厚生労働省の新型コロナ専門家会合
“感染状況に地域差 置き換わりに注意”
厚労省専門家会合

2022年12月7日

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、全国では感染者数の増加の速度は低下し、直近では横ばいになっているものの、遅れて感染が拡大した地域では増加が続くなど感染状況に地域差が見られると指摘しました。

今後、全国の感染者数は横ばいから増加傾向となることが見込まれ、より免疫を逃れやすいとされるオミクロン株の「BQ.1」などへの置き換わりの状況や、年末に向けて接触機会の増加などの影響に注意が必要だとしています。

専門家会合は、現在の感染状況について、全国的に増加が続いているものの増加の速度は低下し、北海道や東北など感染拡大が先行した地域では減少傾向にある一方、遅れて感染拡大となった首都圏や近畿、四国、九州、沖縄では増加の幅が大きくなっていて、感染状況に地域差が見られると指摘しました。

また、全国の重症者数と亡くなる人の数は直近で横ばいとなっているものの、ほとんどの地域で高齢者の感染者数は増加が続いていて、これからの推移には注意が必要だとしています。

そして、今後の感染状況の短期的な予測では、地域差や不確実性はあるものの全国的には横ばいから増加傾向が続き、より免疫を逃れやすいとされるオミクロン株の「BQ.1」系統の割合が国内でも増加しつつあることや、年末に向け接触機会が増えることなどによる影響に注意が必要だと指摘しました。

実際に、夜間の繁華街の人出は東京や大阪など大都市を中心に増加傾向で、2021年の同じ時期を上回っている地域があるとしています。

必要な対策について専門家会合は、年内にオミクロン株対応のワクチン接種を終えるよう呼びかけ、自分で検査できる抗原検査キットの活用を進めるよう求めています。

さらに忘年会シーズンを迎えることを踏まえ、飲食はできるだけ少人数で、飲食時以外はマスクを着用すること、換気の徹底、症状があるときは外出を控えることといった基本的な感染対策の再点検や徹底を改めて呼びかけました。

1週間の新規感染者数 全国では増加続くも幅は小さく

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、6日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて1.06倍と増加が続いていますが、増加の幅は小さくなっています。

一方、北海道や東北を中心に11の道と県では前の週から感染者数が減っています。

首都圏の1都3県では、
▽東京都と神奈川県が1.09倍、
▽埼玉県が1.15倍、
▽千葉県が1.13倍と増加が続いています。

関西では、
▽大阪府が1.11倍、
▽京都府が1.13倍、
▽兵庫県が1.19倍、
東海でも、
▽愛知県が1.02倍、
▽岐阜県が1.04倍、
▽三重県が1.08倍と増加が続いています。

また、
▽沖縄県で1.27倍、
▽熊本県で1.24倍、
▽徳島県で1.21倍、
▽鳥取県で1.20倍などと34の都府県で増加している一方、
▽北海道で0.87倍、
▽長野県で0.88倍、
▽岩手県と山形県、山梨県で0.95倍などと、
北海道と東北を中心に11の道と県では減少しています。

人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、
▽宮城県が1007.00人と全国で唯一1000人を超えて最も多く、
▽秋田県が940.07人、
▽福島県が925.95人、
▽北海道が900.35人などと、
北海道や東北を中心とした地域で多くなっています。

また、
▽東京都は588.28人、
▽大阪府は431.80人、
▽全国では595.24人となっています。

感染症法上の扱い 判断の際に考慮する要素 国が示す

新型コロナウイルスの感染症法上の扱いについて、厚生労働省は7日の専門家会合で判断する際に考慮する要素についてまとめた資料を示しました。

この中では、判断にあたって考慮する要素として、「病原性」と「感染力」それに「今後の変異の可能性」を挙げています。

このうち、「病原性」については、オミクロン株でも季節性インフルエンザより致死率が高いとされているとしていて、累積の患者数の増加やワクチン接種の進展、それに治療薬の普及などを踏まえて、今の時点での病原性についてどう考えるか判断が必要としています。

また、「感染力」については、オミクロン株は感染力が強いとされるとしていて、今の時点での「感染力」や国民の生命や健康に対する影響をどのように考えるか、

そして、「今後の変異の可能性」については、病原性が大きく上がるような変異が起きる可能性をどのように考えるかも考慮すべき要素としています。

このうえで病原性と感染力を踏まえて、患者をどのように医療で受け止めていくかも考える必要があるとしています。

脇田座長「大都市圏では緩やかな増加も」

厚生労働省の専門家会合のあと開かれた記者会見で脇田隆字座長は、現在の感染状況について「北海道や東北地方では、減少に転じている地域もあるが、大都市圏では緩やかな増加が続き、全国的には増加傾向が続いている」と述べたうえで、「ことしの夏の『第7波』に引き続き、オミクロン株のBA.5が感染の主流になっているが、『BQ.1』系統の割合も徐々に増えている。すでに『BQ.1』への置き換わりが進んだヨーロッパでは感染が拡大していて、国内でも置き換わりが進めば同様に影響すると考えられる。また、年末年始に向けて、ふだん合わない人との接触が増えることで、感染が拡大していく可能性も高い」と指摘しました。

そして「若い世代の感染者は減ってきているが、高齢者の感染者は緩やかに増加し、重症者数や死亡者の増加に影響する可能性がある。年末年始に高齢者に会う機会がある人は事前に検査をするなどの注意が重要だ」と呼びかけました。

また、新型コロナウイルスの感染症法上の扱いの見直しについて「ウイルスの伝ぱ力や重症度、医療へのインパクトをどう評価するかが重要だ。例えば、入院勧告や濃厚接触者の隔離などがどこまで必要なのか、医療提供体制を通常の医療と同じレベルに移行していく際に行政からどのような支援が必要なのか評価し、そのうえで、類型を考えていく必要がある」と指摘しました。