2022年5月31日
ウクライナ

”神様からの贈りもの”を守るために

「この子は、結婚して15年目で初めての、大切な“神様からの贈りもの”なんです」

1歳半の男の子を抱きかかえたオレーナさん(44)はこう話しました。
彼女は、ロシア軍の激しい攻撃が続くウクライナ東部の都市ハルキウから、西部リビウに逃れてきていました。

生まれ育ったハルキウから離れたくないという思いから、ロシアによる軍事侵攻後も1か月以上ふるさとにとどまり続けたというオレーナさん。しかし、4月にリビウへ向かうことを決意しました。

オレーナさんを突き動かしたのが、一人息子ヤロスラブくんでした。

オレーナさんは、17年前の2005年に結婚。なかなか子どもができませんでしたが、諦めかけていたおととし、42歳でヤロスラブくんを授かりました。

成長とともにいろいろなものに興味を持ち始めているというヤロスラブくん。
ことし2月、つかまり立ちができるようになったといいます。

そんな中、軍事侵攻が始まりました。
頭上を飛び交う戦闘機。自宅の近くに着弾するロケット弾。
なんとかふるさとにとどまろうと、自宅近くの幼稚園に近所の人たちと身を寄せ合いましたが、日に日に危険が迫っているのを感じたといいます。

よく眠ることができなくなるなどストレスを抱えるようになったオレーナさん。
ヤロスラブくんも、幼いながらにその不安を感じ取っているかのように頻繁に泣くようになったのだそうです。

「自分のことは大丈夫なのですが、万が一、この子に何かあっては後悔してもしきれないと思いました」

取材に訪れた日、ヤロスラブくんはすっかり1人で歩けるようになっていて、避難所で元気に歩き回っていました。リビウに来てからは、ヤロスラブくんも落ち着いてきているといいます。

「ハルキウに帰れなくなるということは考えたくありません。住んでいたアパートが破壊され、住む場所が無くなっていたとしても、戦争が終わったら、生まれ育ったふるさとハルキウで、息子と夫とともに、また家族一緒に生きていきたい」

※この記事は、2022年4月28日に公開したものです

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