コロナ感染で自宅療養
過去最多143万人余 酸素が必要な患者は

2022年8月9日

新型コロナウイルスに感染し自宅で療養している患者は8月3日の時点で過去最多の143万人余りに上っていて、医療機関の病床がひっ迫しているため呼吸の苦しさを解消するために「酸素濃縮装置」を使いながら自宅で療養する患者も増えています。

東京都内に住む山地りり子さん(63)は7月末以降、同居する家族4人全員が新型コロナウイルスに感染しました。

このうち、91歳の義理の母親は、7月30日に発熱などの症状が出ましたが、週末だったため検査を受けるのに時間がかかり、翌週にPCR検査を受けて8月2日に陽性と確認されました。

この間、37度から38度ほどの発熱が3日間ほど続き、呼吸が苦しい状態で食事や水分も思うようにとれない状態だったということです。

8月3日に医師が自宅を訪問したところ、母親の血液中の酸素の値は83%ほどに下がっていて入院が必要な状態でしたが、病床がひっ迫しているため自宅で酸素濃縮装置を使って療養することになりました。

ただ、医師が業者に確認したところ、需要が高まっているためすぐに手配するのが難しいと言われたということで、数件の業者に連絡をとってその日の夕方に装置が届いたということです。

母親は、酸素濃縮装置を利用して次の日まで自宅で過ごしたあと、都内の病院に入院しました。

山地りり子さんは「医師から酸素を探すのに業者を3件4件あたって、ようやく見つかったと聞いて本当にありがたかったです。母は酸素を投与してから数時間で呼吸が楽になっていたので、酸素がなけれれば夜中に救急車を呼ぶなどもっと深刻な事態になっていたかもしれない」と話しています。

診察にあたったクリニックの関谷幸世医師は「高齢者にとっては低酸素状態そのものが命に関わる状況になりえます。生命線とも言える酸素濃縮装置が届けられないと自宅療養が成り立たなくなり、危険な状況になると予想されるので懸念しています」と話しています。

「酸素濃縮装置」メーカーへの出荷要請相次ぐ

新型コロナに感染し、自宅で療養する患者が過去最多に上る中、在宅で酸素吸入をする「酸素濃縮装置」の需要が高まり、生産するメーカーへの出荷の要請が相次いでいます。

「酸素濃縮装置」は、周囲の空気を取り込んで濃縮した酸素を、患者が吸入できるようにする装置で、新型コロナに感染し血中の酸素濃度が低下した人に医師の管理のもとで使用されています。

東京都は、医療機関ひっ迫のため入院できずに在宅で療養するコロナ患者のために酸素濃縮装置を1000台確保しています。

7月中旬以降、訪問診療を行う医療機関などから貸し出しの要請が連日入っていて現在、半分の500台ほどが貸し出されているということです。

東京都を含む各地の自治体と酸素濃縮装置のリース契約をしている医療機器メーカーでも、8月に入って出荷の要請が相次いでいます。

酸素濃縮装置の工場では、ラインをすべて稼働させて製造にあたっているほか、使用されて消毒を終えた装置のメンテナンスなど、再び出荷するための準備が進められていました。

このメーカーでは7月以降、ストックしていた酸素濃縮装置1000台余りを全国の保健所などに出荷しているということです。

自治体からは、追加の注文も入ってきているということで、今後、需要が高まれば、現在より最大で20%増産することも検討する方針です。

「エア・ウォーター」の小林靖司執行役員は「現在はまだ在庫があり増産も可能な状況だが、第7波がどこまで続くか見えない。感染者が増え続けることになれば、数週間後には供給がタイトになることもありえる。必要とする人に装置を届けられるように増産にも対応できるよう備えたい」と話していました。