コロナ「5類」で医療はどうなる?
感染者数発表は?【Q&A】

2023年4月28日

新型コロナ、大型連休明けの5月8日から「5類」になりますが、このところの新規感染者数は、増加傾向が続いています。
一方、感染した際に受けられる医療の体制は大きく変わります。また、現在は毎日行われている感染者数の発表も終わり、週に1回の「定点把握」による発表に変わります。Q&A方式で、詳しくまとめました。

Q.「5類」目前 最新の感染状況は?

A.「5類」移行を前に、新型コロナの新規感染者数は増加傾向となっています。

厚生労働省が発表した感染者数をもとに、NHKが全国の1週間平均での新規感染者数の傾向について前の週と比較してまとめたところ、以下のようになっています。
▽~4月13日の1週間 前週の1.10倍
▽~4月20日の1週間 前週の1.09倍
▽~4月27日の1週間 前週の1.15倍
このように増加傾向が続き、5週連続で前の週を上回っています。

都道府県別に見ると、
▽富山県 1.49倍
▽北海道 1.41倍
▽岐阜県 1.35倍
▽新潟県 1.33倍などとなっています。

一日当たりの全国の平均の新規感染者数は、先週より1300人余り多い1万人余りで、36の都道府県で前の週より多くなっています。

専門家 “水面下でじわじわと感染者数増に”

政府分科会のメンバーで東邦大学の舘田一博教授は、「全国的には、ことし3月末から前の週より多くなる日が続いていて、増え方は穏やかだが増加傾向が続いている。検査を受けている人も少なくなっていることから報告されている数の何倍もの感染者がいると考えないといけないのではないか。水面下でじわじわと感染者数が増えてきている状況だ」と話しています。

また、今後の感染状況については、「大型連休や水際対策の緩和、5類への移行など、これまで経験したことのないレベルで緩和が進む中で、今後、感染者が増えるリスクは高まっている」と話しています

Q.感染者数の発表が終わる?

A.現在行われている毎日の発表は、連休明けの5月8日の月曜日までで終わります。

5月7日までの分を8日に発表して終了するということです。

代わりに週に1回、毎週金曜日に「定点把握」による発表が始まり、初回は5月19日(金)になる予定です。

ニュースなどで「全数把握」「定点把握」ということばを耳にすると思いますが、現在行われているのが「全数把握」で、医療機関や自治体がすべての感染者数などを把握、報告して毎日公表する方法です。

一方、新たに始まる「定点把握」は、季節性インフルエンザでも行われている流行監視の方法です。

指定された全国5000の医療機関が、1週間分の感染者数を翌週にまとめて報告するもので、1つの医療機関当たりの患者数の増減を見ながら感染状況を把握する方法です。

報告されたデータを厚生労働省が集計し、毎週金曜日に発表するということで、初回は5月8日から14日までの感染者数が5月19日の金曜日に発表される予定です。

厚生労働省は、今後の感染者数の推移を過去のデータと比較できるようにするため、指定した5000の医療機関での「第8波」から現在までの感染者数の推移のデータも参考に示すことにしています。

Q.「死亡者」「入院者」「重症者」の発表は?

A.「死亡者」の数についての都道府県による毎日の公表も5月8日(月)までで終わります。厚生労働省は都道府県の情報を集計して翌日に発表しているため、全国の死亡者数のまとめは5月9日(火)で終わりになります。

厚生労働省は、今後は「人口動態統計」をもとに動向を把握する方針で、死亡者の総数がまとまるのは2か月後、詳しい死因別の死亡者数までまとまるのは5か月後になるとしています。

一方、医療ひっ迫の状況や重症化の傾向などを把握するため、すべての医療機関からの報告をもとに毎週1回行っている「入院者」「重症者」の数の公表は、今後も続けるということです。

このほか、流行拡大の兆しをつかむため、献血の血液を分析してウイルスに対する抗体の保有率を調べる調査や、下水に含まれるウイルスを検出して流行の動向をつかむ研究を続けるということです。

Q.感染した時に受けられる医療は?

A.現在は、せきや熱などの症状があり、新型コロナが疑われる場合に受診する医療機関として「発熱外来」を設けて受け入れる医療機関がある一方、コロナの患者を受け入れていない医療機関もあります。

5類移行後について厚生労働省は、「幅広い医療機関で受診ができる体制を目指す」としていて、2024年4月までに段階的に移行を進めていくとしています。

具体的には、まず「外来診療」について以下のような体制を目指すとしています。
▽現在 ………… 全国の約4万2000の医療機関
▽5類移行後……全国の約6万4000の医療機関

そのうえで、都道府県が医療機関に対し、受け入れる患者をかかりつけの患者に限定しないよう促すほか、都道府県が新型コロナに対応する医療機関を公表する取り組みを当面続けるとしています。

Q.入院する場合は?

A.入院患者については、以下のような体制を目指すということです。

▽コロナ病床を確保してきた約3000の医療機関が中心に受け入れ
▽約8200あるすべての病院で受け入れ

さらに、高齢者の退院に向けたリハビリなどの支援を行う「地域包括ケア病棟」での受け入れを積極的に推進するとしています。

新たに受け入れを行う医療機関を増やすため、院内感染対策のガイドラインを見直すほか、対策のために必要な設備の整備などに対し、支援を行うとしています。

また、新型コロナの患者を受け入れる「コロナ病床」は段階的に廃止して、今後は一般の病床での受け入れを進めていくとしています。

5類移行後の医療費の負担や感染対策についてはこちら↓

コロナ「5類」正式決定 5月8日からどうなる?【Q&A】

Q.一般の病棟でコロナ患者を受け入れられる?

A.すでに受け入れている医療機関もあります。

横浜市鶴見区にある「済生会横浜市東部病院」では、最大50床の病床を確保し、重症や中等症などのコロナ患者1000人近くをこれまで受け入れてきました。

病院では2022年3月、コロナ専用の病棟を廃止しました。

オミクロン株以降、新型コロナの重症度が低下し、コロナ肺炎よりも感染をきっかけに基礎疾患が悪化するケースが増えたことや、コロナ以外の理由で入院した高齢者がコロナだったケースが増えてきたこと、また、コロナ禍で影響を受けていた一般医療との両立を目指したためです。

その代わりに腎臓内科や循環器内科などの病棟ごとに、コロナの患者も受け入れられる病室を整備し、それぞれの専門医がコロナ患者の診療にあたる体制をとっています。

さらに病院では、高齢者の体力低下を防ぐため、本人の同意を得たうえで入院初期の段階からリハビリも行っています。

コロナの入院患者がリハビリする様子

コロナで入院する患者の多くが高齢者で、感染により体力が低下したり基礎疾患を悪化させたりするケースが目立ちますが、リハビリで体の機能や状態が落ちるのを防ぐのがねらいです。

リハビリにあたる理学療法士などは患者との接触が増えるため、病室に出入りするたびに医療用マスクや防護服を取り替えながら対応する必要がありますが、患者の中には重症で寝たきりの状態からリハビリの日々を経て日常生活ができるまでに回復、退院した高齢者も多くいたということです。

宮城盛淳医療連携センター長は、「オミクロン株では、持病のある患者や高齢の患者が感染をきっかけに持病を悪化させて入院が必要になるケースが非常に目立ちました。基礎疾患のあるコロナ患者に対し、それぞれの疾患の専門医がコロナも含めて診療する体制をつくることが重要だ」と話しています。

病院のリハビリテーションセンターの吉田公一副部長は「感染対策を適切に行っていれば急性期病院でも在宅でもどこの医療機関でもコロナのリスクを減らして高齢者の体力を維持向上させることはできると思っています。今後、入院患者の受け入れを始める病院には積極的にリハビリを行うことを検討してほしい」と話しています。

Q.自治体の準備は進んでる?

A.全国の都道府県は、医療提供体制の拡充や医療機関での入院調整を円滑に進めるための移行計画を4月21日付けで取りまとめ、厚生労働省に報告しました。

それによりますと、各都道府県がまとめた入院体制は以下の通りです。

「第8波」のピーク時に入院した患者が、約5万3000人でした。

これに対して、夏の感染拡大に向けて全国約8400の医療機関で、最大で約5万8000人の患者を受け入れられる体制を確保したとしています。

一方、「外来診療」を行う医療機関については、現時点では、現在より2000増えて約4万4000になるとしていますが、5類移行後の目標としている6万4000には届いていません。

厚生労働省は感染対策の設備や防護服の確保などの支援を続けるほか、院内感染マニュアルなどを示しながら新たに外来診療を行う医療機関を増やしていきたいとしています。

計画の期間は冬の感染拡大を想定して9月末までとしていて、その後、各地域ごとに見直しを行う計画です。

Q.新たな変異株への備えは?

A.新たな変異株の発生などを把握するための「ゲノム解析」=ウイルスの遺伝子解析は、目標数を4分の1程度に減らして続けるということです。

ゲノム解析はこれまで、都道府県で実施率5~10%程度、数として週300~400件を目安に行われているほか、国立感染症研究所でも週に800件の解析をしてきました。

5類移行後は、都道府県で週100件、国立感染症研究所で週200件程度とする方針で、結果は国立感染症研究所のホームページで公表されます。

Q.大型連休中 気をつけることは?

A.政府分科会のメンバーで東邦大学の舘田一博教授は次のように話しています。

「今も全国では一日に1万人以上の感染者が氷山の一角として報告され、死亡者の数も一時期よりはかなり少なくなってきたが、一日に20人から30人ほどが亡くなっている。感染が拡大すると高齢者や基礎疾患がある人に広がるリスクが高まり、再び、死亡数の増加につながってしまう」

そのうえで「大型連休中も基本的な感染対策を維持することが大事で、密な場所や換気が悪い場所では効果的にマスクを使い、何よりも、体調が悪い時は無理して外出や旅行をしない、かぜだと感じたときはコロナかもしれないと用心し自宅で療養するなど、感染に弱い人たちを守る意識を改めて持ってほしい」