新型コロナ「後遺症」も労災認定
“労働基準監督署に相談を“

2021年11月4日

職場などで新型コロナウイルスに感染し労災だと認められる人が増える中、その後も新型コロナの後遺症に苦しむ兵庫県の男性が改めて労災の認定を受けていたことが分かりました。国は後遺症にあたる症状も労災の対象になるとして、相談するよう呼びかけています。

新型コロナの後遺症として労災が認められたのは、兵庫県内の特別養護老人ホームで理学療法士として働く40代の男性です。

男性は、ホームの利用者が新型コロナに感染したため濃厚接触者となり、2020年12月にPCR検査を受けて感染が分かり、その後、労災と認められました。

2か月近く療養していったん職場復帰したものの、強いけん怠感や息切れ、それに味覚障害などが続いて悪化したため、2021年4月から再び仕事を休んでいます。医師からは新型コロナの後遺症だと診断されたということです。

男性が改めて労働基準監督署に申請したところ「こうした症状は業務で感染した新型コロナとの因果関係が認められる」などとして、8月に改めて労災が認められました。男性は現在も働けない状態が続いていて、一緒に暮らす妻と5歳の娘の支えを受けて、自宅で療養に専念しています。

男性は「後遺症についても労災が認められたときは本当にほっとしました。子どもとは体を動かすような遊びもできない状態で、申し訳なく思っています。早く仕事に戻れるようできるかぎりのことをしていきたいです」と話しています。

国は後遺症にあたるケースも労災の対象になるとして、同じような悩みを抱えている人に対して労働基準監督署に相談するよう呼びかけています。

後遺症で療養や休業が必要なケースは労災の対象

国立国際医療研究センターなどは、2020年2月から2021年3月の間に新型コロナから回復した457人を対象に、その後の症状について聞き取り調査を行いました。

その結果、半年後でも26.3%の人に嗅覚や味覚の異常、けん怠感や息切れなどの症状があったということです。また、発症から1年経過しても8.8%の人にこうした症状が見られました。

国は、業務に関連して新型コロナウイルスに感染した際、後遺症のように症状が長引いて療養や休業が必要なケースも労災の対象になるとしています。

厚生労働省補償課は「新型コロナは感染した場合のほか、症状が治癒せずに長引くケースが数多くある。まずは近くの労働基準監督署に相談してほしい」としています。

仕事中に感染して労災認定 9月末までに約1万4500人

厚生労働省のまとめによりますと、2021年9月末までに全国で1万4567人が、仕事中に新型コロナウイルスに感染し労災と認められています。

内訳をみると医師や看護師、介護士など医療や福祉で働く人が合わせて1万1214人で全体の7割余りを占めています。

また、「運輸業・郵便業」で376人、「製造業」で315人、「宿泊業・飲食サービス業」で245人など、さまざまな業種の人も労災が認められています。

NPO法人「国はしっかり周知を」

新型コロナウイルスをめぐり、感染した労働者の支援や職場の環境の改善に取り組んでいるNPO法人「ひょうご労働安全衛生センター」の西山和宏事務局長は「職場で新型コロナに感染したあと後遺症が続く人は、再び労災として認められるんだということを知ってもらうことが大事だ。国にはしっかり周知してほしい」と話しています。