五輪前に感染拡大で医療現場に危機感
病床7割埋まる病院も

2021年7月19日

東京オリンピックの開幕を前に競技会場の近くにある東京・江戸川区の病院では、感染拡大に伴って6月中旬以降、入院患者が増え、病床の7割が埋まっています。病院ではオリンピック期間中のさらなる感染拡大に警戒を強めています。

東京・江戸川区の東京臨海病院では、50床のコロナ専用病棟で主に中等症の入院患者を受け入れています。

病院によりますと6月中旬の時点では病床の使用率は3割程度でしたが、それ以降、徐々に入院患者が増え始め、7月19日午前の時点で7割が埋まっているということです。

また今回の感染拡大では入院患者の年齢層にも変化があらわれていて、若い世代を含む50代以下が大半を占めるようになっているということです。

7月14日の時点では60代以上が2割以下にとどまっている一方、若い世代を含む50代以下が8割以上を占めていて、10代未満が2人、10代が1人、20代が5人、30代が4人、40代が3人、50代が8人、60代が2人、70代が3人となっています。

なかにはインドで確認された変異ウイルスの「デルタ株」の患者もいるということです。

東京臨海病院、呼吸器内科部長の山口朋禎医師はワクチン接種の割合が低い世代の入院患者が増えているとの見方を示し、「東京都の新規感染者数の増加と比例するように入院患者も増えている。若い世代の入院患者のうち酸素の投与が必要な人が増え、重症度は上がっていると思う」と話しています。

さらに、急激に症状が悪化する人もいるということで山口医師は「変異株の影響かもしれないが、肺炎の人が多い印象だ」としています。

このうち7月4日に入院した50代の女性は、入院した際に肺炎の症状があり、9日には肺に血液の塊である血栓が詰まって重症化したということです。

このため、数日間ICU=集中治療室で治療を受け容体は一時より改善しましたが、その後もコロナ専用病棟で鼻から大量の酸素を送る治療を受けています。

山口医師は「前日までなんともなくても急に呼吸が苦しくなって病状が急変するのがこの病気の怖いところだ。今後の病床がどれだけひっ迫するか不安なところで、どの医療機関も余裕のある状況ではないと思う」としています。

新型コロナと熱中症の判別が課題 似た症状多く

夏の暑さが厳しくなる時期、課題となるのが新型コロナウイルスと熱中症の症状の判別です。

東京臨海病院では発熱外来で新型コロナへの感染が疑われる人の検査や診療を行っていますが、熱中症の患者は発熱やけん怠感など似た症状が多いため医師や看護師は防護服を着るなど感染対策をして処置を行う必要があります。

また熱中症が疑われる場合、これまでは氷やぬれたタオルを体にあてたうえ、強力な扇風機で患者の体温を下げていましたが、新型コロナに感染していた場合、ウイルスを拡散させてしまうおそれがある扇風機については使うことができません。

発熱外来を担当する東京臨海病院救急科部長の佐藤秀貴医師は「扇風機は非常に汎用性が高く、マイルドに冷やせるのでスタンダードな治療として使っていたが使えなくなった。全身フル防備で対応しないといけないと思っています」

東京臨海病院のそばには、東京オリンピックの競技会場の1つ、カヌー・スラロームセンターがあり、病院では観客を入れた場合、多くの熱中症患者が搬送され診療に影響が出るおそれもあるとして、当初、対応を検討していました。

こうした中、7月8日に無感客での開催が決まったことについて医師からは「病院の負担は減るとは思う」などと評価する声が聞かれました。

一方で、競技会場に近いため関係者などが搬送される可能性は引き続きあるとみていて、オリンピックの開催期間中は熱中症が疑われる救急患者のために1部屋を確保し、備えることにしています。