帰国者 “成田で待機できず福岡へ…”
水際対策で異例の対応も

2021年12月14日

新型コロナの新たな変異ウイルスオミクロン株の水際対策として、政府は入国する日本人などに宿泊施設にとどまるよう求めています。しかしオミクロン株の感染拡大で成田空港と羽田空港の周辺施設では部屋の使用率が一時、90%を超え、一部の人には地方の空港に移動して周辺施設に泊まってもらう異例の対応が続いています。

政府はオミクロン株の感染者が確認された国や地域などに対し、入国する日本人と在留資格を持つ外国人には検疫所が指定する宿泊施設に3日間から10日間とどまるよう求めています。

政府関係者によりますと、成田空港と羽田空港の周辺施設での受け入れ人数は
▽外国人の新規入国を原則、停止した11月30日には合わせておよそ500人でしたが
▽12月6日に5200人に増加し
▽12月12日の時点で6300人に上っています。

確保している部屋の使用率は
▽12月6日には90%を超え
その後、受け入れ施設を増やして60%程度に下がりましたが再び増加に転じ
▽12月12日の時点で60%台後半となっています。

海外でオミクロン株の感染が急速に拡大していることから、厚生労働省は部屋の使用率がさらに上昇する可能性があるとみて、入国した人の一部には中部空港や関西空港、福岡空港などに移動したうえで周辺の宿泊施設に待機してもらう対応をとっています。

以前も地方の空港に一時的に移送したケースはあるものの、今回のように大規模に行うのは異例です。

入国する人の数は今週末にピークを迎えクリスマスの前後までは高止まりした状態が続く見通しで、厚生労働省が受け入れ先の確保を進めています。

成田到着 “突然福岡での待機伝えられる”

アメリカから帰国した男性は成田空港から国が指定する福岡県のホテルに移動し3日間、待機の生活を送りました。男性はNHKの取材に対し「空港で突然行き先を伝えられて不安が大きかった」と当時の心境を話しました。

アメリカの製薬会社で働く苅田譲さん(28)は12月7日の午後3時すぎ、カリフォルニア州から帰国し成田空港に到着しました。

カリフォルニア州から入国する際は国が指定する施設で3日間待機をする必要がありますが、係員から福岡のホテルで待機すると伝えられたということです。

午後7時ごろに成田空港から国のチャーター機に乗り込んで福岡空港に着いたあと用意されたバスで移動し、福岡市内のホテルに到着したのは午後11時を過ぎていました。

成田からのチャーター機には30人から40人ほどが乗っていて、バスに乗り込む際などもほかの乗客と接触しないよう動線が分かれていたということです。

福岡市のホテルでは外出しないよう伝えられ、12月10日まで3日間待機しました。

その後、飛行機で再び成田空港に戻り、今は東京都内の知人の家で待機しています。

ホテルでは洗剤など日用品が手に入りにくいこともありましたが毎食、弁当が無料で提供され部屋の前に置かれるなどしていたため、生活に特に不便はなかったといいます。

苅田さんは当時を振り返り「まさか福岡まで行くと思っていなかったので動揺しました。空港で突然行き先を伝えられて不安が大きかったです。事前に自分がどう動くかを知っているだけで心の準備ができるので、難しいとは思うが政府と航空会社が連携してスケジュールを事前に送るなどある程度の情報がほしいと感じました」と話していました。

“ジョークか” “落ち込む” SNSに相次ぎ投稿

SNSでは成田空港に帰国したあと仙台や中部など関東以外の空港に移動し、ホテルに待機したという投稿が相次いでいます。

このうち仙台のホテルに移動したという人は当初、ホテルが仙台になると聞いたときジョークだと思って周りが爆笑したという話を紹介しています。

中部空港に移動しホテルに待機したという女性は、深夜の午前1時にホテルに着いたとしたうえで「部屋から出られずに気持ちが落ち込む」と不安の声を上げていました。

また成田から関西空港に移動したという女性も深夜の午前0時半にホテルに着いたということで、4歳の娘と一緒の移動への戸惑いを書き込んでいました。

現状と課題

指定した国や地域から入国した人の待機施設は、主に国がホテルなど民間の宿泊施設を借りることで確保を進めています。

厚生労働省などによりますと、待機施設は
▽入国者をすぐに移動させるため空港の近くにあることや
▽感染対策を徹底するため部屋単位ではなく施設全体を借り上げることなどが必要で
数が限られるということです。

このため国は、民間の宿泊施設だけでなく
▽都道府県が確保する陽性者向けの宿泊療養施設を一時的に借り受けるほか
▽各省庁が所管する研修機関の宿泊施設を使用するなど
追加の対応を進めています。

一方、待機施設には食事や清掃の手配といった運営面に携わる人員も必要となり、施設の確保とともに限られた人員でどう対応するかも課題となっています。

厚労相「ご不便をおかけすることは承知 ぜひご理解を」

後藤厚生労働大臣は閣議のあとの記者会見で「今、1万3000室の施設を準備しており先週末からでも2000室の増加になっている。引き続き地方自治体とも連携し、しっかりと必要な施設の確保に取り組んでいきたい」と述べました。

また余裕がある別の空港周辺の施設に移動してもらう対応について「水際措置の強化や世界的な感染拡大によって施設の利用者が増えており、増加傾向も予想される中で平準化を図るための措置だ。ご不便をおかけすることは承知しているが、ぜひご理解、ご協力をいただきたい」と述べました。