政府の新型コロナ分科会
政府分科会 大型連休後
医療ひっ迫時対応 4とおりの考え方示す

2022年4月27日

政府の新型コロナ対策分科会が開かれ、大型連休のあと、新型コロナウイルスの感染が急拡大し、医療ひっ迫が想定されるようになった場合にどのような対応をとるべきか、専門家が考え方を示しました。
これまでどおりの対応から、まん延防止等重点措置などをとらず患者の治療を一般の医療機関でも行うなど社会経済活動を維持することに重点を置いた対応まで、4とおりに分けて示していてさらに議論を進めるとしています。

今後の対応についての考え方は専門家がまとめ、4月27日の分科会で示されました。

この中では、これまでの対策について、自主的な行動抑制や基本的な感染対策、それに緊急事態宣言やまん延防止等重点措置で、感染者や亡くなる人の数を欧米に比べ低く抑えてきた一方、GDP=国内総生産の回復の遅れや自殺者数の増加など教育を含む社会経済への悪影響が顕在化しているという認識を示しました。

そのうえで大型連休のあとに感染が急拡大して深刻な医療ひっ迫が想定される場合にどのような対応をとるべきか、4とおりに分けて考え方を示しました。

具体的には、
▽これまでどおり「重点措置などの行動制限を行い、コロナの患者は特定の医療機関で診療する」、
▽「行動制限は行うものの、コロナの患者も可能なかぎり地域の医療機関で診療する」、
▽「法律に基づく社会経済活動の制限は行わず自主的な対応を尊重する一方、患者は特定の医療機関で診療する」、
▽「社会経済活動の制限は行わず、患者は可能なかぎり地域の医療機関などで診療する」の4とおりの対応を挙げています。

これまでどおりの対応では、2年以上同じ対策を行うことへの納得が得られにくいことや、社会経済活動を維持することに重点を置いた対応では、適切な医療を受けられない感染者が出る可能性があることなど、それぞれ課題も挙げていて、分科会ではどのような対策の組み合わせが適切か議論を進めるとしています。

4とおりの考え方 詳しい内容は

新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会は感染が急拡大した際に「重点措置などで社会経済活動を制限するかどうか」と「新型コロナの感染者への行動制限や患者を特定の医療機関で診療する対応を続けるかどうか」の2つのポイントについてどちらを選択するかで、4とおりの考え方があるとしていて具体的には以下のとおりとなっています。

1 これまでどおりの対応

これまでと同じように
▼まん延防止等重点措置などの行動制限を行ったうえで、
▼コロナの患者は特定の医療機関で診療し、保健所や自治体が療養者の隔離や入院調整を行う対応です。

分科会はこの対応をとる場合の課題として行動制限による社会経済への影響が続くこと、一般の医療に強い制限がかかること、2年以上同じ対策が続くことに納得が得られにくいことを挙げています。

2 行動制限あり、医療の特別対応なし

▼重点措置などの行動制限は行うものの、
▼コロナの患者も可能なかぎり地域の医療機関や在宅で診療し入院調整は原則として病院や診療所の間で行い、保健所や自治体の負担を軽減する対応です。

患者が重症化した場合や基礎疾患があって入院が必要な患者については、入院できる体制を整備するとしています。

この対応の課題としては、多くの医療機関でコロナの診療が行われるため、院内感染が増加する可能性があること、治療薬を広く使えるようにする必要があることや、それに、医療面ではコロナを特別に扱う対応を軽減する一方で、行動制限が続くことに納得が得られにくいことを挙げています。

3 行動制限なし、医療の特別対応あり

▼社会経済活動を維持することに重点を置くため、重点措置などの行動制限は行わず、自主的な対応を尊重して対策の呼びかけにとどめる一方で、
▼コロナの患者は特定の医療機関で診療し、保健所や自治体が療養者の隔離や入院調整を行う対応です。

診療できる医療機関が限られるため、適切な医療を受けられない患者が増える可能性があるほか、医療機関の間で負担の大きさに偏りが起きること、それに、行動制限による社会経済への影響が続くことなどが課題だとしています。

4 行動制限なし、医療の特別対応なし

▼社会経済活動を維持することに重点を置くため、重点措置などの行動制限は行わず、自主的な対応を尊重して対策の呼びかけにとどめ、
▼コロナの患者も可能かぎり地域の医療機関や在宅で診療し入院調整は原則として病院や診療所の間で行い、保健所や自治体の負担を軽減する対応です。

多くの医療機関でコロナの診療が行われるため、院内感染が増加する可能性があること、保健所や自治体による医療の調整が行われないため、入院先の確保が難しくなり適切な医療を受けられない患者が出る可能性もあるとしています。

分科会ではいずれの場合でも基本的な感染対策や、検査の拡充、ワクチン接種の推進、それに医療や保健所の体制強化が求められるとしていて、今後、どのような対策の組み合わせが適切か議論を進めるとしています。

一方で、これらの対応の考え方はオミクロン株のうち、より感染力が高いとされる「BA.2」の拡大を前提にしていて、全く異なる変異ウイルスが広がった場合には中長期的な対策について別に議論する必要があるとしています。

尾身会長「中長期的には行動制限を最小化へ」

政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は会合のあとの記者会見で、感染が拡大した場合のコロナ対応の考え方について「すでに保健所の機能や濃厚接触者の扱いなどはオミクロン株の拡大以降、状況に合わせて緩和や効率化が行われていて、現時点でも当初の対策からはかなり変わってきている。4つの選択肢のどれかを選ぶというより、地域の状況に応じて考え方や対策を組み合わせるなど、濃淡のある対策をとることを国や自治体が判断していくことになるのだと思う」と述べました。

また、4月27日の会合での議論について尾身会長は「オミクロン株の感染が続くという前提に立てば、中長期的には、重点措置など社会経済活動の制限は行わず患者は可能なかぎり地域の医療機関などで診療するという方向を目指すべきだという指摘が多かった。ただ同時に、短い期間に急激に対策を緩めるということは避け段階的に進めるべきだという意見が大勢だった」と説明しました。

そのうえで今後の対応について「それぞれの立場や何を重視するかによって、今後の対策への考え方が多様になってきている。分科会という場で見解を一致させ1つの答えを示すことが難しくなりつつある。私個人の見解としては、市民に行動制限を要請することを中心とした対策の時代は終わり、中長期的には科学技術やITをフルに活用しながらなるべく行動制限を最小化していくことが求められるのではないかと考えている」と述べました。