当。