大阪 厳しい医療提供体制
施設への往診などの対応に追われる

2022年2月14日

感染拡大が続く大阪府内では、新型コロナの医療提供体制が非常に厳しい状況となっています。医療現場ではクラスターが発生した高齢者施設を往診して治療薬を投与するなどの対応に追われ、本来、入院が必要な人も入院が難しい事態になっているという指摘が出ています。

新型コロナの感染拡大で大阪府内では2月14日の時点で実際に埋まっている、軽症・中等症病床の運用率が107.1%となるなど、新型コロナの医療提供体制が非常に厳しい状況になっています。

こうした中、大阪府は重症化のリスクが高い高齢者を早期に治療するため、医療機関に対して、クラスターが発生するなどした高齢者施設への往診を求め、およそ40の医療機関が応じているということです。

このうち、大阪 守口市の関西医科大学総合医療センターでは、1月下旬から高齢者施設への往診を始めました。

施設に入所する高齢者は、高齢で抵抗力が弱かったり、基礎疾患があったりして、重症化のリスクが高く、往診では、軽症・中等症の患者向けの治療薬「ソトロビマブ」の投与などの治療を行っています。

この治療薬は発症から早期に投与すれば、重症化を予防できると期待され、センターによりますと、これまでに施設に入所している200人余りの感染者に治療薬を投与し、多くの場合、重症化を防げているということです。

2月10日も、センターの医師が4つの施設の往診を行い、4人の高齢者に治療薬を投与しました。

一方で、高齢者施設では新型コロナへの感染をきっかけに体調を崩し、本来、入院が必要なほど、容体が悪くなっても、病院の病床の空きがなく、入院できない人もいるということです。

この日、訪れた施設では、入所者41人のうち、33人の感染が確認され、ソトロビマブの投与後も容体が安定しない入所者2人に対して、抗生剤の投与といった治療を行いました。しかし、このうち80代の男性が往診の翌日、亡くなったということです。

この施設の関係者は「こちらでも見守ることしかできないので、崩壊的な状況だ」と話していました。

往診を行っている、関西医科大学総合医療センターの中森靖副病院長は、今の府内の新型コロナの医療提供体制はすでに「限界」で、本来、入院が必要な人でも入院するのが難しい事態になっていると指摘したうえで「高齢者の入るところがないため、施設内で症状が悪化していき、通常なら助かる命が助からないという現象が起こってくる。往診すれば確実に、効果が上がると思うので、高齢者施設に往診して早期の治療を行う取り組みを広げる必要がある」と訴えています。

高齢者施設でのクラスター発生相次ぐ

感染の急拡大で大阪府内では高齢者施設のクラスターが相次いでいます。

大阪府によりますと、第6波で府内で確認された高齢者施設のクラスターは13日の時点で108件にのぼり、すでに第5波で確認された51件を大幅に超えています。

高齢者施設で多くのクラスターが発生していることをうけて、府は施設の入所者に迅速な治療を提供し重症化を防ごうと、府内の医療機関に対し、施設への往診を行うよう求め、2月9日の時点で39の医療機関が要請に応じているということです。

大阪府は往診をした場合、独自の支援金を支給することにしていて「施設でのクラスターが相次いで発生しているので、数多くの医療機関に手を上げてほしい」と話しています。