新型コロナウイルス患者の全数把握
見直す方針の4県が課題共有

2022年8月30日

新型コロナウイルスの患者の全数把握について、見直すことを決めた宮城県の村井知事が同じく見直す方針を示している3つの県の知事とオンラインで会談し、9月2日の適用開始に向けて、発生届の対象とならない重症化リスクが低い患者のフォロー体制など運用面の課題を共有しました。

新型コロナ感染者の全数把握について国が緊急の措置として都道府県の判断で患者の「発生届」を高齢者など重症化リスクのある人に限定できるよう見直したことを受けて、宮城県は見直しを国に申請しています。

8月30日は、同じように見直しを決めた鳥取県、茨城県、佐賀県の知事とオンラインで会議を開き、課題などについて意見を交わし、見直しの適用が当初の8月31日から9月2日に変更されたことが共有されました。

また、発生届の対象とならない重症化リスクの低い患者のフォロー体制などについて議論され、村井知事が「現行の仕組みでは、医療保険の請求ができなくなるため感染者の間で不公平が生じないようにする必要がある」と述べました。

そのうえで、国に対して新たなシステムの運用についての具体的な説明や医療保険の請求などに必要な療養証明の在り方などについて4県で求めていくことを確認しました。

宮城県 村井知事 “4県の取り組みが他の県にとっての前例に”

会議のあと、村井知事が取材に応じ、「4県の取り組みが他の県にとっての前例になると思う。やり方を変える時期なので多少の混乱はあるが、少しでもわかりやすく県民に伝えていきたい」と話していました。

鳥取県 平井知事 “見直しで重症者救えなくならないと自信”

会議のあと、鳥取県の平井知事は「全国でいちばん感染者数が少ない鳥取県でさえ、深夜まで医師が発生届の入力を行っているところもある。困惑している医療従事者が今回の問題の本当の主人公だ。見直しによって重症者が救えなくなるのか。絶対にならないと自信を持っている」と述べ、全数把握を見直すことで、医療機関や保健所の負担を軽減できると強調しました。

佐賀県 山口知事 “国の先導役として力を尽くしたい”

佐賀県の山口知事は会談後「ふたを開けてみたら全数把握を見直すのが4県だけで少し違和感を感じたが、われわれがいいシステムを作って国のコロナ対策の先導役として力を尽くしていきたい」と述べました。

三重県 一見知事“全数把握見直し 9月2日にも国に届け出”

三重県の一見知事は、8月30日の記者会見で「医療関係者の負担を少しでも減らしたい」と述べて、全数把握を見直して従来行ってきた報告を緩和する方針を改めて示しました。

そのうえで、見直しにより救急現場や診療所の負担が増えることがないよう検討を重ね、9月2日にも国に対して必要な届け出を行いたいという考えを明らかにしました。

広島県 湯崎知事 “全数把握の見直しは行わず”

新型コロナウイルスの患者の全数把握の見直しをめぐって、広島県の湯崎知事は記者会見で、「先日、慎重に判断したいと申し上げたが、国の説明では医療費の公費負担や療養証明書の取り扱いなど具体的な対応が示されておらず、示される必要がある」と指摘しました。

そのうえで「このまま適用すれば医療機関や県民に混乱を招きかねないと考えている」と述べ、全数把握の見直しは行わないことを表明しました。

そして、湯崎知事は県内の医療提供体制は引き続きひっ迫し非常事態だとして、「症状のある人が医療機関にかかれない可能性があるので、無症状で陰性確認を目的にした受診を控えてほしい。自己検査で陽性の人は陽性者登録センターを利用してほしい」と呼びかけました。

山口県 村岡知事 全数把握を続ける考え

新型コロナウイルスの患者の全数把握の見直しをめぐり、山口県の村岡知事は8月30日会見を開き、「国が示すように患者の発生届を限定すると対象外の方の把握ができなくなり、症状が急変した際の入院の調整や、生活支援のサービスの提供に支障が生じることが懸念される」と指摘しました。

そのうえで、発生届を限定するには、感染者がみずから保健所に届け出るなど緊急時に備えて個人を特定できる新たな仕組みづくりが必要だとして、当面は、現在行われている全数把握を続ける考えを明らかにしました。

また当初、自治体の判断としていた全数把握の見直しを国が9月中旬にも全国一律で見直すと表明したことについて村岡知事は、「あとで一律に導入されるなら先走って何かするのは混乱のもとで、必要な情報をまとめて出してもらえれば混乱も少なくなる」と苦言を呈しました。

加藤厚労相“全国一律で導入の時期は知事の意見も聞き判断”

新型コロナ感染者の全数把握の見直しを申請したのが4つの県のみだったことについて加藤厚生労働大臣は、地域で事情は異なり、まだ検討中のところもあるとして全国一律で導入する時期は各知事の意見も聞いて判断する考えを示しました。

新型コロナ感染者の全数把握をめぐって、政府は、都道府県の判断で、詳しい報告の対象を高齢者など重症化リスクが高い人に限定できる措置を導入しましたが、締め切りの8月29日までに見直しを申請したのは、宮城県、茨城県、鳥取県、佐賀県の4県のみでした。

加藤厚生労働大臣は、閣議のあとの記者会見で「それぞれの都道府県で事情は違う。まだ検討しているところもあり、今回は準備が整って対応できるところが手を挙げたと認識している。届け出があった4つの自治体は9月2日から適用する」と述べました。

そのうえで「感染状況の推移を見たうえで、ウィズコロナに向けた新たな段階として全国一律のシステムへの移行を図っていきたい。都道府県知事の発言はまちまちなので、出てきた声をしっかり踏まえながら対応していきたい」と述べました。