政府の新型コロナ分科会
尾身会長「このままでは自宅療養中に
亡くなるケース増える」

2021年8月12日

新型コロナウイルス対策の政府分科会の尾身茂会長が8月12日、記者会見を開き「このままでは自宅療養中に亡くなるケースが増えてしまう」と述べ、この2週間で東京都などでは人出を7月前半に比べて最低でも5割減らすことが必要だとして協力を呼びかけました。

新型コロナウイルスの急激な感染拡大に歯止めをかける必要があるとして、政府の分科会は、たとえば東京都ではこの2週間で人出を今回の緊急事態宣言が出される直前の7月前半に比べて5割減らすことなどを求める緊急の提言をまとめました。

これを受けて、分科会の尾身会長は8月12日夕方、記者会見を開き「今の状況を放っておくと、さらに自宅療養者が増えて自宅療養中に亡くなるケースが増えてしまう。人出を最低でも5割減らすことが必要だ。去年4月の1回目の緊急事態宣言を出したときと同じレベルの危機感を国や自治体、市民と共有し、すぐにでも対策を強化してもらいたい」と述べ、強い危機感を示しました。

尾身会長は「今、自宅療養中に治療が十分受けられず、重症化あるいは亡くなるというあってはならないことが実際に起きている。さらに一般医療が制限される中で、コロナに関係がなくてもがんの治療を遅らせるなど、影響が出てきてしまっている。このことを国や自治体、市民には十分に認識してもらいたい」と訴えました。

そのうえで、具体的に行うこととして「なるべく外出しないでいただきたい。どうしても外出する場合でもその頻度をできれば5割に減らしてもらいたい。たとえば、買い物など混雑した場所に出かける頻度を週に4回から2回に減らすといったことを意識してやってもらいたい」と呼びかけました。

さらに尾身会長は、国民に対策を要請する以上、国や自治体が取り組みを徹底しなければ、多くの人の協力を得られないとしたうえで「検査を簡単に受けられる仕組みや医療体制の確保などこれまでずっと対応するよう求めてきたことがいまだに徹底されていない。あとは予算と決意だけの問題なので、速やかに対応してもらいたい」と訴えました。

西村経済再生相「提言しっかり受け止めて対応」

西村経済再生担当大臣は、記者団に対し「強い危機感を専門家の皆さんと共有している。接触を減らし、人流を減らしていくよう知事と連携して取り組んでおり、引き続き、自治体を支援し、提言をしっかり受け止めて対応していきたい」と述べました。

また、医療提供体制について「必要に応じて、臨時の医療施設の検討もお願いしているが、看護師の確保がカギとなるので、国としても自治体と連携して、地方の医療資源を最大限活用し、病床や人材の確保に対応したい」と述べました。

そして「いよいよお盆の時期になるが、鉄道や航空の予約状況は、去年よりもむしろ増加傾向にある。帰省や旅行の中止や延期をぜひ考えていただきたい」と呼びかけました。

【詳細】「人出5割削減」分科会提言

新型コロナウイルスの感染が爆発的に増加し、医療のひっ迫が深刻化している危機的な状況を回避する必要があるとして、政府の分科会は今月26日までの2週間、集中的に対策を強化し、東京都では人出を今回の緊急事態宣言が出される直前の7月前半に比べて5割減らすことなど、強い対策を求める緊急の提言を出しました。

新型コロナ対策にあたる政府の分科会がまとめた提言では、現在の状況について、東京都などでは「緊急事態宣言」にもかかわらず、人と人との接触が減らずに、感染が爆発的に増加して重症者も増えていて、通常の医療を犠牲にしながら増やしてきた病床が急速に埋まり、入院調整も極めて困難になってきているとして「救える命が救えなくなるような状況になり始めている」と指摘しています。

そして、若年層のみならず、中年や壮年層も外出していることが多く、こうした年代ではワクチン接種を終えておらず、重症化のリスクも高いとして、 接種を加速させるとともに、8月26日までの2週間、集中的に対策をさらに強化し、たとえば東京都では今回の緊急事態宣言が出される前の7月前半に比べて、昼夜を問わず人出をおよそ5割削減する必要があるとしています。

また提言では、感染力の強いデルタ株で感染拡大が起きやすくなっているものの、主な感染様式はこれまでと変わらず、飛まつや細かい飛まつ=マイクロ飛まつで、リスクが高い場面はふだんから一緒にいない人との飲食や会合、長時間大人数が集まる場面、混雑した場所や時間帯、休憩室や喫煙所、更衣室でのマスクを外した会話だとしています。

そのうえで具体的な対策として「緊急事態宣言」が出されている地域では、
▽混雑した場所への外出を半減させ、
▽感染リスクが高いとされる百貨店の地下の食料品売り場や、ショッピングモールなどの人出を強力に抑えること、
▽テレワークをさらに強化すること、
▽外出をなるべくせず、県を越える移動は控えることなどを求めています。

一方で、
▽観客が声を出さないコンサートや演劇、
▽映画館、
▽公園、
▽図書館や美術館などの施設は、感染リスクを比較的低くでき、感染防止策を徹底したうえで利用が可能だとしています。

さらに、提言では感染爆発とも言える状況は、自治体だけではコントロールが困難で、今の状況が災害医療であるとの考えのもと、国が自治体と協力して、いまだかつてない強力なウイルスに対処するために、前例にとらわれない思い切った対策を行う必要があるとしています。

そして、国や自治体に対して、
▽これまでコロナ対応に関わってこなかった医療機関に協力を求めることや▽医療機能を強化した宿泊施設を増設するとともに地元の医師会がより積極的に関与して、自宅療養する患者の健康観察や療養の体制を確保すること、▽学校や職場などで、体調が少しでも悪い場合は簡単に検査を受けられるよう促すこと、
▽入院調整は保健所だけでなく、都道府県でも行うことなどを求めています。

さらに、国や自治体に対して従来の感染状況や医療体制の指標に加えて、
▽入院調整中の人数や自宅やホテルなどで療養している人の数、
▽昼夜の人出を見ながら対策を進めることを求めました。