東京に4回目の「緊急事態宣言」分科会が了承
対策本部で決定へ

2021年7月8日

新型コロナウイルスの感染の再拡大が続く東京都について、専門家でつくる分科会は、7月12日から8月22日まで、4回目の緊急事態宣言を出すことを了承しました。政府は、夕方の対策本部で決定することにしていて、菅総理大臣が今夜記者会見して、宣言を出す理由などを説明し、国民に協力を呼びかけることにしています。

沖縄県を対象にした緊急事態宣言と、東京や大阪など10の都道府県に適用されているまん延防止等重点措置の期限を3日後に控え、7月8日午前、感染症などの専門家でつくる政府の「基本的対処方針分科会」が開かれました。

西村経済再生担当大臣は、東京都については、感染の再拡大に歯止めがかからないことから、7月12日から8月22日まで、4回目となる緊急事態宣言を出すとともに、沖縄県に出されている宣言も8月22日まで延長する方針を諮りました。

7月23日に開幕する東京オリンピックは、開催期間すべてが宣言の時期に含まれます。

西村大臣「先手先手で医療提供体制を確保する必要」

西村大臣は、東京に宣言を出す理由について「きのうの新規陽性者数が920人となるなど継続的に増加し、最近1週間の10万人当たりの人数も30人を超え『ステージ4』相当になっている。重症者や入院調整中の人の数も増加し、先手先手で医療提供体制を確保する必要がある」と説明しました。

その上で、飲食店に対し、酒類の提供を停止し、営業時間を午後8時までに短縮するよう要請するとして「協力金の先渡しが可能となる仕組みを導入し、支給の迅速化に向けて、必要な取り組みを進めたい」と述べました。

また、酒類を販売する事業者に対し、提供停止に応じない飲食店との取り引きを行わないよう要請する考えも示しました。

さらに、宣言が出されている地域のイベントの開催制限については、会場の収容定員の50%までか、5000人のいずれか少ない方を上限とし、時間は原則午後9時までとする基準を維持する方針を示しました。

一方、まん延防止等重点措置は埼玉、千葉、神奈川と大阪の4府県では、8月22日まで延長し、北海道、愛知、京都、兵庫、福岡の5道府県は7月11日の期限をもって解除する方針を示しました。

そして、重点措置の適用地域でも、原則、酒類の提供停止を要請する方針を示しました。

西村大臣は「デルタ株による感染拡大とワクチン接種のスピード競争という状況の中でワクチン接種を着実に進める。ワクチンが行き渡るまで、命や健康を守ることを第1に、先手先手で機動的に対策を講じ感染拡大を抑えていきたい」と述べました。

分科会では、こうした政府の方針について議論が行われ、了承されました。

尾身会長「これまでとは明らかに違う傾向」

「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長は、会合のあと報道陣の取材に応じ、東京に緊急事態宣言を出すなどとした政府が示した方針を了承したと述べました。

そのうえで「東京都に宣言を出すことに専門家が合意したのは、1日の感染者数が900人を超えたからというより、インドで確認された変異ウイルス『デルタ株』が広がってきていることや、40代50代を中心に重症化する人や入院する人が多いといった、これまでとは明らかに違う傾向が見えてきているためだ。このまま感染が拡大すれば、この傾向はさらに加速し、早晩、またしても医療のひっ迫が起きてしまう。これから夏休みや4連休、お盆休み、さらにはオリンピックがあると、人の流れが集中してしまう。オリンピックのために宣言を行うわけではないが、今の早いうちからしっかりと対策を行い、医療のひっ迫を防がねばならない」と強調しました。

さらに尾身会長は「飲食店をはじめ、多くの人が厳しい状況になり、ご苦労をおかけするということを行政も専門家も十分理解して対策を行う必要がある。検査の充実やワクチン接種、飲食店の認証制度など、国が進めるべきことが十分なスピードで行われていない。お願いする以上、それに見合うか、それ以上にしっかりと対策を進める姿勢を国や自治体が見せないと、多くの人の協力は得られない」と話しています。

西村経済再生相「“宣言” もう最後にしたい 協力を」

西村経済再生担当大臣は、分科会のあと記者団に対し、酒類の提供停止の要請などに応じない飲食店への対応について「特別措置法に基づいて、要請や命令、過料を厳格に対応していく。すでに過料を科されている店舗もあるが、要請に応じなければ、何度でも手続きをとることも含め、自治体と連携して、厳しく対応していく」と述べました。

そして、分科会では、沖縄の取り扱いをめぐって、最も多くの時間が割かれたとして「玉城知事からも『まん延防止等重点措置に』と要望をいただいたが、感染者数や医療の状況が『ステージ4』であり、宣言を継続する結論となった。改善が一層進めば、期限を待たず解除がありうるということが分科会として確認された」と説明しました。

そのうえで「沖縄は、夏は観光客も多くにぎわう時期で、本当に大切な時期を厳しい措置で対じすることになり、県民の皆さんの心情もよく分かる。何とか感染拡大を抑え、早期に改善していけるよう協力をお願いしたいし、国としても応援したい」と述べました。

そして、西村大臣は「緊急事態宣言のたびに、私自身は『もう最後にしたい』と思っているが、特に今回は、できれば最後にしたいという気持ちを強く持っている。ワクチン接種を進めながら感染拡大を抑え、医療提供体制を安定的なものにしていきたい」と述べました。

午後5時からの対策本部で正式決定へ

これを受けて、政府は、衆参両院の議院運営委員会に報告し、質疑を行った上で、午後5時から開かれる対策本部で正式に決定することにしています。

そして、7月8日午後7時をめどに菅総理大臣が記者会見し、東京に宣言を出す理由などを説明し、国民に理解と協力を呼びかけることにしています。

日本医師会 釜萢理事 「夏休みの移動時期 長期だが必要」

日本医師会の釜萢常任理事は、分科会のあと記者団に対し、緊急事態宣言について「非常に長期にわたるが、夏休みの県境を越えた移動の機会の大きい時期をしっかりカバーするという意味では必要だと思う。影響が極めて大きいので、状況が改善して解除の方向にもっていけるのであれば、しっかりと判断しなければならない」と述べました。

一方、宣言の期間中に東京オリンピックが開催されることについて「このような状況で、国民に対するメッセージ性が矛盾したものにならないように、しっかりと手当てが必要だという議論になった」と述べました。

経済 専門家「苦渋の決断 国民の協力どう促すか」

経済の専門家として分科会の委員を務める、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの竹森理事長は「苦渋の決断というか、東京で増えている感染が日本全国に広まるのではないかという意識から出た措置だった。国民の協力をどう促すかや、長い自粛が続いており『いつまでやるんだ』というフラストレーションに、どう対応していくかが重要な議論だった」と述べました。

また、東京オリンピックの観客の扱いをめぐり「東京会場で無観客にする選択肢はあるかもしれないが、普通の野球やサッカーの試合で5000人を入れているのに、なぜオリンピックだけなしにしなければいけないのか、話が両立しない。無観客で突っ込みたいのなら、ほかのスポーツの試合も無観客にすればいい」と述べました。