尾身会長ら提言 五輪無観客望ましい
入れるなら厳しい基準で

2021年6月18日

東京オリンピック・パラリンピックに伴う新型コロナウイルスの感染拡大のリスク評価について、政府の分科会の尾身茂会長など新型コロナウイルス対策にあたる専門家の有志は「無観客開催が望ましい」としたうえで、観客を入れるのであれば、現行の大規模イベントの開催基準より厳しい基準を採用するなどとした提言をまとめ、大会組織委員会の橋本会長と西村経済再生担当大臣に提出しました。

提言では「無観客開催が最も感染拡大リスクが少なく望ましい」としたうえで、観客を入れるのであれば、現行の大規模イベントの開催基準より厳しい基準を採用し、都道府県を越えた人の流れや接触の機会を抑制するため観客は開催地の人に限り、感染拡大の予兆があれば無観客にすることなどを政府や主催者に求めています。

また感染拡大のリスクについて、ワクチン接種が順調に進んだとしても、7月から8月にかけて感染者や重症者の再増加がみられる可能性があり、感染力が強いとされる変異ウイルスの影響で感染拡大のスピードがこれまでより上がる可能性もあるとしています。

そして、大会は、規模や注目度が通常のスポーツイベントとは別格であるうえ、開催期間が夏休みやお盆と重なるため、全国各地で人の流れや接触機会の増大による感染拡大や医療ひっ迫のリスクがあるとしています。

尾身会長ら専門家は、6月18日午後6時から日本記者クラブで記者会見を開き提言の内容や提出の背景について説明する予定です。

尾身会長「リスクと工夫を書き込んだ」

政府の分科会の尾身茂会長は、東京オリンピック・パラリンピックに伴う新型コロナウイルスの感染拡大のリスク評価についての提言を西村経済再生担当大臣に提出したあと、報道陣の取材に応じました。

尾身会長は「オリンピックをやるのであれば感染が拡大し、医療がひっ迫しない方法でやってほしい。そのために専門家として、どんなリスクがあるのか、それに対してどんな工夫が考えられるのかを提言に書き込んだ。提言の内容は記者会見でじっくりと説明したい」と話しました。

橋本会長「提言踏まえ観客の上限など判断」

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本会長は、政府の分科会の尾身会長から、東京大会に伴う感染拡大のリスク評価についての見解の提出を受けたことを明らかにし「提言を踏まえどのように安全安心を実現していくのか議論したい」と述べました。

そのうえで「政府の方針のもとで運営を行っていくことが基本だ」と述べ、来週にも開催する予定の政府やIOCなど5者による会談で観客数の上限などを判断したいという考えを示しました。

政府の分科会の尾身会長は、6月18日午前9時半前、大会組織委員会が入る東京 中央区の建物に歩いて1人で入り、記者からの問いかけには応じませんでした。

このあと、橋本会長に東京大会に伴う感染拡大のリスク評価についての見解を提出しました。

橋本会長は午前10時から開催された、組織委員会の新型コロナ対策を検討する専門家会議に出席し「先ほど尾身会長からご意見をいただいた。尾身会長の提言も踏まえ、どのように安全安心を実現していくのかこの専門家会議で議論してもらいたい」と述べました。

そのうえで「政府の方針のもとで運営を行っていくことが基本であり、政府やIOCなどとの5者協議で決定したい」と述べ、来週にも開催する予定の5者による会談で東京大会の観客数の上限などを判断したいという考えを示しました。

丸川五輪相「組織委の専門家会議の議論に注目」

丸川オリンピック・パラリンピック担当大臣は、閣議のあとの記者会見で「私はまだ見ていないが、きょうの組織委員会の専門家会議の場でさまざまな議論をして頂けると伺っている。どのように組織委員会がその内容を受け止めるかを、きちんと注目していきたい。私たちができることはしっかり支えていくという姿勢だ」と述べました。

さらに、東京オリンピック・パラリンピックの観客の扱いについて、丸川担当大臣は、まん延防止等重点措置が解除された際の経過措置の上限である1万人を上回ることはないという認識を示しました。

新型コロナウイルス対策で、政府は、大規模なスポーツイベントなどを行う場合緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除されたあとは、上限を1万人とする経過措置を講じることを決めています。

菅総理大臣は6月17日、東京オリンピック・パラリンピックの観客について「人数の上限は、こうしたルールに基づくことを基本として決定されると思う」と述べました。

これに関連して、丸川担当大臣は記者会見で「5者協議で、観客数にかかる判断を6月行うことを決めており、これから議論が大詰めになる」と述べました。

そのうえで「私の認識としては、政府で決めた上限規制を上回るということはないという理解だ」と述べ、まん延防止等重点措置が解除された際の経過措置の上限である1万人を上回ることはないという認識を示しました。

田村厚労相「必要があれば対応する」

田村厚生労働大臣は、記者会見で「まだ具体的にいただいていないのでコメントをしようもないが、もしいただくようなことがあれば、参考にさせていただき、必要があれば対応する」と述べました。