コロナ 保健所は第2波の時より負担増
目立つ感染は「会食」で

2020年12月8日

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、保健所でも第2波の時に比べ陽性者の入院調整などに時間がかかるケースが増え、負担が増しています。都内の保健所では2000人を超える陽性者からの聞き取りで目立つのが「会食」のリスクだとして、改めて注意を呼びかけています。

東京 大田区の保健所のケース

東京 大田区では、11月、陽性者がこれまでで最も多い545人に上り、保健所は応援の職員を含む100人を超える態勢で対応にあたっていますが、負担は大きいといいます。

大田区保健所では、午前中は主に入院調整と療養中の陽性者の健康観察を行います。入院調整を午前中から行うのには理由があります。第2波の時に比べ、病床の確保が難しくなっているのです。

入院調整は原則、東京都が行うことになっていますが、時間がかかるケースがあるため、症状が急変するリスクの高い高齢者などについては、保健所が直接、受け入れが可能な病院を探しています。

病院の業務に比較的余裕がある午前中をねらって保健師が電話をかけますが、感染が拡大する中で断られるケースも少なくないということです。

入院調整の対応にあたっていた保健師は「病院からは、入院を希望する人に優先順位をつけてほしいとか、どうしても入院でなければダメなのかと言われる。医療機関も体制がひっ迫していることが伝わってきます」と話していました。

また、陽性者を病院まで運ぶ手段も保健所で手配しているため、この日は昼すぎまでタクシー会社などに電話をかけていました。

その合間にホテルや自宅で療養している陽性者の健康観察を行い、1人ずつ電話をかけて、症状の悪化がした人については入院の手続きをとっていました。

午後になると、その日に陽性と判明した人の「発生届」が病院などからFAXやメールで届きます。

保健師はこの「発生届」をもとに本人に電話で連絡を取り、症状や基礎疾患の有無、家族や勤務先の情報、それに発症日までの2週間、どこで何をして誰と会ったかなど、行動歴を詳しく聞き取ります。そのうえで、入院の必要性や誰が濃厚接触者にあたるかを判断します。

濃厚接触者がいる場合には、それぞれ電話で経緯を説明し、検査を勧めるとともに、2週間の自宅待機を求めていました。

大田区保健所によりますと、第2波の時に比べて陽性者1人当たりの濃厚接触者が多くなっていて、背景には経済活動や人の動きが活発になっていることがあると考えているということです。

調査にかかる時間も大幅に増え、1人の調査を終えるまでに半日以上かかるケースもあるということです。

新規陽性者の聞き取りや入院調整を担当していた保健師は「濃厚接触者が増えている要因の1つとして、経済活動が再開し人が動いていることもあると思います。これから感染者数がどうなるのか、先が見えない不安で、肉体的にも精神的にも疲弊しています」と話していました。

「会食が原因で感染し 家庭内にウイルス」

一方、大田区保健所では、これまでに2000人を超える陽性者から感染した状況などを聞き取っていますが、目立つのは「会食」のリスクだといいます。

最近では、区内にある企業の社員食堂で5人が昼食をとり、このうち3人が感染したケースや、屋外のバーベキュー施設で宴会をした9人のうち2人が感染したケースがあったということです。

大田区保健所は「経路不明を除けば感染経路は家庭内感染が多いと言われているが、そのもとをただすと、会食が原因で感染し、家庭内にウイルスを持ち込んでいる例も少なくないと考えている」としています。

年末を控え、これからお酒を飲む機会も増えることから、十分注意するよう呼びかけています。

大田区保健所感染症対策課の高橋千香課長は「調査の中では、飲食店に30人ほどが集まり会食した結果、そのうちの3分の1ほどに感染が広がったケースもあった。陽性者の飛まつを吸い込むことで感染するリスクが高いので、この年末年始は忘年会などはできるかぎり自粛してほしい」と話していました。

濃厚接触者が出張で九州に

大田区保健所に密着して1日取材する中では、次のようなケースがありました。

企業の従業員の感染が確認され、濃厚接触者と判断された7人に連絡を取っていると、そのうちの1人の男性が出張で九州にいることが分かりました。

男性は、1時間後には帰りの飛行機に乗る予定になっていたため、保健師が急きょ飛行機をキャンセルしてもらい、近くのホテルなどで待機するよう求めていました。

シェアハウスで4人感染

また、区内のシェアハウスでは男女4人の感染が確認されました。

これまでの聞き取りの中では、共用のスペースで食事をとっていたことが分かり、この場で感染したおそれもあるということです。

外国人への対応

陽性者が増える中、それぞれの事情に合わせて対応を行うのも苦労するといいます。

感染が確認されたネパール人の女性は、日本語をほとんど話すことができません。

このため、日本語を少し話せる娘を通じて、入院先の情報を伝えてもらっていました。

また、宗教上の理由で肉が食べられないという外国人の陽性者からの依頼を受けて、肉を使わない食事を用意できるか病院に確認し、受け入れについて了承を得た場面もありました。

家族に障害者が

障害のある10代の娘と暮らす女性の入院手続きでは、女性から「娘も受け入れてほしい」と要望がありましたが、病院に確認したところ、陰性の場合は受け入れられないとして、誰かに預けるなどの対応をとってもらう必要が出てきました。

このため女性に再び電話をして、親族に預かってもらえないか確認するよう求めていました。