コロナ第7波 “死亡者の多くは肺炎以外
容体の傾向が変化”

2022年9月11日

新型コロナウイルスの第7波では、感染者数の減少傾向が続く一方で、死亡する人の数は連日200人を超えるなど、依然として多い状況が続いています。
一方で医療現場からは、コロナによる肺炎が悪化して重症化するケースが多かった第5波までとは異なり、基礎疾患や全身状態が悪化して亡くなる高齢の患者が多く、死亡に至る患者の容体の傾向が変化しているとする指摘が相次いでいて、感染症の専門医は「コロナの治療に対応するだけでなく、病状のこまやかな見極めを行うなど総合的な診療への対応が必要だ」としています。

中等症を中心に新型コロナの患者を受け入れてきた東京・北区の「東京北医療センター」では、現在の入院患者のほとんどは軽症と中等症だということです。

病院によりますと、2022年に入ってから亡くなった患者は19人で、コロナによる肺炎で死亡した人はいなかったということです。

19人のうち、7月以降の第7波で亡くなったのは4人で、このうち基礎疾患があった80代の男性は入院後にコロナによる症状は回復したものの、その後敗血症を発症し、全身の状態が悪化して亡くなりました。

第5波までは肺炎が重症化して亡くなるケースがほとんどでしたが、第7波では、高齢の患者が感染をきっかけに持病が悪化したり、全身が衰弱したりして亡くなるケースが大半だということです。

東京北医療センターの宮崎国久医師は「2021年までは中等症の患者が一定の割合で重症化していたが、現在はほとんどが軽症と中等症となっている。ただ、感染の数が増えすぎると、いくら軽症といっても亡くなる方は間違いなく増えるので、全体でワクチン接種を進めることが重要だ」と話しています。

専門家「今後は介護やリハビリ含めた総合的な診療が必要」

一方、重症患者の命を救うための治療に当たってきた医療機関でも、こうした傾向の変化は顕著に表れています。

埼玉県川越市にある「埼玉医科大学総合医療センター」では、第5波では人工呼吸器が必要な患者が最も多い時で8人いましたが、第6波と第7波では最も多い時でもそれぞれ1人ずつと大幅に減ったということです。

また、第5波では肺炎が重症化した40代や50代の患者に人工呼吸器の使用や抗ウイルス薬「レムデシビル」の投与などの治療を行うケースも目立ちましたが、現在は高齢の患者が中心で、大半が軽症や中等症だということです。

一方、新型コロナの重症度としては「軽症」「中等症」であっても、こうした高齢の患者は基礎疾患の悪化や体力の衰えで別の感染症に感染するケースも多いということです。

埼玉医科大学総合医療センター感染症科の岡秀昭教授は「第5波までは治療しだいで助けられるというケースがあったが、現在はいくら手を尽くしても寿命が尽きるように亡くなる方が多い」と話しています。

また、こうした傾向の変化を踏まえた課題について、岡教授は「高齢者はコロナによる高熱で体に大きなストレスがかかり基礎疾患が悪化するケースがあるので、病状のこまやかな見極めが重要になってくる。これまでは主にコロナの治療にだけ対応していればよかったが、今後は縦割りの専門分野に細分化した医療ではなく、介護やリハビリも含めた総合的な診療への対応が必要だ」と指摘しています。

新型コロナ “第6波”以降 中等症からの死亡が増加 90%近くに

2022年初めからの新型コロナウイルスの第6波以降、コロナの症状が中等症で亡くなる人の割合が増えたことが、国立国際医療研究センターが全国の患者のデータを分析した結果、分かりました。
ワクチン接種が進むなどして重症化する患者の割合が減った一方、持病のある人がコロナ感染をきっかけに全身状態が悪化して亡くなるケースが多くなっているとしています。

国立国際医療研究センターは、8月下旬までに全国各地の医療機関に入院した7万人余りのうち、亡くなった2861人の経過を分析しました。

その結果、コロナによる肺炎が悪化し人工呼吸器が必要になるなど重症だったのは、2021年夏の第5波では亡くなった患者のうちの42%だったのが、2022年初めからの第6波では13%と減少していました。

さらに、2022年夏の第7波では分析を行った時点で亡くなった人は少なかったものの、重症だった人は5%でした。

一方で、中等症だったのは第5波では57%だったのに対し、第6波で83%、第7波で89%と増加していてワクチン接種が進んだことなどで重症の肺炎になる患者が減った一方、コロナ感染をきっかけに持病が悪化して亡くなる患者が多くなっているとしています。

分析した大曲貴夫国際感染症センター長は「中等症でも、特に持病のある高齢者は、臓器の働きが悪くなって衰弱し亡くなる人が目立つ。『コロナは死ぬような怖い病気ではなくなった』という意見もあるが、現場ではコロナにかからなければ亡くなることはなかったというケースばかりだ。なるべくかからないよう対策し、ワクチン接種で重症化を回避することを続ける必要がある」と話しています。