安倍首相
緊急事態宣言 記者会見での主な発言

2020年4月7日

法律に基づく「緊急事態宣言」を受けて、安倍総理大臣は7日夜に記者会見し、東京など7都府県の住民に対し、5月6日までの1か月間、人との接触の7割から8割の削減を目指して外出の自粛を要請するとしたうえで、正しい情報に基づいて冷静な行動を取るよう呼びかけました。記者会見での主な発言です。

軽症者などの宿泊施設 関東1万室 関西3000室確保

冒頭、安倍総理大臣は、新型コロナウイルスの感染者への対応にあたる医療関係者に謝意を示したうえで、病院の機能維持を図るため、医療物資の提供体制を強化する考えを示すとともに、軽症者や無症状の人は、宿泊施設で療養してもらうとして、ホテルチェーンの協力で関東で1万室、関西で3000室を確保したことを明らかにしました。

「医療現場は危機的な状況」

そして「こうした努力を重ねても、都市部を中心に感染者が急増しており、病床数は明らかに限界に近づいている。医療従事者の肉体的、精神的負担も大きくなっており医療現場はまさに危機的な状況だ。医療提供体制がひっ迫している地域が生じていることを踏まえれば、もはや時間の猶予はないとの結論に至った」と述べ、「緊急事態宣言」を行うにあたって、法律で定められた要件を満たしたという認識を示しました。

五輪警備の警察官宿舎 改修し軽症者受け入れへ

宣言を踏まえ、最も感染者が多い東京について、今月中を目途に、東京オリンピック・パラリンピックの警備にあたる警察官のために準備していた宿舎を改修し、800人規模の軽症者を受け入れられるよう整備するとともに、必要に応じて、自衛隊などの医療スタッフを動員し臨時の医療施設として活用することも検討する考えを示しました。

人との接触 7割~8割の削減目指す

感染拡大を抑制するためには、国民の行動を変えることが大切だとして、政府として、東京など7都府県の住民を対象に生活の維持に必要な場合を除き、みだりに外出しないよう要請すべきと考えたと強調しました。さらに、専門家の試算として、人と人の接触機会を最低7割、極力8割削減できれば、2週間後には感染者の増加を減少に転じさせることができるとしたうえで、大型連休が終わる来月6日までの1か月間、人との接触の7割から8割の削減を目指して、外出を自粛するよう呼びかけました。

「テレワーク」「出勤者数7割減」など求める

具体的な対応として、▽社会機能の維持に必要な職種を除き、テレワークを行うこと、▽どうしても出勤が必要な場合はローテーションを組むなどして出勤者の数を最低7割減らすこと、▽人との距離を十分取るなどの取り組みを求めました。

また、▽オンラインによる学習や診療を積極的に活用すること、▽「密閉、密集、密接」の3つの密を避ける行動を徹底すること、▽集会やイベントを避け、飲み会や家族以外の多人数での会食も行わないよう呼びかけました。

「『自分は感染者かも』という意識を」

「この感染症の恐ろしい点は症状が全くないにもかかわらず感染している人が多いことだ。『すでに自分は感染者かもしれない』という意識を、特に若い人を中心に、すべての皆さんに持っていただきたい」

「日本経済 戦後最大の危機」

経済への影響について、「世界経済だけでなく、日本経済が今まさに、戦後最大の危機に直面していると言っても過言ではない。強い危機感のもとに、雇用と生活を断じて守り抜いていく」と述べ、GDP=国内総生産の2割にあたる、事業規模の総額で108兆円程度の緊急経済対策を実施する考えを示しました。

「『都市封鎖』を行うものではない」

「今回の宣言は、海外で見られるような『都市封鎖』、『ロックダウン』を行うものでは全くない。東京や大阪での感染リスクは、現状でも不要不急の外出を自粛して普通の生活を送っているかぎり、決して高くない。地方に移動するなどの動きは、厳に控えていただきたい」

「社会機能はしっかり維持」

安倍総理大臣は「社会機能はしっかり維持していく」として、自治体とも協力しながら、電気、ガス、通信、金融、ごみの収集・焼却などのサービスは、平常どおり続けるようにすると強調しました。

また、高齢者介護施設や保育所に対し、必要とする人へのサービスを継続するよう求めるとともに、食品など生活必需品の製造・加工や、物流、小売店などの事業者には営業の継続を要請する考えを示しました。

「冷静な行動 心よりお願いする」

そして、「正しい情報に基づいて、冷静な行動を心よりお願いする」と呼びかけたうえで、「国家的な危機にあたり、ウイルスとの戦いに、皆さんの力をお借りしたい。あらゆる分野で、全国で立ち上がって下さっている皆さんこそが『希望』だ。共に力をあわせれば、ウイルスとの戦いに打ち勝ち、緊急事態という試練も、必ずや乗り越えることができると確信している」と強調しました。

対象外の地域も「『3密』に注意を」

緊急事態宣言の対象となっていない地域について、「基本的には緊急事態宣言の対象とはしていないが、いつ感染が広がるかは分からない。そういう意味においては、十分に『3密』に注意していただきたいと思っている」と述べました。

「個別の休業補償ではなく 困難な状況の皆さんに現金」

緊急経済対策に関連して「イベントなどの中止、延期などの要請、夜の街での自粛要請などによって甚大な影響が及ぶが、ある特定の業界にお願いしても損失はその業界にとどまるものではない。個別に補償していくということではなく、困難な状況にある皆さんに現金給付を行いたい」と述べ、個別の休業補償に否定的な考えを示しました。また、中小・小規模事業者に対する実質無利子・無担保の融資について、8日、総理大臣官邸に金融機関の責任者を招き、融資を進めるよう要請する考えを明らかにしました。
収入が減少した世帯への現金30万円の給付について、「自民党にも一律で給付すべきという議論があったが、本当に厳しく収入が減収した人たちに直接行き渡るようにしたいと考えた。なるべく早く補正予算案を通していただき、5月に直ちに出て行くようにしたい。今回スピードも重視した」と述べました。

「『アビガン』使えるようにする」

新型コロナウイルスの治療薬として効果が期待される「アビガン」について、「医師に『アビガンを使ってもらいたい』と言い、その病院の倫理委員会の審査で使えるようになっていれば、使っていただけるようにする。観察研究の中で行っていくという形で使っていただきたい」と述べました。

「いつ宣言を出すか 緊張感持って考えていた」

感染拡大を抑制する上で、緊急事態宣言の判断が遅いのではないかという指摘が出ていると質問されたのに対し、「特別措置法を改正した日から、いつ緊急事態宣言を出すべきか ずっと緊張感を持って考えていた」と述べました。
そのうえで、「むしろ緊急事態宣言については『私権を制限するから慎重に出すべきだ』という議論がずいぶんあった。しかし、私たちは、出すべきときには出すべきだと考え、最大限の緊張感を持って、専門家の皆さんに分析をしていただいてきた」と述べました。

「感染者拡大 スピードをどれぐらい抑えられるかが重要」

また、「イベントなどの自粛、学校の一斉休校も行ったが、感染者の拡大を防げなかったことは確かにその通りだ。しかし、このスピードをどれぐらい抑えることができるかということが重要だ。日本も早く、そのピークをはるかに小さいところで抑えていきたい。そして、減少に転じさせたいと思っている」と述べました。

そして、緊急事態宣言を行う上での判断材料として、▽十分な医療体制を確保するため軽症者や無症状の人を医療機関から宿泊施設などに移ってもらう準備が整ったこと、▽宣言を行えば、ロックダウン=都市の封鎖が行われるという誤った認識を一定程度払しょくできたことなどを挙げました。

「最悪の事態の場合 私が責任取ればいいというものではない」

記者団から、「対策が失敗した場合、どのように責任をとるのか」と問われたのに対し、「最悪の事態になった場合に、私が責任を取ればいいというものではない」と述べました。

中小企業など対象の給付金「電子申請で受けられるように」

中小企業などを対象にした給付金について、「なるべく簡易に、電子的に申請して受けられるようにしたい。なかなか電子申請が大変だという方々は全国の商工会議所などで支援し申請していただくことにしたい」と述べました。

外出自粛要請「警察が取り締まることはない」

また、外出などの自粛要請に関連して、警察に取り締まりを要請するのかと問われたのに対し、「罰則はないので、警察が取り締まることはない。ただ、協力要請はさせていただきたい」と述べました。

「できるだけ東京にとどまって」

東京から地方への人の移動については「東京では都市封鎖・ロックダウンのようなことは行わず、経済・社会の機能は維持していくので、できるだけ東京にとどまっていただきたい」と述べました。

「感染しないよう なるべく規則正しく生活」

みずからが新型コロナウイルスに感染した場合の対応を問われたのに対し、「私自身は感染しないように、できるだけ手洗いをし、免疫を維持するためになるべく睡眠の時間を確保したいと思っている。生活のリズムを守るという意味では、なるべく規則正しく生活していくことも大切だ」と述べました。

その上で、「もし私が感染した場合、しっかり意識があれば、公邸などで自己隔離しながら、基本的に総理としての執務を行う。意識がないということになれば 麻生副総理兼財務大臣が臨時代理ということになり、一瞬でも遅滞がないように対応していきたい」と述べました。

「医療提供体制 強化が重要」

海外の医療現場では患者を選別せざるを得ない事態も起きていることについて、「医療現場にとって、大変辛い事態だ。そういう状況にならないよう重症者対策を中心に医療提供体制を強化することが重要だ」と述べました。

その上で、「今回の経済対策では、医療提供体制の整備に最優先に取り組むこととしており、病床の確保や医療機器の整備、専門医や看護師などの確保もしっかりと強化していきたい。今の段階は、軽症者や無症状の人も病院に収容されているが、ホテルなどに軽症者に移ってもらえれば、病床数も相当程度、空きが出てくるので、体制を整えていきたい。重症化しやすい高齢者への感染をできる限り抑える対策にも力を入れてきたい」と述べました。