新型コロナ 保護者が感染
行き場のない子どもたちの入院が急増

2021年9月3日

新型コロナウイルスの感染が急拡大している第5波で親子で感染するケースが相次ぐなか「都立小児総合医療センター」では、保護者の入院や治療のため行き場を失い軽症や無症状でも入院患者として受け入れる子どもが急増し、医療センターは「感染して入院する子どものおよそ9割にのぼる」と説明しています。

第5波では家庭内感染が増え、親子で感染するケースも相次いでいます。

感染した子どもの入院を受け入れている東京・府中市の「都立小児総合医療センター」では、8月1か月間に過去最多となる延べ641人が入院しました。

最も多い日で、コロナ患者向けの48床に31人の子どもが入院したということです。

医療センターによりますと、保護者も感染して入院や治療を行うため行き場を失った子どもが多く、「感染して入院する子どものおよそ9割がこうしたケースだ」と説明しています。

本来は入院して治療する必要がない軽症や無症状の子どもが多いものの、親が入院するなどしたため1人で自宅にとどまることも難しく、受け入れているということです。

感染症科の堀越裕歩医師は「医学的には治療の必要はないが感染性のある期間だけは病院で見ている。陽性だと、預かってくれる施設などがなく行き場がないいわゆる『社会的入院』となる子どもが多い。こうした子どもが増えればこのセンターでしかできない高度な小児医療が止まってしまう」と話しています。

緊急性が低い手術は延期せざるをえない状況

「都立小児総合医療センター」では、新型コロナに感染した子どもの入院を受け入れるため、感染症を担当する科とは別の診療科から20床を転用するなどして対応しているということです。

また別の診療科の看護師も新型コロナの対応にあたっていることなどから、通常医療の一部を制限しています。

医療センターには、都内だけでなく全国から高度な小児医療を求めて心臓や肺などの重い病気の子どもたちが訪れますが、緊急性が低いと判断した一部の手術は延期せざるをえない状況だということです。

堀越医師は「『小児医療の最後のとりで』として治療が難しい子どもを受け入れている。高度な医療ができる病院は限られていることが大人との大きな違いだ。なるべくコロナ患者も受け入れたいが通常の医療を止めないととても受けきれないのでバランスが非常に難しい。感染して症状の軽い子どもを預かるような受け皿を整備していくことが重要だ」と話しています。

そのうえで「とにかく感染者の全体数を減らさないと子どもの感染も減らない。国をあげてコロナ対策をしっかり進めていくことが重要だ」と話しています。

医師「普通のかぜの症状でも必ず新型コロナの感染を疑うこと」

夏休みが明けた多くの地域で学校が再開していますが、堀越医師は「普通のかぜの症状でも必ず新型コロナウイルスの感染を疑って無理に登校させないことが感染を広げないために非常に重要だ」と話しています。

堀越医師によりますと、基礎疾患がある子どもの場合、感染すると症状が悪化するケースもある一方で、多くの子どもはせきや鼻水、発熱、それにおう吐や下痢など普通のかぜの症状とほとんど変わらないということです。

そのため大人と同じように強いけん怠感や発熱が続いてから感染を疑うのではなく、普通のかぜの症状でも早めに疑ってほしいということです。

症状が見られる場合は早めに医療機関に相談したり、学校に行かずに自宅で静養したりすることが重要だとしています。

また堀越医師は学校で感染するケースも懸念されるとして「学校などで感染すると必ず家庭に持ち帰り、親や兄弟にも広がってしまう。基礎疾患のある大人や高齢者にうつってしまうと重症化するリスクになってしまう。学校という場所は感染が広がる場所になり得るので、しっかり対策をしてダメージを最小限にすることが重要だ」と話しています。