コロナ “中等症以上の人は原則入院”
政府が方針を明確化

2021年8月6日

新型コロナウイルスの感染者の入院をめぐり、政府は、中等症以上の人は原則入院とするという方針を明確化しました。

新型コロナウイルス対策をめぐり、政府は8月3日、入院について、重症患者や特に重症化リスクの高い人に重点化し、それ以外の人は自宅療養を基本として、健康観察を強化するなどとした方針を、全国の自治体に通知しました。

新型コロナウイルスの患者の症状は4段階に分類されていて、
▼せきや倦怠感があっても肺炎の所見がない人は「軽症」、
▼呼吸困難や肺炎の所見がある人などは「中等症1」、
▼血液中の酸素飽和度が93%以下か、酸素の投与が必要な人は「中等症2」、
▼集中治療室に入るか、人工呼吸器が必要な人は「重症」と分類されています。

先の通知では、与野党から、中等症患者の入院基準があいまいで医療現場に混乱をきたすのではないかなどとして、丁寧な説明を求める意見や撤回を求める意見などが出されました。

このため厚生労働省は、丁寧に理解を求める必要があるとして、これまでの説明資料を見直しました。

この中では、入院について、重症患者のほか、中等症患者で酸素投与が必要な人や、投与が必要でなくても重症化リスクがある人に重点化すると具体的に示し、中等症以上の人は原則入院とするという方針を明確化しました。

そして、最終的には医師が判断するとしています。

対象については、東京をはじめとした感染者が急増している地域としていて、症状に応じて必要な医療が受けられるようにするための緊急的な対応だと強調しています。

一方、入院させる必要がある患者以外は、自宅療養を基本とするとした方針は変更せず、自宅や宿泊施設で療養する人の症状が悪化した場合に、速やかに入院できるよう、一定の病床を確保していくと説明しています。

政府は、自宅療養の患者についても、血液中の酸素飽和度を測る「パルスオキシメーター」や電話などで状態をこまめに把握し、症状が悪化すれば、すぐに入院できる体制を確保するとしています。

中等症患者受け入れの病院 満床の状態続き 対応追いつかず

新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、中等症の患者を受け入れている東京都内の病院では、専用の病床が満床の状態が続いていて、患者の増加で対応が追いつかないとしています。

さらに、重症化した患者の転院先を確保することが難しくなっていて、病院では危機感を強めています。

東京 板橋区の「板橋中央総合病院」は新型コロナウイルスの中等症の患者を受け入れています。

専用の病床を18床確保していますが、1週間ほど前から満床の状態が続いていて、ベッドが空いても数時間ですぐに埋まってしまうといいます。

このため専用の病床を今後さらに9床増やして対応にあたる予定ですが、新型コロナウイルスの感染の急拡大が続く中、患者の増加で対応が追いつかないとしています。

さらに入院後に重症化した患者の転院先を確保することが難しくなっています。

感染が急拡大する前は重症化した場合、その日のうちに高度な治療が受けられる病院に転院することができました。

しかし、重症者が増加する中で、専用の病床の空きがないことなどから受け入れ先が見つからず、重症化してから転院まで2日間かかったケースもあったということです。

重症化すれば容体が急変するおそれがあるため患者の症状を常に確認する必要があり、人工呼吸器の管理など対応する医療、スタッフの数を増やす必要があるうえ、医師や看護師の精神的な負担も大きいといいます。

また、自宅で療養していて症状が急に悪化し救急搬送されるケースが相次ぎ、この病院でも受け入れが増えています。

このうち、40代の男性は8月1日、夜に息苦しさを訴えて救急搬送され、高濃度の酸素の吸入が必要な状態でした。

病院によりますと、救急隊員は男性が医療機関に受け入れをおよそ100件断られたと話していたということです。

このほかにも、7月下旬には70代の女性がおよそ30件、別の40代の男性がおよそ50件、医療機関に受け入れを断られ、救急搬送されてきたということです。

病院「すでに手術や検査で延期などの影響」

板橋中央総合病院の友田義崇医師は「医療スタッフの数や病院施設の設備にも限界があるため、新型コロナウイルスの患者を受け入れたいけど受け入れられない。これ以上患者が増えると通常の診療や救急搬送の受け入れを制限せざるをえず、すでに手術や検査で延期などの影響が出ている。状況がさらに深刻化して重症化した患者を転院させることができなくなったときに、どのように対応すればいいのかがいちばんの懸念だ」と話していました。