オンラインで社会科見学
コロナ禍の小学校 行事にIT活用

2022年2月21日

新型コロナウイルスの感染拡大でさまざまな学校行事の中止や縮小が余儀なくされる中、東京 葛飾区の小学校では保護者の協力を得てITを駆使しながら学校行事を展開しています。

オンラインで社会科見学

感染防止のため、多くの学校では修学旅行や社会科見学を予定どおり実施できないなどの影響が出ています。

こうした中、東京 葛飾区の花の木小学校では4年生の児童およそ100人がオンラインで社会科見学を行いました。

東京 青梅市の田んぼにいる農家の男性と教室をオンラインでつなぎ、古くから栽培されてきた稲の1つ「赤米」について学習しました。

農家の男性からオンラインで赤米の特徴の説明を受けたあと、子どもたちは「赤米はどうして赤いのか」とか「どんな種類があるのか」などと質問していました。

参加した児童は「直接会って話を聞くのもいいですが、オンラインでつなぐとその場に行かなくてもその人から直接話が聞けるのでいいなと思いました」と話していました。

コロナの影響で通常授業をオンラインで対応するなど教職員が多忙となるなか、今回の取り組みはITに詳しい保護者によるアイデアがきっかけで進められ、当日も保護者が教室でカメラマンを務めるなどして協力しました。

AR=拡張現実で“動く卒業アルバム”

さらに、学校行事の中止や縮小が相次いだことで卒業アルバムにのせる写真が少なく、例年どおりにアルバム作りを進められないという悩みを抱える学校も多い中、この学校ではここでも保護者の協力を得ています。

それは“動く卒業アルバム”です。

見た目は一般的な卒業アルバムですがスマートフォンの専用のアプリを使って、カメラを写真にかざすと、写真が動き出し音声が流れます。

AR=拡張現実と呼ばれる技術を活用したもので、音楽会などの行事や、授業中や休み時間の様子など子どもたちの学校での日常を動画で振り返ることができます。

しかし、制作には通常より費用がかかることから、保護者が地元企業に協力を求め、企業名とともに卒業を祝うメッセージをアルバムに載せることを条件に企業から広告料をもらい、追加の負担が生じないようにしました。

この学校のPTA会長の風巻宏さんは「行事は減りましたが、新たな試みによって、『コロナ禍だからこそ、このアルバムなんだよ、いいでしょう』と自慢できるものにしたい」と話していました。

花の木小学校の伊藤進校長は「子どもにとって1年1年は大事です。『コロナだったけれどこんなことができたよ』と思ってもらえるよう新しいアイデアを出してもらって、いいと思うことはどんどん進めていきたい」と話していました。

教育評論家 尾木直樹さん「子どもたちも自分の考え発信を」

コロナ禍の学校生活も2年となります。

尾木ママこと、教育評論家の尾木直樹さんに話を聞きました。

コロナの影響を受けた2年間の学校生活について、尾木さんは、「本来、教育でいちばん大事にすることは、人とたくさん話したりけんかしたりして“密になる”こと。それがコロナ禍で、人との接触を避けるために禁止され、大事な行事もなくなりました。ないないづくしで、時間だけをこなす授業やテストの連続なんです。とんでもないことになりました」と振り返り、「感染予防からいえば、しかたがない部分はあるが、子どもの成長という視点に立ち、感染防止とどのように折り合いをつけていくかということが欠落していないかと思う」と指摘しました。

また、学校行事の中止が相次いでいることについて、ある学校では先生が子どもたちに対し、『どうしたら運動会ができるか』と尋ねたところ、子どもたちから多くのアイデアが出されて実施できたという例を出し、「先生だけでふんばらずに子どもに頼ることが大事。子どもは当事者だから自分たちのこととして、必死になって考える。また、保護者もそれぞれ、仕事や経験を持ち、何らかのプロなのでたくさんの知恵を出してもらえるのではないか」と述べました。

その上で、子どもたちに向けて、「“ピンチをチャンスに切り替える”と言われるが、瞬発力とか柔軟性があるのが皆さん、子どもたちだと思う。大人も未経験のことに遭遇しているから、ぜひ皆さんも社会の一員として遠慮なく、異議申し立てでも提案型でもどんな形でもいいので自分の考えを発信してほしい。それを受け止める度量を大人や社会は持っています」とメッセージを送っていました。