2021年8月13日
新型コロナウイルスの感染が爆発的に増加し、医療のひっ迫が深刻化しています。 危機的な状況を回避する必要があるとして、政府の分科会は、この2週間、東京都などで人出を7月前半に比べて5割減らすことなど、強い対策を求める提言を出しました。分科会はなぜ「5割削減」としたのか。科学文化部の水野雄太記者が解説します。
「5割削減」の意味は、“5月の減り方と同程度”
分科会が「人出を5割減らす」ことを求めたのには、とにかく急激に接触の機会を減らし、一刻も早く感染を減らす必要がある、ということがあります。
このグラフは、東京の主な繁華街の人出の推移を、時間帯別に示したグラフです。
この中の紫色の折れ線は、夜8時から10時の人出の推移です。
今回の緊急事態宣言が出た7月前半と、今の時点を比べると、25%しか減っていません。これではもう感染は減らない状態だということです。
分科会は、緊急事態宣言前の5割減らさないといけないとしています。これがどれくらいかというと、前回、4月に出された宣言のあと、最も大きく下がった5月上旬並みの人出まで減らすことを求めています。
当時は大型連休の期間で大きく人出が減って、その後、5月中旬には1週間平均の感染者数も減少に転じました。
今回もこの2週間で人出を5割減らし、なんとか感染を減少の方向に転じさせたいとしています。
コロナ以外の急病やけがも治療受けられないおそれ
いま、分科会の専門家は「救える命が救えなくなるような状況になりつつある」という、非常に差し迫った危機感をもっています。
全国でも、当初は少ないと言われていた重症者が、過去最多に迫っていて、40代や50代、それよりさらに若い世代で亡くなる人も出てきています。
首都圏、沖縄などでは自宅待機者が急激に増えて、治療を受けられないまま自宅で亡くなる人も実際に出てきています。
さらに、コロナに感染していなくても、急病になったり事故でけがをしたりしても、治療が受けられないおそれがあります。
東京で重症患者の治療にあたってきた、国立国際医療研究センターの森岡慎一郎医師は「いままでにないぐらい、そもそも入院ができない可能性が高いと思います。コロナになってしまって入院できたとしても、医療機器不足や医療者の不足から、十分な医療が受けられない可能性が出てきています」と話しています。
「混んでいる場所に行く機会を半分に」
自分や家族を守るために、何をすべきか。とにかく「人との接触を可能な限り減らす」ということです。
感染力の強いデルタ株が主流になって、学習塾や“デパ地下”といった、これまでなかったようなところでも感染が起きています。
お盆休みが始まっていますが、この期間に、県境を越える移動をしないだけでなく、できる限り外に出る機会を減らすことが必要になります。
分科会の尾身会長は「混んでいる場所に行く機会を半分に」と呼びかけています。
いま、まさに「災害のような」段階に
ずっと対策が続いて「いつまで我慢すればいいんだ」と納得できない思いを持つ人も非常に多いと思います。
しかし、爆発的な感染拡大で、すでにいま、誰にとっても、自分や周りの家族の身を守るためにも感染対策をとらないといけない、まさに「災害のような」段階に入ったと、専門家は警告しています。