コロナ感染急拡大 オンライン診療需要高まる
利便性一方限界も

2022年8月22日

新型コロナウイルスの感染の急拡大が続く中、スマートフォンなどを利用したオンライン診療の需要も高まっています。医療機関に行かなくても診察を受けられ利便性が高い一方、オンラインでできる診療には限界もあり、専門家は「患者側も限界を認識したうえで医師と丁寧なコミュニケーションを取って活用してほしい」と話しています。

オンライン診療アプリ利用 過去最多に

東京 港区の企業は、6年前からオンラインで診療や服薬指導を受けられるアプリ「CLINICS」を提供しています。

アプリは、患者がスマートフォンなどで医療機関を検索して日時を選択し、診察を予約できる仕組みで、当日はオンラインで診察を受けたうえで医療費の支払いや薬の処方までオンライン上で行うことができます。

平成28年にサービスの提供を始めた直後は利用が伸び悩んでいましたが、新型コロナの感染拡大後、オンライン診療が初診から認められるなど、要件が緩和されたことを受けて利用が増え、第7波に入った7月の1か月ではコロナの感染拡大前と比べて、7倍以上に伸びて過去最多となったということです。

アプリを運営する企業「メドレー」の田中大介クリニクス事業部長は「新型コロナをきっかけに一気に認知が広がり、感染状況に比例して利用も増えています。医師が患者と対面しづらい中で、自宅療養者に医療を届けられるというニーズが高いのだと感じます」と話しています。

オンライン診療医師「対面との適切な使い分け重要」

都内のクリニックでは、新型コロナに感染した患者や、慢性的な病気などで通院する患者へのオンライン診療の利用が進んでいて、医師は「すべての診療をオンラインで賄うことはできないので、対面での診療との適切な使い分けが重要だ」と指摘しています。

東京 千代田区で発熱外来を行う「九段下駅前ココクリニック」は、一日50人以上の患者のうち5人ほどをオンラインで診察しています。

オンラインで診察する患者には、発熱などコロナとみられる症状があるケースや、無料のPCR検査所などで陽性と確認され登録を依頼するケースのほか、感染への不安で通常の診療からオンラインに切り替えたケースなどが多いということです。

8月19日も、都内に住む25歳の男性がのどの痛みがあると訴えて、オンラインでの診察を希望しました。

医師は、診察で体調やワクチンの接種履歴などを確認したうえで、PCR検査を受けるよう説明し、のどの痛みを抑える薬などを処方していました。

医師は、オンラインの活用で素早くきめ細かい診療ができるようになった一方、触診が必要なケースなどオンラインだけですべての診療はできないので、対面での診療との適切な使い分けが重要だと指摘しています。

クリニックの石井聡院長は「この2年間でオンライン診療は日常的に使う当たり前のものとして定着してきています。ただ、おなかが痛い患者におなかに触れもしないで診断や処方を行えないように、オンライン診療では診ること自体が難しいケースもあるので、すみ分けを意識しながら進めていければ有用だと思う」と話しています。

専門家「限界を十分認識して有効活用を」

オンライン診療を研究している「ニッセイ基礎研究所」の三原岳主任研究員は「オンライン診療は、自宅療養で外出できない患者や院内感染が心配で病院に行けない患者などにも対応できて、医者と患者のコミュニケーションを密にできるので非常に便利で、新型コロナの収束後も一定程度広がるだろう」と指摘しています。

そのうえで「触診や血圧の検査、採血ができないなど情報が取りにくい面もあり、重要なリスクや疾患の可能性を見逃すおそれは否定できない。だからこそ医師はもちろん、患者側もオンライン診療の限界を十分認識したうえで現在の状態を丁寧に医師に説明するなど、円滑なコミュニケーションを行って有効に活用してほしい」と話しています。