2023年4月27日

新型コロナの感染症法上の位置づけが、5月8日に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行することが正式に決まりました。
国内の医療体制や感染者の費用負担などが、これまでと大きく変わります。
ただ感染者は増加傾向にあり、今後、大きな流行が起こる可能性は高いとの指摘もあります。
今後の感染状況の見通しも含めて、Q&Aでまとめました。
⇒「新型コロナ『5類移行』正式決定」詳細記事
Q.5月8日以降に感染したら費用どうなる?
まず、発熱などの症状がある場合に現在は無料で受けられる検査ですが、検査費用の公費による支援は終了するため、自己負担となります。
このほか、以下のように変わります。
▼各自治体による検査キット配布事業→終了
▼民間の検査所で行われているPCR検査→有料に
また、医療機関で行う検査で検査キットを使用する場合でも、自己負担で行うことになります。

厚生労働省によりますと、初診で検査を受けた場合、初診料なども含んだ検査の自己負担は以下のようになるということです。
▽抗原検査の場合
窓口負担3割 2271円
窓口負担1割 757円
▽PCR検査の場合
窓口負担3割 3489円
窓口負担1割 1163円
一方で、重症化リスクが高い人が多い医療機関や高齢者施設、障害者施設で感染者が出た場合に、周囲の人への検査や職員への集中的検査を都道府県等が行う場合は、「行政検査」として無料で行われます。
Q.外来診療の窓口負担は?
感染して治療する際の外来診療の窓口負担分は、現在は公費で支援されているため患者の負担はありませんが、5類になると自己負担に見直されます。
どのくらいの負担になるのでしょうか。

厚生労働省は、現在はコロナ治療薬の費用が公費負担で、保険診療で「窓口負担3割」の人の場合、新型コロナと季節性インフルエンザを比較して以下のように試算しています。
▼解熱剤・コロナの治療薬(ラゲブリオ)を処方(検査料を含む)→最大4170円
▼解熱剤・インフルエンザの治療薬(タミフル)を処方(検査料を含む)→最大4450円
このように、新型コロナとインフルエンザはほぼ同じ程度の負担となるということです。

また、75歳以上で、保険診療で「窓口負担1割」の人の場合には
▼解熱剤・コロナの治療薬(ラゲブリオ)を処方(検査料を含む)→最大1390円
▼解熱剤・インフルエンザの治療薬(タミフル)を処方(検査料を含む)→最大1480円
こちらも同じ程度となるとしています。
Q.入院費用は?
入院費用も、医療費や食事代は自己負担となります。
ただ、急激な負担の増加を避けるため、夏の感染拡大への対応としてまずは9月末まで、高額療養費制度の自己負担限度額から2万円を減額する措置を講じるとしています。
厚生労働省の試算では入院する割合が高い75歳以上の人のうち、住民税が非課税ではなく年収が383万円までの人が中等症で10日間入院した場合は、自己負担は3万7600円となるほか、別に食事代が1万3800円かかるとしています。

Q.治療薬の費用は?
高額なコロナ治療薬の費用については、夏の感染拡大も想定し、9月末まで引き続き公費で負担されます。
仮に公費負担が無くなれば、例えば、新型コロナの治療薬「ラゲブリオ」の現在の価格で計算すると、外来での自己負担は最大で3万2470円になるといいます。
9月以降は他の病気とのバランスや国の在庫状況などを踏まえて、冬の感染拡大に向けて対応を検討するとしています。

Q.療養中の外出自粛の期間は?
療養期間中に外出を控えるかどうかは、5月8日以降は個人の判断に委ねられることになります。
厚生労働省は判断の参考にしてもらうため、推奨されることとして以下の目安を示しました。
▽発症の翌日から5日間は外出を控えること
▽症状が軽くなってから24時間程度は外出を控えること
そのうえで、10日間が経過するまではウイルスを排出する可能性があることから、マスクの着用や高齢者などとの接触は控えることなど、周囲の人への配慮を求めています。
また、濃厚接触者にも法律に基づく外出自粛は求められなくなりますが、医療機関や高齢者施設などでクラスターなどが発生した場合は濃厚接触者かどうか判断したうえで、行動制限への協力を求める可能性があるとしています。

Q.「療養期間5日間」の根拠は?
国立感染症研究所が示したデータでは、感染性のあるウイルスが検出されるのは、発症の翌日から5日目では大幅に下がっていて、7日目には検出の限界値を下回るとしています。
国立感染症研究所が4月、厚生労働省の専門家会合で示した結果によりますと、オミクロン株の「BA.1」に感染した85人の鼻やのどの検体から検出された感染性のあるウイルスの量は、発症日と比べて以下のようになりました。
▽発症から3日目 半分ほど
▽発症から5日目 20分の1以下
▽6日目 40分の1ほど
▽7日目 検出限界値を下回ってほぼ検出されず
7日目以降、検出限界値を上回ることはなかったとしています。

これについて東京医科大学の濱田篤郎特任教授は、次のように話しています。
「5日間の療養期間のあとでもリスクはゼロにはならないが、自宅療養が必要な期間を5日間にして、その後、10日目くらいまではマスクをしてほかの人にうつさないように注意しようという考え方は妥当だと思う。療養期間を5日間とするのは欧米諸国でも多く採用されている」

Q.宿泊療養施設は?
感染した人の隔離や療養のために自治体が確保していたホテルなどの宿泊療養施設は、原則終了となります。
ただ、高齢者や妊婦の療養のための宿泊療養施設については、入院とのバランスを踏まえ、一定の自己負担をすることを前提に自治体の判断で9月末まで継続されます。
Q.療養中の相談先や感染証明は?
現在、高齢者や基礎疾患のある人などについて保健所が行っている健康観察も行われなくなります。
このため厚生労働省は、療養中で症状に不安がある場合などは近くの医療機関を受診するか、都道府県が引き続き設ける24時間対応の相談窓口などに相談をしてほしいとしています。
また、これまで勤務先などからの要請で感染の証明書を求めて発熱外来を受診する患者も多くいましたが、5月8日以降、保健所などは証明書を発行しなくなります。
このため厚生労働省は、感染の証明が必要な場合は、医療機関で発行される診断書を活用してほしいとしています。
Q.ワクチン接種は?
新型コロナのワクチン接種については、厚生労働省は今の無料での接種を2024年3月まで継続し、重症化リスクの高い人などは5月からと9月からの年2回の接種を行うほか、重症化リスクが高くない人も9月から接種を行う方針です。
具体的には5月8日から、高齢者や基礎疾患のある人のほか、医療従事者や介護従事者などを対象に、今のオミクロン株対応ワクチンで接種が開始されます。
9月からの具体的なスケジュールや使用するワクチンについては、今後ウイルスの変異などを考慮して決定するとしています。

Q.5月8日からの感染対策は?アクリル板は?
個人や事業者の判断に委ねられることになります。
厚生労働省は判断の参考にしてもらうため、今後も有効だと考えられる基本的な感染対策を示しています。
具体的には、手洗いなどの手指衛生と換気については、引き続き有効だとしています。
また、いわゆる「3密」の回避や人と人との距離の確保については、流行期には重症化リスクの高い人にとって有効だとしています。
一方、事業者などが行っている入場時の検温、入り口での消毒液の設置、アクリル板などのパーティションの設置といった感染対策については、効果やコストなどを踏まえ判断してほしいとしています。

Q.マスクの着用は?
マスクの着用はすでに3月13日から個人の判断となっています。
一方で、重症化リスクの高い高齢者などへの感染を防ぐため、厚生労働省は以下の状況では着用を呼びかけています。
▽医療機関を受診する時
▽重症化リスクの高い人が多い医療機関や高齢者施設などを訪問する時
▽通勤ラッシュ時など、混雑した電車やバスに乗車する時
ただ、おおむね全員の着席が可能である新幹線や通勤ライナー、高速バスなどは除くとしています。
このほか高齢者や、がんなどの基礎疾患のある人、そして妊娠している女性など重症化リスクの高い人は、流行期に混雑した場所に行くときにマスクの着用が効果的だとしています。
また、重症化リスクの高い人が多くいる医療機関や高齢者施設などの職員については勤務中のマスクの着用を推奨するとしています。

Q.マスクの有効性について専門家は?
厚生労働省の専門家会合のメンバーなどは2023年2月、科学的知見をまとめた資料を示しています。
それによると、マスクの目的は、
▼会話やせきをする際に他者に感染させないこと
▼自分が感染しないこと
で、新型コロナでは発症前の潜伏期間におよそ半数の感染が起き、症状が出ない人からも感染が広がりやすいことが知られているとしています。
その上で各国の78件の研究を解析した結果では、マスク着用者の1週間当たりの感染リスクは着用していない人に比べ0.84倍に下がり、2週間当たりだと0.76倍に下がると推定されたとしています。
また、各国の研究21件を解析した結果では、マスク着用がコミュニティ全体で推奨された場合は、新規感染者数や入院患者数、死者数を減少させる効果があることが示唆されたとしています。
さらにアメリカの研究では、マスクの着用者が10%増えるとそうでない場合に比べて3.53倍、流行が制御しやすくなると推定されたとしています。
Q.行動制限や水際措置は?
これまで行われてきた緊急事態宣言などの行動制限や入院勧告・指示、それに感染者や濃厚接触者の外出自粛要請はできなくなります。
また、政府はこれまで、海外から日本に入国する人に対しウイルスの流入を防ぐため3回のワクチン接種の証明書などを求めていましたが、「5類」では原則、こうした措置が取れなくなります。

Q.変異ウイルスはどうなる?
変異ウイルスについては、この冬の感染拡大の第8波で主流だったオミクロン株の「BA.5」に変わって、現在は複数のオミクロン株が組み合わさり、免疫を逃れやすい性質が指摘されている「XBB」系統が主流になってきています。
国内では現在、新型コロナの感染者数は少ない状態が続いていますが、東京都では4月20日時点で「XBB」系統の変異ウイルスがおよそ7割を占めていて、このうちアメリカでも多く検出されている「XBB.1.5」が全体の4割程度と最も多く、次いでヨーロッパで多く検出されている「XBB.1.9.1」が2割程度となっています。
一方で、WHO=世界保健機関は、インドで拡大している「XBB.1.16」を「VOI=注目すべき変異株」に指定していて、まだ日本国内では検出されていないものの専門家は注意が必要だとしています。

東京医科大学の濱田篤郎特任教授は「『XBB.1.16』は、インドや南アジアを中心に広がっていてWHOはかなり警戒しているようだ。インドでは実際に感染者数が増えてきているので、十分に監視する必要がある」と話しています。

また、東京大学医科学研究所の佐藤佳教授は「XBB.1.16」について、「免疫を逃れる力が高いウイルスだということは間違いないが、これまでの変異ウイルスと比べて劇的に変わっているところは実験では見つかっていない。ただ今後、特徴の異なる変異ウイルスが出てくる可能性はあり、きちんと捉えるためにも、5類に移行したあとも、ウイルスの監視体制を維持することは大切だ」と話しています。
Q.今後、感染者は増える?

4月19日の厚生労働省の専門家会合では、新規感染者数は全国的に緩やかに増加していて、5月の大型連休明けに感染が拡大することがあり得ると分析しました。
濱田特任教授は、現在感染者数が徐々に増えている背景に、年度替わりの時期に地域を越えた人の移動があったことや、マスクを外す人が少しずつ増えてきたこと、それに感染やワクチンの接種で獲得した免疫が少しずつ下がってきたことがあるとしています。
そのうえで、新型コロナは呼吸器の感染症という特徴から、接触が増える時期や冬場に感染者数が増えると考えられるとしていて「中長期的に考えた場合、ことしの夏やお盆の周辺、11月や12月ごろに大きな流行が起こる可能性は高い」と述べ、今後も注意は必要だと指摘しました。