政府の新型コロナ分科会
“医療状況により外出自粛など要請可”
政府新方針了承

2022年11月11日

「新しい感染の波に入りつつある」
新型コロナの感染者数が増加してきているのを受け、政府分科会の尾身茂会長は、感染拡大の「第8波」に入りつつあるという認識を示しています。

11月11日に開かれた分科会の会合。「第8波」に備え、医療状況に、より重点を置いてレベルごとに対策をまとめた新たな対応方針を了承しました。

会合で、政府は、夏の「第7波」以上になった場合などをレベル3の「感染拡大期」とするなど、感染状況によってレベルごとの対策をまとめた対応方針の案を諮りました。

しかし、専門家から「外来医療の状況などを重視したレベル設定にすべきだ」といった意見が出されたため、レベルの位置づけなどを見直したうえで、了承しました。

新たな対応方針では、現在、5段階あるレベルのうち、感染者がいない「レベル0」がなくなりました。

また、外来診療に患者が殺到し、重症化リスクの高い人がすぐに受診できない場合をレベル3の「医療負荷増大期」と位置づけました。

そのうえで、レベル3では、都道府県が「対策強化宣言」を出し、症状がある場合に、外出を自粛したり、大人数の会食への参加を見合わせたりするなど、慎重な行動を要請できるようにしました。

さらに、最も深刻なレベル4は、医療全体が機能不全の状態になる「医療機能不全期」とし、出勤の大幅抑制や帰省・旅行の自粛、それに、イベントの延期などより強力な要請を可能にしています。

政府は、こうした方針を都道府県に示すとともに、今後の感染状況を見極めながら、運用を始める時期などを検討することにしています。

後藤・新型コロナ対策担当大臣は「レベルの見直しなどは、速やかに都道府県に示したい。新規感染者は全国で増加傾向にあり、地域によって大幅に増加しているところもある。都道府県には、発熱外来やオンライン診療、健康フォローアップセンターの拡充などの準備をお願いしたい」と述べました。

尾身会長「レベル4でも宣言など出さない形で対応すべき」

政府分科会の尾身茂会長は11月11日の会合のあとの記者会見で、政府の対応方針の案について、分科会として基本的に了承したと説明したうえで、新型コロナウイルスの感染拡大の第8波で、医療が機能不全に陥る事態を回避するための対応が必要だと強調しました。

この中で尾身会長は第8波の見通しについて「オミクロン株にふさわしい医療体制の整備やワクチン接種の推進、抗原検査キットの準備、そして、個人の基本的対策の徹底をこれからも行っていけば医療がひっ迫する事態を回避することが可能だと考えている」と述べました。

そして尾身会長は分科会で示されたレベルごとの対策について、
レベル3は「医療負荷増大期」
レベル4は「医療機能不全期」
と位置づけられると説明したうえで、「レベル3や4で行われる強い対応は、これまでやってきた対策をしっかり実行してもさらに感染が拡大し、医療の機能不全が起きてしまいそうなときに、それを回避するためにやるべきことという位置づけで、危機管理として最悪のことに備えた対応策だ。私たちはこれまでの対応で多くの対策の在り方について学んで、ワクチン接種も広がってきた。レベル4の状況になっても緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を出さない形で対応すべきだというのが分科会での議論だった」と述べました。

レベルを4段階に 新たな対応方針とは

政府の分科会が2022年11月11日に了承した新たな対応方針では、これまで5段階に分かれていたレベルを、オミクロン株の特徴を踏まえて主に医療体制の負荷の状況を基準に4段階に分けて取るべき対応を示しています。

どのレベルにあるかの判断の際には感染状況は参考にするものの、医療の負荷や社会経済活動の状況を踏まえて都道府県が総合的に判断するとしています。

【レベル1】感染小康期

「感染小康期」にあたるレベル1は、最大確保病床に対する病床使用率はおおむね0%から30%で、外来、入院ともに医療への負荷が小さい段階です。

国が取るべき対応としては、インフルエンザとの同時流行に備えて、
▽ワクチン接種や、
▽発熱時に自分で対応できるよう検査キットや解熱鎮痛剤の購入、
▽基本的な感染対策の徹底などを呼びかけ、都道府県などに発熱外来やオンライン診療体制の整備を求めるとしています。

【レベル2】感染拡大初期

「感染拡大初期」にあたるレベル2は、発熱外来で患者が急増して負荷が高まり始める段階です。

救急外来の患者が増えて、病床使用率はおおむね30%から50%ほどで、感染者が急速に増え始めることで職場でも欠勤者が増加し始め、業務を続けるのに支障が生じる事業者も出始めるとしています。

国が取るべき対応としては、
▽重症化リスクのある人が受診できるよう協力を呼びかけるとともに、
▽オミクロン株対応のワクチン接種をさらに推進すること、
▽医療機関や高齢者施設、学校などで有効な感染対策を行うことなどを求めるほか、患者の受け入れについて医療機関に協力要請を行うとしています。

【レベル3】医療負荷増大期

「医療負荷増大期」にあたるレベル3は、2022年夏の「第7波」のように、医療の負荷が高まり発熱外来や救急外来に多くの患者が殺到して重症化リスクの高い高齢者などがすぐに受診できず、救急搬送が困難なケースも急増する段階です。

病床使用率や重症病床の使用率はおおむね50%を超えるのが目安としています。

また、職場で欠勤者が多数出て業務継続が困難になる事業者も多く出て、重点医療機関での医療従事者の欠勤が急増するとしています。

レベル3の段階で、大きな感染拡大が起きている都道府県は「対策強化宣言」を行って、行動制限はしないものの感染拡大を防ぐための対策を講じます。

住民に対してより慎重な行動を要請でき、
具体的には、
▽ふだんと異なる症状がある場合は外出や出勤、登校などを控える行動を徹底することや、
▽混雑した場所や感染リスクの高い場所に行くことなど感染拡大につながる行動を控えること、
それに
▽特に、大人数での会食や大規模イベントの参加は見合わせることも含めて慎重に判断することなどを挙げています。

さらに、医療体制を維持するために濃厚接触者となった医療従事者が、待機期間中でも出勤できるような運用を可能なかぎり行うよう医療機関に要請するほか、クラスターが発生しやすい高齢者施設などで集中的な検査を行うことも求めます。

【レベル4】医療機能不全期

さらに状況が悪化した「医療機能不全期」にあたるレベル4は膨大な数の感染者が出て発熱外来や救急外来で対応しきれなくなり、一般の外来にも患者が殺到し、救急車を要請しても対応できないなど、通常医療を含めた医療全体がひっ迫し、機能不全になる状態で「避けたいレベル」と位置づけています。

欠勤者が膨大な数になり、社会インフラの維持にも支障が生じる可能性があり、多くの医療従事者の欠勤と相まって入院医療もひっ迫するとしていて病床使用率や重症病床の使用率はおおむね80%を超えるのが目安としています。

レベル4になった場合や感染拡大のスピードが急激で対策が追いつかず、レベル4に移行しつつあると判断される場合は都道府県は「医療非常事態宣言」を出して、住民や事業者に対して人との接触機会を減らすことについてより強力な要請を行うことができるとしています。

医療非常事態宣言のもとでは、
▽出勤の大幅な抑制や帰省や旅行の自粛など、外出や移動は必要不可欠なものに限るよう要請し、
▽飲食店や施設の時短営業は要請しないもののイベントは延期し、
▽学校の授業は原則として継続するものの部活動の大会や学校行事は開催方法を変更するなど、慎重な対応を要請します。

また、国は災害医療的な対応として国やほかの地域からの医療人材の派遣などを行うとしています。

発熱外来 受診に訪れる人が増加

東京都は11月11日、新たに7899人が新型コロナウイルスに感染していることを確認したと発表されました。7日連続で前の週の同じ曜日を上回っています。

感染が全国で拡大傾向にある中、発熱外来を設置する東京都内のクリニックでは、11月に入って受診に訪れる人が増えていて、医師は重症化リスクの低い人に対し、抗原検査キットで検査を行い自宅療養をするという国の対策を理解したうえで、検査キットや解熱剤などの準備をしておいてほしいと呼びかけています。

東京 杉並区のクリニック、「たむら医院」では、通常の診察室とは別に屋外の通路に発熱外来を設けていて、11月11日も午前中だけで1歳から81歳までの男女合計13人が検査を受け、10人の感染が確認されました。

クリニックでは、10月は一日の感染者数が多いときでも8人でしたが、今週は10人以上の日が続いています。

感染が確認された人の多くは「第7波」で感染しておらず、オミクロン株の「BA.5」に感染した人がほとんどと見られる一方、オミクロン株の変異ウイルス、「XBB」に感染した疑いがある人もいたということでした。

インフルエンザの同時流行も懸念される中、クリニックは、重症化のリスクがある子どもや高齢者などが受診できるよう、重症化リスクの低い人に対し、抗原検査キットで検査を行い自宅療養をするという国の対策を理解したうえで、検査キットや解熱剤などの準備をしておいてほしいと呼びかけています。

田村剛院長は「必要な人がすぐに受診できるように、自分自身がどのような流れで検査するのが望ましいのか確認しておくなど、協力をお願いしたい」と話していました。